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みやまよめな:67
2008.06.11 |Category …みやまよめな
社「!! マズイッ!!」
二人、あわてて散らかした物を片付け、社は廊下へ転がり出る。
そうこうしている内に襖が開く。
椿「あっ、ああ……お帰りなさいまし、都様」
引きつった笑いで出迎える。
都「何故、私の部屋にお前がいるのです?」
椿「あの……えっと……」
「ネズミが出て、この部屋に逃げ込んだモンだから……あはは」
笑ってごまかす。
都「まぁ、ネズミ?」
嫌な顔をする。
椿「はい」
開けっ放しの襖の向こうで、社が足音を消して、都のすぐ後ろをコソコソと逃げて行く姿を確認。
椿『……ホッ』
▽つづきはこちら
都「ちゃんと見つけられたんでしょうねぇ?」
椿「いえ……まだその……」
ふと下に視線をズラしたときに古い小さな鏡が置きっ放しなのに気づく。
椿『ッ!! キャーッ!? 社様のバカーッ!! 痕跡残していかないでよーっ!!』
都「それはそうと…………」
しかし相手は見慣れない鏡が自分の部屋に落ちていることをまだ気づいていない。
椿「は、はい?」 ぎくしゃく。
都「社は見かけませんでしたか?」
椿「いえ」 ギクリ。
都「早く呼んできてちょうだい」
椿「は、はぁ」
都「急いで。事は急を要します」
椿「は、はいっ、只今!!」
何だかわからないが、あわてて出て行く。
走りながら、
椿「あっ、いけない。鏡をとってくりゃよかった!!」
椿『でもいいか、あたしの持ち物だって言えば』
『それにしても、社様……骨壷とか鬼とか……また変なことを。……大丈夫かなぁ……』
万次丸に相談した方がいいかもしれないと思う。
その頃、
都「……神子である私を討とうなどと……」
独り言を言って、椿が走り去った暗い廊下を見渡す。
右目が鈍い金色に光る。
都「…………………」
都はその瞳で見た。
ほんの近い未来、民がこの城に押し寄せてくる。
そんな映像を。
だが、弟・社がいれば問題はない。
たった一人でも都を守ってくれるであろう。
一人で全てを鎮圧し、絶対なる恐怖で黙らせてくれる。
……それだけの“力”をすでに彼は持っていた。
本人が気づいていないだけで……。
“あの日”から、彼は都と同じく、ヒトではなくなっていたのだから……
廊下を見るのをやめて、部屋に踏み込む。
鏡に都が映る。
途端、
都「………………ッッ!!?」
目の前が真っ白になった。
都「………う……あ……!!?」
よろめく。
ガシャン!!
着物の袖に隠して持ち歩いていた骨壷が落ちて、割れた。
白いカケラと粉が散乱し、その上に都は倒れてしまう。
椿「社様、社様っ!!」
呼びながら椿が走っていると、角から社が姿を現した。
社「どうした、何か言っていたか?」
椿「いえ、あそこにいたのは気づいていなかったみたいです。それより急ぎの用があるとかで……お呼びに……」
社「鏡を落としてきてしまったんだ。取ってきてくれたか!?」
椿「せかされてそれどこじゃありませんでしたよぅ。ご自分でとってきて下さいよ。椿の落とし物って言ってくれていいですから」
そのとき、都が倒れたとの報告が入る。
社「何っ!? 姉上がっ!?」
椿「あれぇっ」
二人、一緒に今来た廊下を駆け出す。
やがて姉の元を訪れた社は倒れている都を発見。周囲に人が集まっている。
社「姉上っ!!」
抱き起こす。
椿「都様っ!!」
都「う……」
薄く目を開く都。
社「姉上、いかがされた!!?」
都「……や……社……なんだか……私にもわからないのですが……急に……」
「うっ!!」
右目を押さえる。