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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 39-11

リク「メイディ」

メイディア「あら? 息を弾ませて…………どうかして?」

 

 立ち止まりもせず、いつもの調子で靴音高らかに近づいてくる。

 

リク「……どうかして…………って…………うん、ええと……

 

 息を整えながら、走ってきてどうだというのだろうと頭の中で疑問符が踊る。

 

メイディア「忘れ物?」

リク「ああ……そう……忘れ物……かな」

メイディア「そう」

 

 無関心に通り過ぎようとする少女の細い腕

真横に交差したとき、それをとっさにつかんでしまった自分に驚く

 

リク「……あ」


▽つづきはこちら

メイディア「何です?」

 

 自分でもこれがどこからきた行動なのか皆目検討がつかず、困惑してすぐに手を離した。

 

リク「ええと…………大丈夫?」

 

 無言のままつかまれた腕を見つめているメイディアの追求を封じるように意味不明の言葉を口走る。

一体、何が大丈夫なのか。苦し紛れもいいところだ。

 けれど相手は問いただすでもなく、「ええ。もちろん」と適当に相槌を打った。

 何が大丈夫なのか。

何がもちろんなのか。

 会話しているようで会話になっていない。

もう、何でも良かったのかもしれない。

 少しの間、視線を交わしただけでメイディアはまた足を進め、リクには止める術がない。

 止めたところで何を言えばいいのか。

それ以前にどうして止める必要があるのか。

そもそもどうして光ったのが指輪だと直感し、それを投げたのがメイディアだと思ったのだろう。

上に彼女がいて、一緒に同じ場面を見ていただなんて知らなかったハズなのに。

…………自分の行動が読めない。

 階段を降りて行く足音。

やがてそれも消えて薄闇に飲まれ始めた廊下でぽつんと独り

 

リク「………………うーん。何やろうとしのかな、俺……?

 

 また、手にわずかな汗をかいていると気づかずに、着物にこすりつける。

 気を取り直して、自分も戻ろうと来た道をとって返す。

 廊下から階段に差し掛かったとき、他には誰もいないと思っていた空間にわずか影が動き、リクは踏み出すのを止めた。

 

リク「メイディ?」

 

 そっと呼んでみたが、声は期待していた人物のものではなかった。

 

声「……どうしてメイディ?」

 

 戻った返事は不機嫌と苛立ちを含んでいたが、リクがそれに気づくことなく、正体がわかって表情を和らげた。

 

リク「アンだったのか。どうしたの、もう門限だよ」

アン「リク君こそ」 壁に背中を預けてうつむき、おさげの髪をいじっている

リク「俺は……ええと」

アン「忘れ物?」

リク「そ、そう」

アン「忘れ物は……とっくに帰っちゃったよ」

リク「…………はは、見てた?」 曖昧に笑って手の平を着物にこすりつける。

アン「リク君、あののこと、何にもわかってないんだね」

リク「……?」

アン「もう遅いから宿舎に帰った方がいいよ……。じゃ、さよなら」

リク「……あ、うん……」

 

 もう一度、手の汗をふいた。

 

 

 場面変わって、当日の夕食中のフェイトとダレス。

 

ダレス「俺、クロエに告ってみっかなー?」

 

 野菜コロッケをフォークに突き刺して、一口でがぶり。

 

フェイト「……やめとけ」

 

 こちらはフォークとナイフで行儀良く。

 

ダレス「なんでだよ、俺じゃ無理めってか?」

フェイト「彼女は……その……お兄ちゃんラブ…………っていう話だから」

ダレス「そーゆーお前はどーなのよ?」

フェイト「……俺は……色々やんなきゃならないことがあるんだ。色恋沙汰に夢中になってるヒマなんてないな」

ダレス「なに気取ってんだよ、朴念仁(ぼくねんじん)。そんなだと人類滅びるぞ」

フェイト「おおげさなんだよ」

 

 見つかった指輪を明かりに透かしてあるのを確かめると、また食事に戻った。

指輪を探してくれたお人よしのクロエのことを考えながら。

 そしてもう一方、フラレ勇者・カイルはというと、泣きながらクレスとリクに切々と胸の痛みを訴えていた。

 

クレス「だから無茶だって言ったのにー……ウザイな

リク「あーうん、まぁ、色々だよね」

クレス「なんだよ、ソレ」

 

 いつもなら上手にあしらう役のリクが、何故か帰ってきてから上の空なので、クレス一人で勇者の相手をせねばならず、正直うんざりだった。

 

 

 学徒たちが食事、または入浴の同時刻。

 女子入浴脱衣所で一人の少女が周囲に誰もいないのを確かめて、別の少女の衣服を漁る。

 

少女「……コレ? ……違う……。……あった。これだわ……。ごめんね、シラー。すぐ返すから、ちょっとだけ貸してね」

 

 母親の形見だと言っていたペンダントを自分のポケットに滑り込ませ、何食わぬ顔で脱衣所を後にした。

 生まれて初めて、黙って他人の物を盗ってしまったという後ろめたさに、心臓が口からはみ出してしまうのではと心配になるくらい鼓動が激しく高鳴った。

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