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レイディ・メイディ 39-6
2008.05.09 |Category …レイメイ 39-41話
リク「今、クロエとしゃべってるのは、ダレスとフェイトだね。青薔薇志望で前の試験で2回共同じ班だった」
カイル「ナニ、ダレスと……?」
リク「フェイト」
カイル「フェイトかー。スカしたカンジであんまり好きになれそーもないな。ダレスって奴、なんだよ、ムサくるしいな。気安くしやがって」
4人娘、顔を見合わせる。
モーリー「カイル君はぁ」
ジェーン「クロエがー」
シラー「あはは、好きなのね?」
アン「聞いてないよ……」
恋のライバル情報収集に夢中で。
▽つづきはこちら
リク『ちょっと聞いてみただけなのに、こんなに反応されるとこっちが返答に困るんだけどなぁ』
まんまと話題をそらすのに成功したリクは、こっそりとため息をついた。
手の平をわずかに湿らせていた汗をそっと着物になすりつけ、はたと自分の行動に気づく。
リク『ん? あれ、俺、何で汗なんか……』
そこまで考えてアンと目が合った。
リク「何?」
アン「ううんっ。なんでもっ」
あわててかぶりをふる。
食事を終えて食堂を出る頃には、すっかりダレス、フェイト、レク、そして何故かレイオットまでもがカイルの心のライバル手帳に書き込まれていた。
それからクロエと仲良くなるにはどうしたらいいかに始まり、告白しようというところまで話が飛ぶ。
リク「さすがは好きでもないのにメイディにアタックするだけはあるね。今度はクロエに告白するんだって」
クレス「頭の中、花が咲いてるんじゃないの?」
リク「勇気あるなぁ。面白いから見に行こう♪」
クレス「……お前……サイテー……」
リク「あ、ホラ。俺もヒトサマの恋愛沙汰に首突っ込むの割りと好きじゃない?」
ポンと手を打つ。
クレス「ハァ?」
リク「なーんだ。シラーが言うから変に混乱しちゃたみたいだ」
クレス「…………? 変な奴。……今更だけど」 肩をすくめる。
一方、アンの方ではシラーが指摘したリクの言動が気になって仕方がない。
シラーさえあんなことを言い出さなければ、誰も気が付くことさえなかったであろうリクの反応がアンの心に揺さぶりかけた。
アン『リク君が好きなコ……リク君が……』
女の子たちのハートをこぞって奪っても、本人のハートはつかませない、恋愛とはおよそ無縁に見える彼が他の俗物男子に混ざってあのコがどうとか言っている姿はどうにも想像し難い。
けれど女の子を比べて誰が一番可愛いとかスタイルがどうとかいった、アンから見ていやらしい部分を除いてしまえば、彼が意中の娘の話をしていても違和感はなくなる。
これならば夢見がちな彼女の中でも納得なのだ。
アン『リク君の好きなコって……』
私のハズ。
……なんて。思ってはしゃいでいられたのは、ついこの間まで。
リクとアンの恋物語を綴った小説を見られて、よく目が合うようになったと感じていたのは、やっぱり錯覚のような気がして今では自信がない。
あれから何一つ、進展がないからだ。
リクが自分に興味がないから、あのノートを読んでも何も感じなかった。
けれど彼は優しいから、迷惑に思っても知らないフリをして今まで通り自然に振る舞ってくれているのではないか。
そんな後ろ向きの考えにどんどん沈み込んでいくのであった。
ちょっとしたことで、浮上したり沈んでみたり。
恋とはなんと不思議なものか。深くため息。
廊下を歩きながら、
シラー「ね、やっぱりリク君はメイディが気になってるのよ」
アン「!!」 ぴくり。
ジェーン「エー? 違うでしょー? アレだけでそう思うのはどうかしらー?」
アン「わ、私もそう思う!! リク君はメイディに同情的なだけよ!! 基本優しいから独りぼっちで友達のいない可哀想な子を哀れんであげてるだけだもん!!」
ジェーン「そ、そんなにムキにならなくったって……」 タジタジ。
アン「ムキになってるワケじゃ……。でもメイディがあれだけ色々やらかしても、リク君やレク君とかレイ様とかいてくれるじゃない? あれって可哀想だからだと思うの。自分がいてあげないとこの子はダメだからっていうのがどこかにあるのよ」
モーリー「優越感みたいな?」
アン「そうは言わないけど…………。でも優しいのは、見捨てないのは、同情の延長線だと思うの。そうじゃなかったら…………何をやっても許されるみたいじゃない」
シラー「うん、アンの言うのはもっともだわ。そんなのズルイわよね。ズルイ子だわ、メイディアは」
アン「そうよ、ズルイ子なの、あの子は…………!!」
『私は今まで悪いことなんかしたことなかったし、ずっと真面目に生きてきた。それなのに何もいいことなくて報われなくて。生まれが貴族だからって初めから恵まれてて、その上ワガママ放題なのに皆のリク君や皆のレイ様に仲良くしてもらってるなんてそんなのズルイよ!! 自分の力じゃなくて家の力で何の苦労もなくいるだけの人より、ずっとコツコツやってきた人間の方こそ評価されるべきじゃないの?』