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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 39-3

 生徒本人の強い希望と教官同士の合意、そして上からの許可があればクラス替えは加能だが、そう簡単に許可など下りない。

 エリート集団のレヴィアスクラスからヒサメクラスに移ったカイルは、メイディアと交換材料にされることに本心は酷いショックを受けていた。

 自分はレヴィアス先生に見限られたのだと。

 魔法のアイテムを所持していながら、クレスに手も足も出ずに無様な負け方をしたために放り出されたのだと。

実にその通りなのだが、納得がいかないのはメイディアの希望を聞き入れたということだ。

 メイディアは自分に負けている。

自分以下だというのにどうしてレヴィアスの眼鏡にかかって、自分が出されてしまったのか。

 そこにはレヴィアスの名を一層高めるという目的の、大人社会の事情というものがからんでいたが、理由を知らない彼はおおいに落ち込んだ。

 本人の強い希望だったのはメイディアだけで、カイルは移動したくなんてなかった。

 だが、そこでごねればレヴィアスの機嫌を損ねて例えクラスに残れたとしても冷遇が待っているだけである。

 初めから、彼に選択の余地など用意されてはいなかったのだ。


▽つづきはこちら

カイル「しかしヒサメ先生は甘いよなー。あんなじゃ絶対レヴィアスクラスには敵わないぜ」

クレス「その負けた奴がよく言うよ。だいたい、あの親善試合だってチャイムが鳴らなければ、時間無制限で全員やらせたら僕たちの方が勝ってたね!!」

 

 すでにトップ争いでも決着がついていたようなものだと反撃。

 

リク「どっちがどうとかはわからないけどさ、ヒサメ先生を甘いと思っているとこのクラスでは置いていかれるよ? 先生、自主性重んじる……というと聞こえはいいけど、放任主義っていうか放置プレイっていうか………そういうトコあるから」

 

 苦笑して肩をすくめる。

 

クレス「性格悪いんだよ、性格!! サボッててもあんまり注意とかしないのは、甘いからじゃないんだぞ」

リク「そうだねー……何が怖いって、ほとんど自己責任として扱われるところかな」

カイル「うーん、そういう氷河期系先生だったのか、あの仮面教官は」

リク「その代わり、あの人の言うとおりにさえしていれば大丈夫なんだっていう安心感はあるから。だから、何も言わなくても皆、もうサボろうっていう奴はいないよ。去年はかなり居たけど」

 

 まだヒサメ先生がどういう人かを理解していなかった生徒たちがナメてかかって後れを取ってしまった。

それが白日の下、如実に現れたのが最初の試験。

このあまりに差のある結果から、クラスの全員がヒサメというスロースタータな教官の教え方をようやく理解したのである。

 

リク「ジェーンたちがもういるよ。席を取っといてもらおう」

 

 食堂についてみるとすでにジェーン、モーリー、アン、シラーの4人が食事の乗ったトレーをテーブルにおいているところだった。

 

リク「隣、3つー!!」

 

 両手を振り回して、知らず注目を浴びている。

 

ジェーン「あん、リッくん、クレスくーん」

 

 ハートマークが周囲に飛び散っているのが目に見えそうな甘い声で精一杯応える。

 

クレス「叫ぶなよ、恥ずかしい!!」

 

 すぐ側ならまだしも、入り口から一番遠い彼女らに向かって叫ぶリクの足を蹴飛ばした。

 

リク「アテ。……だって、食堂すぐ込むじゃない。席がなくなるよ」

クレス「だからって……」

リク「あ、おばちゃん、俺、超大盛りモリモリでー♪」

おばちゃん「うるさいね、モリを一つ減らしな!!」

クレス「聞けよ!!」

 

 最後に並んだクレスを待って、ジェーンたちが取っておいてくれた席に向かう。

 途中、メイディアとレヴィアスクラスのトップ・トニア、それと同じクラスの数人のグループとすれ違う。

 リク、メイディアに笑いかける。

 メイディアははねつけるような微笑をわずかに浮かべ、横でトニアも同じような表情でクレスとカイルを見下している。

 

メイディア「行きましょう、トニア」

トニア「そうだね、メイディ」

 

 二人はフッと笑い合うと3人を無視する形で通り過ぎた…………と、思ったら、一度トニアが止まって聞こえよがしに言った。

 

トニア「墜ちるところまで墜ちたな、カイル。天才様二人の腰ぎんちゃくか。よく似合ってるよ」

カイル「……なっ……!!」

メイディア「………あら、それはどうかしら?」

 

 トニアに同意するかと思えば、意外にも矢面にメイディアが立った。

 

メイディア「彼も水面下で牙を研いでいるのよ。ね、そうでしょう、カイル?」

カイル「えっ、あっ、ああ…………も、もちろん!!」

 

 助けを借りて強気を保つ。

 

メイディア「次、まずは貴方に勝ちますと宣言させていただくわ。けれどそれも通過点。トニア、貴方も同じよ」

トニア「言うね」

メイディア「フフッ。では、ごきげんよう」

リク「ハイハイ、ごきげんよう♪」

クレス「……………………」

カイル「……………………」

 

 彼らが立ち去ってしまうとクレスとカイルが目配せをする。

 

クレス「ナッマイキな。裏切り者めー」

カイル「蛇みたいに執念深い女だな。天使みたいなクロエさんと大違いだ」

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