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レイディ・メイディ 30-18
2008.04.12 |Category …レイメイ 30話
メイディア「づがれだー……あー……部屋まで~あとちょっとぉぉ~……」
レイオット「な、なんだか、怖いわよ、メイディ」
肩をすくめる。
クロエ「やった♪ 2位2位☆ ブイブイッ」
その後を容赦なく、クロエがブイサインしながらはしゃいでやってきた。
ステラ「私たちだって2位だもん。ていうか、アンタちゃんと役に立ったのぉ?」
クロエ「立ったわよ。失礼ねー」
アン「……………………………」 がっくり。
▽つづきはこちら
リク「まだメイディにお礼言ってなかった気がするな」
いつものお嬢様歩きを忘れ、がに股でのっしのっし歩くメイディアの後姿を目で追う。
アン「後でいいよっ!」
リク「……え?」
アン「あっ……と、メイディには私から言っておくからっ!」
思わず叫んでしまってから、あわててフォローを付け加える。
リク「でも……」
アン「お疲れさま!」
まくし立てるように言って、メイディアの背を押す。
メイディア「なんですの? やめて下さる? ワタクシ、今、失恋して魂ハミ出し中でございますの」
覇気のない声で言ったが、アンは構わず背を押したり手を引いたりして強引に女子寮へ連れて行った。
シラー「リク君、メイディア様がどうかした?」
リク「助けてもらったってことになるかな」
シラー「へぇ? そうなの? うふふ。どう? 恋は始まりそう?」
リク「うーん、どうだろうね。少なくともロマンチックな顔はしてなかったかな? あははっ」
逆さ吊りで顔は真っ赤。腕に力いっぱい込めて鼻の穴全開。
もちろん、自慢の縦ロールのゴールデンヘアーはボサボサで見る影もない。
その上、何やら液体が…………………………
たぶん、恐怖による失禁だと思われる“アレ”。
あの姿を見て恋に落ちることができる男がいたら、なかなかのレアだと思わねばなるまい。
リク「ロマンチックじゃないけど、必死の美しさっていうのはあるよねぇ」
シラー「……まんざらでもないんだ?」
リク「さぁ」
いつものように、リクは微笑んだ。
この世のあらゆることが遠い世界の物語のように。
醜く煩わしい物事が全て他人事であるかのように。
その穢れない微笑をやっぱりシラーはキレイだと見とれたが、リク本人はとうとう必死になれなかった自分を好きになれなかった。
この世のあらゆることが遠い世界の物語のように。
醜く煩わしい物事が全て他人事であるかのように。
…………そんなのは、ちっとも魅力的などではない。
自分の命にしがみついて、恐ろしくても布のロープを渡ったアンの方が、お漏らしをしてもリクの手を離そうとしなかった小汚いお嬢様の方がよほど美しく感じられる。
アンを助けようとはしたけれど、そこに絶対はなかったし、形だけだった気もするのだ。
そんなに自分は必死であったろうか。
メイディアの粗相とか変な顔を気にしている余裕があったなら、きっと必死さや恐怖感が足りなかった証拠なのだろう。
少なくともアンとメイディアは恐怖と隣り合わせで戦っていただろうに、自分ときたら目の前に迫った「死」にすら恐怖しえなかった。
死を恐怖しないのは、勇気ではない。
ただの欠落だ。
もっとも原始的で大事な何かの欠如。
リク「それじゃ」
レクが呼んでいたので会話を切り上げ、シラーと別れた。