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レイディ・メイディ 第39話
2008.05.08 |Category …レイメイ 39-41話
第39話:すくらんぶる☆らぶ
『ああ、危ない!! 避けなきゃ!! そこですわ!! あん、もぅ、何やってるの!? 違うでしょ!! アララ、ワタクシったらどっちを応援しているのかしら。間違ったわ。ワタクシが応援したいのは …………』
ガイィン!!
真剣が跳ね飛ばされて、空に弧を描く。
ヴァルト「1本!! 勝者レク=フレグリット!! それまで!!」
勝者を告げる声と重なって、跳ね上げられた剣は地上に突き刺さり衝撃の余韻に震えていた。
レク「ありがとうございました!!」
真剣を使っての訓練が多く入るようになってきた。
木刀しか使ったことのない大半の連中は怖がって実力の半分も出せないでいる。
そんな中で頭角を現したのが、普段はおとなしくあまり目立たない性格のレク=フレグリットだった。
▽つづきはこちら
レイオット「おつかれ、レク!! やったわね!!」
レク「ありがとう、レイオット」
1年前のスタート時は平凡の中の平凡。
ミスター平凡キングスペシャルの名を欲しいままにしていたようなしていないようなレクは、ここ数ヶ月で大化けしていたのである。
ここぞというときの度胸や底力が彼の最大の武器だ。だが彼にはそれだけではない。
プラス、実家の鍛冶屋という職業柄、剣という獲物の特性をよく熟知しているという、目には見えない強さがあった。
レクの思いがけない勝利に周囲は呆然となっていた。
勝てるはずがない相手に、入所してから一度も勝った試しのない相手に、初の勝利をもぎ取ったのである。
周りの誰もが結果は見えていると思っていた。
密かにレクを応援するレイオットでさえも。
そう、そして誰よりもたった今の出来事を信じられずにいるのが、負けるはずがなかった対戦相手…………フェイト=ウィスタリアであった。
フェイト「負けた…………俺が……」
ヴァルト「次がつかえている。さっさと剣を拾って舞台を降りろ」
容赦ない叱責が飛んで、フェイトは我に返った。
フェイト「ス、スミマセン…………」
まだ信じられぬといった表情で剣を拾い上げる。
フェイト『確かにレクは訓練では実力を出し切っていない、本当ならもっとずっと強いはずだ。だが、だからといって、こんなに易々負けるのか? 俺が?』
ヴァルト「フェイト」
フェイト「あっ、ハイ」
ヴァルト「自惚れるなよ」
負けた方に対して「自惚れ」とはどういうことか。
言う相手を間違えたのではないかと周囲は顔を見合わせたが、フェイトにはその短い言葉に込められた意味が心に痛く響くのだった。
見抜かれた !!
たかが2年目で。
たかが練習試合で。
負けを知らなかったからといって、知らず自分に勝てる奴がいないだなんて無意識にでも錯覚していたのが恥ずかしい。
反省すべきは自分が物心ついた頃にはもう剣をにぎっていた、真剣にだって慣れているというエリート思考の油断だ。
自分ではそのつもりはなくとも、負けてそんなハズはないと思ったのが証拠である。
誰が相手でも油断などすべきではなかったし、追いかけてくるプレッシャーを常に背中に感じていたレクが相手ならなおさらだ。
フェイト『クソ…………何様だよ、俺!!』
ヴァルト教官は正しい。
自分に腹を立てているところへ追い討ちのような高い声が降ってきた。
メイディア「やったわ!! レクの勝ちですっ♪ ウフフッ、ざまぁみなさいフェイト=ウィスタリア!!」
キャッ、キャッ♪
グラウンドで行われていた赤青合同訓練を校舎の教室から密かに見学・応援していた、只今歴史の授業中のメイディアだ。
端っこの席にいたメイディアは思わず歓声を挙げて、窓の枠に身を乗り出した。
フェイト「うるさいぞ、このマルチーズ!!」
メイディア「マ、マルチーズですって!!?」
フェイト「派手なだけのお座敷犬が、キャンキャンうるさいって言ったんだ」
メイディア「謝りなさい!! 全国のマルチーズとその飼い主やファンの方々に!!!」
フェイト「そこかよ!!」
上と下で口ゲンカ。
当然、フェイトの頭上にはヴァルトの鉄拳。
メイディアは、ほとんどの教官からいてもいないように扱われているので、ここでは注意すら受けない。
相手が氷鎖女、ナーダ、ヴァルトらのような特定の教官ならば話は別だが、幸い歴史の先生はトラブルを徹底的に避けるタイプの人間で、できるだけこのシャトー令嬢と関らないようにしているのだった。
ダレス「オイオイ、痴話ゲンカかよ?」
試験で2度続けて班が一緒になり、一応は友好的関係にあるダレスが冷やかしに来る。
フェイト「やめてくれないか、その痴話っていうの」
クロエ「レクおめでとう」
2階の教室、メイディアの横からクロエまでもが顔を出す。
レク「はは、ありがとう」
見上げて軽く手を振る。
クロエ「すっかりフェイトは悪役ね。ふふふ」
フェイト「…………るさいっての」
珍しくふてて顔を背ける。