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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 第3話

第3話:ごぉるでんと天才クンと異国の先生

 朝から一風巻き起こしたメイディアは、彼女いわく「イジワルなルームメイト」と運よく専攻が違ったために心底ホッとしていた。

 それは傍から見る、イジワルなルームメイトとはクロエとレイオットではなく、まさしくメイディア=エマリー=シャトーのコトなのだが、本人はまったく理解していない。

 専攻も同じジェーンとアンになぐさめられつつ、教室に向かう。

 ジェーンとアンも内心はメイディアが悪いことはわかっていたが、ここは下手に出て機嫌を取る方が上策と思ったのだ。

 

ジェーン「あの二人もバカよねー。後でどうなっても知らないんだから」

アン「そうだけど…でもあの子がずっと一緒なのも疲れるよね……

 

 前を歩くお嬢様に聞こえないような小声で囁きあう二人。

 

ジェーン「何言ってるの。今のうちに仲良くなっておいた方が得じゃない。相手はシャトー家の令嬢よ」

アン「まぁ…」 あいまいにうなづく。

 

 先程の不機嫌はどこへ? 教室のドアを元気良く開け放ち、

 

メイディア「皆さん、ご機嫌よう! メイディア=エマリィ=シャトーですわっ!」

 

 すでに大半の者が席についており、一斉に振り向いた。

 家柄はすでに周囲の知る通りで、ジェーンと同じようなつもりで接近しようとする者も多い。

 たちまち彼女は人気者………のように、人々に囲まれた。


▽つづきはこちら

クレス「…バカバカし」

 

 冷めた目でその様子を一瞥したのは、昨夜、ジェーンの話にあがっていたそっけない態度の少年・クレス。

 少し離れたところでリクが肩をすくめている。

 前と後ろにドアのついている教室の、前側の戸が開いた。

 ちょうど現在、人だかりができているのと逆になる。

 

氷鎖女(ひさめ)「朝からにぎやかでござるな」

 

 教官の声に気が付いて生徒たちは蜘蛛の子を散らすように席につく。

 

氷鎖女(ヒサメ)「…あ」

メイディア「あ…」

 

 “ごぉるでん”。

 目が合ったその瞬間に、蘇る忌まわしい記憶。

 そのとき、教室の全員の心はひとつだった。

 “ごぉるでん”。

 

「…プッ…」

 

 誰かが思わず吹き出すと、つられて何人かが笑い出す。

 怒り再び。

 メイディアは小刻みに震え出すと、すぐにかかとを返して教室を飛び出して行ってしまう。

 

氷鎖女(ひさめ)「あわわ待つでござる拙者が悪かったでござるよ」

 

 さすがに気が引けたか、教官の氷鎖女が追いかけて行った。

 直後、我慢していた笑いがドッと教室中からあふれ出す。

 メイディアに追いつき、

 

氷鎖女「すまんでござった。ついうっかり、その形状がなんというか…こう…クルクルッ☆っと」

 

 指で螺旋を描く。火に油。

 

メイディア「それって謝ってるつもりですのっ!?」

氷鎖女「おおうっ!? あ、いや…その…まぁ、人の噂などすぐにおさまるでござる」 アセアセメイディア「人事みたいにっ! アナタのせいですのよっ!」

氷鎖女「わかった。わかった。皆にもこの件に関しては…」

メイディア「言っても無駄です! 人の口に戸は立たないし、記憶も消せません!!」

氷鎖女「確かにその通りでござるな。申し訳ない………ごぉるでん」

メイディア「……………」 ギロッ!

氷鎖女「…うっ、あっ」 口を押さえる。

メイディア「次、言いましたら、本当に言い付けますからねっ!」

氷鎖女「すまんでござるってば。…ごぉる…………ハッ!?」

 

 スッパーンッ☆

 平手打ちを食らわせて、ツカツカと教室に戻るメイディア。

 その後を頬をさすった猫背の氷鎖女がトボトボついてゆく。

 

 頬にもみじ模様がついた黒衣の教官は、黒板を前にこの国の歴史と薔薇の騎士団の歴史について軽く触れてから本題の黒魔術のなんたるかを語り始める。

 やはり大きな額あてが邪魔で素顔がよくわからない。

口だけがパクパクと動くカラクリ人形のように見えた。

 

メイディア『つまりませんわね~…』
 両手でほお杖をつく。

クレス「ふぁ~あ。そんなどーでもいいことより、早く実践授業に入ればいいのに…」 ぼそ…

メイディア『あのチビ教官にも何か変なあだ名をつけてやらなければ気が収まりませんわ。退屈だからそれを考えるとしますか』 ジト目~。

リク『この先生、教え方が初心者向けじゃないなぁ。しかも先生の方があがっちゃってナイ? もしかして他人に教えるの初めてなのか?』

氷鎖女『ああああ… 何か思ったより人数が多い! 教官なん引き受けるんじゃなかった』

メイディア『チビ…は見たまんまだから、あまりおかしくありませんね…。う~んとそれじゃあ…』

クレス『こんなんなら、ばぁばの方が絶対上だと思うな』 ふん。

リク『しかし解る奴には理解しやすい。たぶん、頭、相当いいんだろうね。あのヒト』

メイディア『バーカバーカ。チービチービ』

 

 各々、教師と授業についての感想が心の中に沸き上がっている。

 個人によってレベルがだいぶ違うようだが……

 

氷鎖女「…の理論からするに……………って、そこの二人、聞いているでござるか?」

メイディア・クレス「ギク…」

氷鎖女「…まぁ良いでござるが…」

メイディア『いいなら言わないで下さる?』 ふんっ。

クレス『いいなら言うなよ』 ぷんっ。

リク『あ~あ。この先生、思ったより厳しいぞ~? 聞いてない奴は勝手に落ちればいいって態度だ』 鋭く観察して、小さく含み笑い。

 

 この場において、正確に授業の内容と担当となった教官のタイプを同時に理解できていたのは、リク=フリーデルス一人だけであった。

今後、天才と騒がれることになるこの彼だけ。

 残念ながら、メイディアとクレスは頭の質うんぬんよりも性格の方が才能の足を引っ張っており、授業も教官の態度も全く理解の範疇(はんちゅう)外である。

 ところで若干ハタチの教官といえば…。

 生徒以上に緊張して、自分がどんな授業を展開していたのか覚えていない程であった。

 生徒は下は12~3歳から。

上は自分と同い年くらい…下手をするとそれより上かもしれない連中もいるのだ。

 元々、人前に立つのを苦手とするこの教官。

終了の鐘が鳴ると同時に教室から……というより生徒たちから逃れようと急ぎ足で教壇を降りる。

 しかし復讐心たっぷりのメイディアがそれを許さない。

 

メイディア「セーンセ♪」

 

 早速できあがった取り巻きを引き連れて、憎き教官を呼び止める。

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