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レイディ・メイディ 30-17
2008.04.11 |Category …レイメイ 30話
クレス「そういえば、ナツメは?」
試験が終了して皆一息ついているのに、気づけば彼女の姿だけが見当たらない。
リク「……いないね」
クロエ「クレス、リク」
クレス「うん?」
リク[?」
クロエが集まりから離れて、古びて小汚くなった木製の、小さな小さな薬入れをクレスに手渡した。
クレス「これは……ナツメのじゃ……」
▽つづきはこちら
クロエ「今さっきね、頼まれたの。こっちはクレスにあげてって言ってた。なんだか、昔おばあちゃんにもらったって言ってたよ」
クレス「?? おばあちゃん? ナツメの?」
クロエ「そうじゃない? それしか言ってなかったからわかんないけど」
クレス「なんで僕に渡すのさ」
クロエ「しばらくはそれをつけておけってー」
クレス「あ、そういうことか」
クロエ「はい、リクにもコレ」
同じように渡す。
リク「ありがと」
リクが渡された方は、貝殻の破片を組み合わせて貼り合わされた薬入れだった。
蓋と下の部分が蝶番でつながっており、二枚貝のような作りになっている。
女性の白粉化粧品ケースのようだ。
リク「紐がついているから、なくさなくて便利だなぁ」
満足げに首にひっかける。
クレス「バカ、傷が治ったら返すんだろ、フツーは」
リク「くれんじゃないの?」
クレス「薬の話だろ。バカじゃないの!」
リク「バカバカって……ひどいなぁ」
クレス「うるさい、バカ」
「だいたい、何だってリクのはそんなモザイク柄のキレイなやつで、僕のはこんな小汚い筒型の入れ物なんだよぅ。ヒイキだ、ヒイキ」
クロエ「おばあちゃんの使ってたお下がりがクレスので、リクのはきっとナツメ本人のだね」
無邪気にクロエがトドメを刺した。
教官たちに終わった者は戻って体を休めるようにと言い渡され、それぞれ高揚した気分で宿舎を目指す。
後続のチームもちらほらと帰って来たころだ。
どの学徒も疲労を色濃く顔に刻んでいる。
ゴール付近には白薔薇騎士たちが待機しており、ゴールした学徒たちのケガなどを診ていた。
保健医としてはミハイルがいるが、試験でケガしてこない学徒はいない。
こんなに大勢を一人で診きれるハズもなかったし、彼は試験日ではない通常の学徒の世話もある。
そんなわけで常に医務室につめていなければならないミハイルの姿はここにはなかった。
代わりに試験日の時だけ特別に白薔薇部隊が出動することになっているのだった。
上位の班のメンバーはすでに治療も済んで宿舎に向かっている。
男子寮と女子寮が別れる時になってようやくアンがリクにお礼を言った。
アン「ありがとう……それから、迷惑かけちゃって…………ごめんなさい……私……、あの…………リク君に困らせるつもりじゃなかったの。」
リク「わかっているよ。アンがそんな子じゃないことくらい」
穏やかに笑うとアンの鼓動がまた跳ねた。
リク「俺も先に説明しなかったのがいけなかったんだよ。でも怖かったねぇ。アハハ」
アン「……ふふっ。そうだね。でも、私……その……リク君が……その……いたから……こっ怖くなんて…………」
うつむいて体を落ち着きなく動かす。
今日のリクは一段とカッコよかった。
自分が落ちるかもしれない状況でアンを励まし支え続けてくれていた。
スリリングが過ぎて生きた心地はしなかったが、それだけに結び付きも強くなったような気がする。
アン「それでね、リク君……私―……」
リク「あ、メイディ」
せっかくの良い雰囲気を台なしに、目の下に深いクマを作ってアゴを突き出し、猫背のメイディアが「あ~……」とか何とか意味不明のため息とも奇声ともつない呻きをあげて、横をだらしなく通り過ぎる。