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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 18-13

メイディア『いちいち頭にくる。なんでこんなに意地悪な人ばかりなのでしょう。リクだってアンだって……ワタクシのどこが気に入らないというのかしら。ワタクシに優しいのはレイオットとレクだけだわ。ちょっと怒りん坊なところはあるけれど、二人はワタクシの友人です。……きっと…………たぶん……向こうがそう思ってくれているのなら……ですけど……』

 

 実は自分に自信のない令嬢・メイディア。

 外からは決して知れることはないが、いつも周囲からの評判を気にしていたりする。

 それならばとっぴな言動やワガママを控えればいいようなものなのだが、アレが彼女の“普通”なのだから手に負えない。

 

メイディア『それから……そう、キース君だけです』

 

 小脇に抱えたウサギのぬいぐるみに視線を落とす。


▽つづきはこちら

 このぬいぐるみは遠い昔、自らせがんで買ってもらったぬいぐるみだ。

 舞踏会の帰りに馬車の中からみかけた露天商に埋もれていたもので、両親はもっと良い物を買い与えるからと言ったが、一目ぼれでどうしても欲しくなり、おねだりをしたのだった。

 あの頃はまだ両親がそろっていたことが多く、メイディアのそう長くは生きていない人生の中で一番幸福だった時代だったように思える。

 ワガママめいいっぱいの彼女だが、意外なことに両親に対しては聞き分けの良い子で物を欲しがっておねだりすることはまずなかった。

 彼女にとってみれば、物よりも者。

大好きな父と母が一緒にいてくれさえすれば、人形もドレスもアクセサリーも何もいらなかったのだ。

 もし、抱き締めてくれたならもっと良かった。

 そんなささやかな願いを叶えてもらうために普段はお願い事をしないように我慢していたのだ。

 他の願いを聞いてもらってしまったら、本当に欲しいものを与えてもらえなくなってしまうかもしれないなどと恐れていたから。

 幼いメイディアの恐れていたことはただ一つ。

 そうでなくとも自分に関心を持ってくれないこの両親から見放されることだ。

 両親の関心を自分に向けさせるためならば、彼らの望む娘にいくらでも変身するつもりでいた。

 努力は実ることはなく、家庭は冷めゆく一方でとうとう父と母は離れ離れ。

 家にも戻らなくなって手紙も代筆。

 誕生日には欲しいとも思わない物がどっさり贈られてくるが、顔を見せてくれることもない。

 母とは去年会ったが、父とは何年顔を合わせていないだろう。

 見た目に決して可愛いとはいえない“キース君”。

 露天商に並ぶ雑貨の中に埋もれて見向きもされていなかった“キース君”。

 商品のハズなのにほこりにまみれて小汚い“キース君”。

 彼は幼女を呼んでいたように思えた。

 

 「僕を見て。僕を見て。誰も気がついてくれないんだ。寂しいよ。僕はここにいる。僕はここにいるよ。お友達になろう、メイディ。一緒に遊んで欲しいんだ」

 

 それは幼い妄想だったけれど、少なくともメイディアにとっての真実であったのは間違いない。

 “彼”は沢山の商品に埋もれて、皆から忘れ去られて愛情を求めていたのだ。

 

メイディア『いいわ。ワタクシがお友達になってあげます』

 

 

                            ねぇ、お父様。お願いがあるの    

 

 

 こうして手に入れたぬいぐるみは10年間、彼女のお友達・第1号として現在も共に在る。

 物言わぬキース君は、喜びも悲しみも分かち合い、そう、今この瞬間。

 転ぶときも一緒だった。

 

メイディア「ホゲッ!!」

 

 濡れた草に足を滑らせて転倒。顔から見事に突っ込んだ。

 

メイディア「う……ううう……」

クロエ「あっ、メイディア」

セルゲイ「お嬢さん、大丈夫かい?」

ダレス「泣くなよ?」

メイディア「泣きませんっ!!」

 

 さっと立ち上がって汚れを払う。

 しかし濡れた泥は落ちてくれず、汚らしいことこの上ない。

 ふいに先頭をゆくフェイトが足を止めた。

 服を気にして歩いていたメイディアはその背中にぶつかって鼻をさする。

 

メイディア「失礼ねっ!! 止まるなら止まると……」

フェイト「シッ!!」

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