HOME ≫ Entry no.523 「レイディ・メイディ 40-5」 ≫ [528] [527] [526] [525] [524] [523] [521] [520] [519] [518] [517]
レイディ・メイディ 40-5
2008.05.12 |Category …レイメイ 39-41話
フェイトが外壁の門を曲がったとき、目の前を女子の塊が速度落として走っているのを邪魔だと感じて眉をひそめた。
フェイト『おしゃべりしながら走るくらいなら、出てくるなよな』
仕方なく道の外側を大回りして追い越そうとする。
女子「裏切り者がイヤよね。何で一緒に走ってるの?」
「クラス変わったじゃない。アンタはもう走らなくてもいいのよ、お嬢様?」
メイディア「あら、自主訓練なのですから、文句を言われる筋合いはございませんわ」
周りを囲まれてしまって姿は見えないが、あのトラブルメーカーだということは声としゃべり方ですぐにわかった。
この薔薇の騎士を育てる場所にあって、あのようにいかにも貴族の姫君という話し方の人間は他にいるはずもない。
▽つづきはこちら
本当に目立たないでいることのできない女だなと変に感心してしまう。
そんな彼女は敵意を持つ人間たちが作るポケットから抜け出せないでいるようだった。
メイディア「貴女たちこそ、何のために朝からわざわざ出て来ていらっしゃるのかしら? ワタクシの自主訓練を邪魔しにだとしたらごくろうさまですのね」
相手の神経を逆なでするのが必殺技。
今の一言でますます彼女を取り囲む輪が狭まった。
それでも走るのをやめない彼女のかかとを元クラスメイトの少女が踏む。
メイディア「っ!!」
女子たち「ア~ラ、ゴメンあそばせ、メイディア様!! わざとじゃございませんのー」
「アハハ♪」
一人がメイディアの口調を真似ると残りの子たちが一斉に笑う。
それを見ていたフェイトは密に舌打ち。
あのお嬢様のことは好きになれそうもないが、周りを囲む連中の方がもっと好かない。
レクと一緒にいるせいで、お人よしが感染したのだろうか。
面倒だと内心ぼやきながらも、助け舟を出すことにした。
フェイト「自主訓練とは感心だな。お嬢様が」
女の子だけの会話に質の違う声が参加してきて、少女たちは一瞬にして口を閉ざした。
全員がフェイトを注目する。
メイディア「フェイト=ウィスタリア!!?」
フェイト「な……何だよ、メイディア=エマリィ=シャトー」
天変地異でも起こったくらいの勢いで驚かれてしまい、ばつが悪くなったフェイトは、早速、後悔の嵐に見舞われた。
メイディア「……別に。何もありませんわ」
すぐに驚きを引っ込めてまた淡々と走りだす。
思ってみなかった人物の登場に少女たちも何事もなかったように黙って走るのに専念し、囲っていた輪を外した。
メイディア「ワタクシ、勝つために必要なことなら何でもするわ。貴女方のくだらない遊びに付き合っているほど暇ではありません。ワタクシを気に入らないというのであれば、先生に試合の許可をいただいてきなさいな。その場において叩きつぶして差し上げますから。ホホホホホッ」
少女の内の誰かが口を開きかけたが、フェイトの手前、結局不機嫌に無視をするに止まった。
それぞれ顔を見交わしている。
女子「……なーによ。味方が現れたと思ってさ」
「試合申し込む? 全員で」
「いいんじゃない? アイツがいいって言ってんだからさ」
彼女たちを追い抜き引き離したフェイトが一時的にメイディアと並びながら、珍しく自分から声をかける。
フェイト「……ずいぶんな啖呵きったもんだな」
メイディア「あら、そうかしら?」
フェイト「誰に勝つって?」
勝つために必要なら何でもする。
そういうのは嫌いではないと思った。
ただし、口先だけでなければの話だが。
メイディア「リク=フリーデルス及び、クレス=ローレンシアです」
フェイト「アイツラが目標か」
確か、黒腹では二人の天才として注目を浴びている。
同じ部屋だからと言う訳でもないが、専攻の違うフェイトも一目置く存在ではある。
剣士として入所したが魔法にも通じているフェイトにはすぐにわかった。
彼らがただ者ではないことくらいは。
メイディア「馬鹿にしないで。目標などでは、ございません。倒すべき相手であり、そうなるのが、当然の、相手な、だけです」
息をきらせながら、とぎれとぎれに答える。
フェイト「なるほど、そうすべきなのに力が足りない、と」
メイディア「現段階では」
フェイト「ふん」
おかしくなって少し笑った。
馬鹿にしたつもりではない。
その気の強さに脱帽しただけだ。
前にフェイトが鼻っ柱が強いと呆れたときにレクが言っていた。
逆にあそこまでいくと立派だと。
フェイト『まぁ、そうかもしれないな』
「せいぜいあがくんだな」
スピードを少し上げる。
メイディア「貴方も。せいぜい足元をすくわれないように気をつけることね」
ちらりと隣を走る少年の、節の目立った指に視線を落とせば、彼の指輪はきちんとあるべき場所に収まっていた。
満足だと思っていたところへ背後から聞き覚えのある声が届いた。
クロエ「ハァハァ、おはよう、二人とも!!」