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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 30-12

氷鎖女「………す?」

リク「す?」

氷鎖女「あ、いえ……あの……豆……?」

リク「うん。豆大福。クレスが可愛がっている猫で―……」

突然いきり立って、クレス「かっ! 可愛がってなんかいるもんかっ!! それに豆大福なんかじゃないっ!! ダイヤモンド・チェリーだっ!!!」

 

 ダイヤモンド・チェリーだー! イヤモンド・チェリーだー……ンド・チェリーだー……チェリーだーだーだー…………

 それは思いかけず大きく響き渡ってしまい、全員がクレスを注目する。


▽つづきはこちら

クレス「!!」

 

 エコーが消えて、残された静寂の中、クレスは一身に視線の針を浴びていた。

 顔の温度が急上昇。

何か言いたげな口が酸欠の魚みたいにパクパクと動いたが、肝心の言葉は出てこない。

 

氷鎖女『なんだ、猫殿か……』

 

 どっと疲れてうなだれた。

冷や冷やさせないで欲しい。

 クレスが可愛がっている猫は知っている。

ナツメ、もとい、氷鎖女はまんまだが、『猫殿』と呼んで時々構うこともある。

 それにしても何が嫌なのか、クレスは猫を可愛がっている事実を認めようとしない。

 

氷鎖女「猫殿…………嫌い?」

クレス「嫌いじゃないよ、別にぃ」

 

 クロエに手当てを受けながら、

 

リク「ねぇ、似てるよねぇ? 毛が黒くて、目が金で」

クレス「に、似て…………」

 

 改めてナツメを見る。

 

クレス『あれ…………? 似てる……かも……?』

 

 針を持って襲われた?ときには人形を思い浮かべていたが、そういえば金色の眼なんかは猫っぽいような?

 

クレス「うーん」

 

 彼らのやりとりを聞いて、自分の思い違いに思わず苦笑を浮かべるアン。

 リクはナツメのことを気に入っていたんじゃない。

野良猫に似てると思って見ていただけだったの

 地味で気が小さくおとなしい、大勢の中で目立つことのない代表格の彼女の内面は意外にも欲張りだ。

 少女ならではの夢見がちな性格と“本当の自分”をもっと見て欲しい、注目されたいという強い願望が潜んでいる。

 彼女の考える「本当の自分」は等身大の当人よりもずっとずっと器が大きい。

 明るくて、何にでも一生懸命。

ちょっとおっちょこちょいなところがチャーミングで、気配り上手。

すごく美人ではないかもしれないけれど、よくよく見ると可愛くて、知らないところで男の子がドキッとしてしまうこともある。

 自分自体は人気者というワケでもないのに、なぜか人気のある人物に好かれやすい。

 彼らは言うのだ。君といると安らぐのだよ

 周りの子たちに「どうしてあの子なんかが」などと羨望の眼差しを受けながら、リクやレイオット、フェイトらに囲まれる。

 …………………そんな、理想の自分が本来の自分なのだ。

アン=ブラウンの中では。

 現在の自分は本当ではない。

 周囲がもっとアンという女の子をよく見ないからいけないのだ。

 周りが魅力を引き出せる場面を作ってくれないから悪いのだ。

だいたい皆、やかまし過ぎる。

私が話をする前におしゃべりを始めて。

私だったらもっと上手で楽しくお話できるのに、皆自分ばっかりなんだから。

黙って聞いている身にもなって。

私に順番が回ってこないから持っている魅力を発揮できないだけなんだから

ここにこんなに素敵な女の子がいるのに

心の声が反抗の声を上げる。

 ……こんなや願望は何も彼女に限ったことでなく、大なり小なり、誰もが心の奥に持ち得ている感情だろうが、アンはそれがほんの少し強かった。

 おとなしいだけの子というレッテルに甘んじている自分が嫌なのに、現状を打破勇気はなく、それが妄想を拡大させる結果を生んだ

 だが、今回、転んだ仲間を見捨てて逃げたあげくに自ら谷に落ちてしまい、想い人が来てくれたというのに窮地に陥れる失態を演じてしまった

あれを守りがいのある放っておけない女の子として受け取ってくれればいいが、お荷物だと思われていたらどう挽回すればいいのだろう。

 

アン「…………………………」

 

 とりあえずの危機を脱して、無事を喜びを分かち合う面々の中にあって、アンは孤独を感じていた。

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