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レイディ・メイディ 39-10
2008.05.10 |Category …レイメイ 39-41話
クロエ「? 何で皆黙るの?」
沈黙の中で、火ぶたを切った本人だけが取り残されている。
告白されて、困って。
邪魔以外の何者でもない男が現れて。
少女がほっとしながら好きな人がと口にする。
これが現れた男への好意でなくて何であろう?
カイルはキッとフェイトをひと睨みしたかと思うと、涙を浮かべて走り去っていった。
クレス「わかりきっていたけど……」
リク「ザ☆玉砕」
クロエ「あーあ。ビックリしたぁ。……ちょっと悪かったかな、でもしょうがないよね」
そう言う、空気の読めない彼女、好きな人とはお兄さんのつもりで言ったのだった。
もちろんそれを正確に受取った者はこの場に一人としていない。
クロエはたった今、フェイトに告白してしまったようなものになってしまっていた。
フェイト「お、俺に言われても……」
▽つづきはこちら
ステラ「クロエ、あんたって……」
メイディア「………………………………」
クロエ「さ、探そうよ、指輪♪」
フェイト「え、あ、ああ。悪い……。でも自分で探すから別に……」
クロエ「そーゆーこと言わないの!! なくしたって聞けば、一緒に探そうと思うのが友達でしょ」
フェイト「……どうも……」
何と答えていいかわからず、あいまいに返す。
メイディア「……………………」
一部始終を見ていた窓辺のメイディアは、身を乗り出すのをやめた。
メイディア「………………あ、そ」
知らず声にしてつぶやく。
足に力が入らない。
空気の上にバランスをとれずに立っている感覚に襲われる。
一体これはどうしたことか。
校内には人気もなくなり、長い真夏の日も西に沈みかけている。
それでも温度はまだ下がる気配をみせず、熱風が申し訳程度に葉を揺らす。
騒ぎ立てる蝉の声に混ざって、過去からの声が遠く聞こえた気がした。
「自分一人じゃ何ひとつできないクセに」
自分がヒトサマから拒否されるハズがないと当然のように思っていたあの頃。
そんな上等の箱入り娘の心を初めに傷つけたのは、銀髪の少年。
悔しくて憎らしくて…………
メイディア「そうよ…………、大嫌いなの」
手の中に収まっていた指輪がカツンと小さな音を立てて床に落ち、その音で現実に立ち返る。
メイディア「………………………………」
拾い上げて、指輪を見つめるともう一度強く握りしめた。
それからボールを投げるのと同じ要領で振りかぶる。
メイディア『……届いて!!』
窓から、フェイト目がけて指輪を投げる。
キラリ。
一瞬、視界の端に光る何かを捕らえ、リクが顔を上げた。
何が光ったのか確認されることなく、指輪はクロエとフェイトの間に跳ねた。
クレス「どうした?」
リク「……メイディ?」
クレス「……は? メイディ?」
リクにつられてクレスも視線の先を追ったが、窓には誰の姿もない。
唐突にクロエが叫んだ。
クロエ「あった!! あったよ、フェイト!! これじゃないの?」
今し方、落ちてきた指輪をクロエが拾って高く掲げた。
フェイト「どれ、俺のか? ………………俺のだ」
確認してほっと安堵する。
クロエ「良かった、こんな所に落ちてたんだね!!」
ステラ「なんだ、簡単にみつけられたじゃない。ラッキーね」
フェイト「どこにあった?」
クロエ「うん、ほんの足元」
フェイト「そうか……確かに休み時間の後、ここ通ったしな。助かった。ほんと……サンキュ」
クロエ「どう致しましてっ♪」
レクに敗北して、闇雲に訓練して、大切な指輪をなくして。
ちょっとイライラしながら結果の見えた告白劇にわざとイジワルで踏み込んで。
迷惑かけたとフェイトが珍しく照れ笑いをする。
どうやら、指輪事件は無事解決したらしい。
クレス「何だったんだよ、なぁ? ……って……どこ行くんだ?」
リク「ちょっと」
クレスが窓から視線を外し、クロエの声に反応している間に、リクは走り出していた。
きしむ木造の階段を一息に駆け上がり、2階の廊下に滑り込む。
一定間隔で設けられた窓の前を通るたび、夕暮れのオレンジ色に染まったり、陰に入って青く染まったりしながら、一人の少女がこちらに向かって歩いて来ていた。
思った通り、今の今、自分たちがいた方向から。
リク『やっぱりだ』
やっぱりさっき光ったのは指輪だったのだ。
それも、上から降ってきた。
……いや、きっと、メイディアが投げた ……