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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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響く炎:9

深之「十音裏、会いにきてやったぞ」

 

 離れにある蔵の鍵を開けると、真っ暗な部屋の中で、壁に名を刻んでいる子供が一人。

 眩しそうに目を細めて振り返る。

 

響「…これが…鬼子…?」

十音裏「……………」

 

 十音裏…様は、陶器でできた儡人形(でくにんぎょう)のようだった。

 色のない顔からは表情が消えうせ、死人のように濁った瞳には希望の一欠けらもない。

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響く炎:8

 ……どうやらワシとアレの子であるらしいソレを、我々は京の次で京次と名付けた。

 本当はワシの子だから、「響次」にしようかと思ったが、「京」の方が華やかだと思い、そうなった。

 だが、ワシはあまり自分の子だとは信じてはいなかった。

 一月(ひとつき)くらいで「ハイ、赤ん坊ができました」って……んな無茶な話があるか。

 浅漬けじゃないんだぞ!?

 しかし、そうと言われたからには、どこかに捨ててくるワケにもいかず、テキトーに育てることになった。

 だが。

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響く炎:7

焔「お前様は、ほんに変わっておるわえ」

響「何がじゃ?」

焔「己(おれ)を嫁にして、願いをいくつも叶えさせようって腹かい?」

響「……おっ。そんな手もあったなぁ? お焔、お前は頭がよい」

焔「……はっ。では何を思うて、せっかくの願いをこのようなことに……」

響「せっかくの…って…。願いは一つだなどとケチなことを言うから……。初めに思いついたままを口にしただけよ」

焔「…あきれた」

響「……………」

焔「お前様のような馬鹿者は初めて見たよ」

響「珍しいなら、得したな?」

焔「……………」

 

 嫁さんを手に入れたから、しばらくはその膝(ひざ)でのんべんだらり。

 周囲の者共がうるさく言ったが、もう祝言も済ませたし、言われる筋合いもない。

 あとは……

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響く炎:6

 ………………えー。こうして、ワシは…

 

響「無事に帰ってこれたワケだが」

配下の者「………………」

響「ワシの葬式があの翌日に終わったってどーゆーコトだ!? …説明してもらおーか?」

配下の者「いや、響様があまりのお覚悟だったので、お帰りにはなりますまいな…と」響「七日は待てと言ったろうがっ!!」 相手の首を締め上げる。

配下の者「いやいや、今日は8日目でございますれば~……

響「たわけっ!! 葬式はそのずっと前に終わっておったではないかっ!!」

配下の者「備えあれば憂いなし! 次に討ち死にされたときには葬式をせずに済みますな。いやはや…」

響「いやはやじゃねぇっ!! 次に討ち死にするときってのはどんなだっ!?」

女「…お前様…」

配下の者「…ほ? 何ですな、そこな汚い女は?」

響「おお、よくぞ聞いてくれた。これはだな、我が妻の…………」

 

 言いかけて、はたと気づいた。

名前なぞ聞いておらなんだ。

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響く炎:5

魔性「お前が終わらせる? 散らない花を散らせて見せる? それもよい」

響「………………」

魔性「さ、どうする? 首を持ち帰れば、褒美は思いのまま…」

響「………………」

魔性「けれど、己を解放してくれりゃあ、己が願い事をかなえてやるよ?」

響「…!」

魔性「どうする、お前さん? 人がかなえてくれる褒美なんかたかが知れてるじゃあないかえ?」

響「………………」

 『それは…そうだ…………いや……』

 「…………あ……」

 「甘く見るなっ!」

 

 声を聞かぬように、短刀を素早く抜き放って、魔性の首に片手をかける。

 

響「そんな口車に乗るとでも思うたか、化け物!!」

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響く炎:4

 そこまでせねばならぬこの魔性は、どんなにか強大な魔物だったか…

 ワシは冷たい汗が噴き出るのを感じていた。

 

響『あの声は、この女だ…。封印を解いてしまったのか…? ワシが…?』

 「くそっ…」

魔性「よくあそこまでたどり着いてくれた…。さすがだな」

響「うるさいっ! よくもたばかってくれたなっ!」

魔性「異なことを…。己(おれ)はたばかってなどおらぬよ。ただ、在かを教えただけ。それにお前、助かったろう?」

響「おのれっ!」

魔性「力のなくなった我の声を受け取れる者は少ない…。受けたとしてもあそこにたどり着く前に殺される…。お前はよくやってくれたよ」

響「ああ、そうだろうともさ。ワシは加賀美家が当主、加賀美 響だからな! 今、貴様も冥土に送ってやる。そこにつながれたままでは不憫(ふびん)だろう」

 『とどめを刺してやるぞ、化け物め!』

魔性「哀れと思うなら、解放しておくれな。ずっとここにいていい加減、退屈だったんだ」

響「ふざけるなっ!」

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響く炎:3

 今は紅葉の季節も終わり、冬将軍が足音を立てて近付く頃。

 それなのに、ひとひら。

 ……また、ひとひら。

 誘われるようにして、ワシは力無く花びらの向かってくる方へと歩きだした。

 そこで見たものは

 なんと……

 

響「魔性かっ!?」

 

 なんと、開けた場所に大きな古い桜の木がぽつんと立っており、しかもそれは満開に花開いているではないか。

 そして…

 刀を構える。

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