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レイディ・メイディ 25-7
2008.02.28 |Category …レイメイ 24、25話
一方、やられ役に回ることとなったメイディアは、本当に一人でいることが多くなった。
多くなったというよりもすでにほぼ一人といって差し支えないくらいである。
何かと気を使ってくるレク、もはや俗世と関わりないように生きている世捨て人のようなリク、なんだかんだ言いながらもメイディアを可愛がっているレイオット、唯一同等の立場にあるクロエなどは折を見ては話しかけようとするが、これを本人が頑なに拒んでしまっているのだった。
ワタクシは一人でも平気なんだ、と。
彼女とは自分が話をすると大見栄切ったシラーが、ことあるごとに手を差し伸べてくるがもちろん、すがるメイディア嬢ではない。
彼女の中で和睦はすなわち自分の敗北なのだから。
▽つづきはこちら
母親を愚弄する人間など信用してなるものか。
親を敬うことを教え込まれてきたメイディア。
箱入り娘で苦労知らずのワガママ娘。
世の中には沢山の不幸があって、子を人間扱いしない親がいることを知らない貴族のお姫様はシラーがもしかしたら、母親にひどいめにあわされて憎んでいたかもしれない、憎んでも仕方なかったかもしれないことまで想像できなかった。
もしも世の中を広く知っていたなら、心も広く持てたかもしれない。
が、残念ながら彼女の心は自らの広いおでことは違い、メチャクチャみみっちぃ。
変な所で度量があるクセに、普段はミジンコクラスの大きさだ。
ああ、それはもう、それはもう。
たった今も腕を組んで学び舎に沿って一周、散歩をしながらシラーに思い知らせてやる方法はないものかと思案しているところだ。
反省する気配は一切なし。
レクに注意を受けて、周囲を巻き込むのをやめただけまだマシであった。
メイディア『おのれー。何ですか、あの態度の変わりよう! 何ですか、あのワザとらしさときたら! 何故、皆さんカンタンにだまされておしまいになるの!?』
それは、メイディアが意地悪だから。
……などと本人にわかろうハズもない。
メイディア『あの汚らわしい女をぎゃふんと言わせる方法は……っと』
前髪をヘアバンドで後ろに流した剥き出しのデコに、初夏の日差しが当たって反射している。
不意に見かけたら思わず笑ってしまいそうな光景だ。本人が真面目ぶっているだけに尚更。
密かに名前をつけて可愛がっている子猫・ダイヤモンドチェリーを探していたクレスが、向こうからやってくる彼女を見つけて一言禁句。
クレス「ぷっ……! デコが輝いてまぶしいぞ」
いかにも眩しくて目を開けていられないといったジェスチャーを大げさに入れてみる。
気軽に話せる友達がいないクレスにとって、女の枠に入らないメイディアはカッコウのからかい相手だ。
乱暴で頭にくることが多いが、こちらが多少悪さしても軽い喧嘩程度で済んでしまうのは助かる。
他の女の子にやったらヒンシュクモノでも、彼女相手ならばやり返してくるだけで、後を引かない。 初めの試験で無差別な魔法で多くの犠牲者を出し、高笑いでしめくくったクレスはちょっとした恐れと嫌悪の対象で、そんな奴がヘタに女の子をかまったらそれこそイジメと受け取られかねないのだ。
その点、メイディアは心配なかった。誰を相手にしようと恐れなど微塵も感じていないのだから。
メイディア「……………………」
無言のまま、かがんで石ころを拾い、
ガスッ!
……投げた。
クレス「をごっ!?」
顔面命中。
クリティカルヒット。
仰向けにひっくりかえるクレス。
クレス「何するんだ、シャイニング・デコ!」
鼻血をふき取って起き上がる。
ホラ、コイツはこーゆー奴なんだ。