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響く炎:16
2008.01.06 |Category …箱庭の君 短編2
…矢が。
矢が遅く見えた。
ゆるりと。
ゆるりと降りしきる雨のように。
ととととと…。
体の上に降ってきて…
お焔が何か叫んでいるのが見えた。
でも…
何を叫んでいるのか聞き取れない。
…そのような顔をするな…
何か心配ごとか…?
珍しいな。
お前が。
どうした?
言うてみ?
何でも。
ワシは力になれるか?
お前の…。
…あ…、あ…。
風景が…斜めに見える? これは…、どうしたことか…?
▽つづきはこちら
焔「お前様っ!? ともかく…中へ…っ!」
柳「もうこうなったら、皆殺しておしまいっ! 火矢をかけろっ!」
「十音裏様っ! あやつ、逃げませんでしょうね!?」
十音裏「この屋敷ごと封じた。…外には出られませぬ…。魔物は逃さぬ…」
柳「さようでございまするか。さすがは十音裏様っ」
十音裏「…十音裏でございます…………深之殿……」
赤い…。赤いな…。
お焔、お前がつながれていたときも…こんな赤一面だったな…
なぁ、お焔?
お焔…どこだ…?
側に…
いないのか…?
ワシの…
応えてくれ、お焔。
側に来い、ワシの側から離れるな…。
片時も………
息子をどついて外に放り出すお焔。
外に転がる京次。
焔「…京次っ!」
息子の上に崩れそうになった、柱や天井を体で支える。
炎にまかれた木材が母の体を貫いて焼いてゆく。
焔「逃げ…京……………京次………」
上に炎の柱が折り重なって潰される。
京次「母上ぇーっ!!」
…どこかで…何かが崩れる音…?
お焔…京次…
ああ…ワシの上にも…天井…
………………………。
………………………。
………………………。
………………………。
かーごめ かごめ
かーごのなーかのとーりーは
いーついーつでやーる
よーあけーのばーんに
つーるとかーめがすーべった
うしろのしょうめん……
夜空に炎(ほのお)の柱。
外に投げ出された幼子・京次の瞳に映し。
ごぅと響く炎。
耳の奥に残り…。
いつまでも…
「 響 く、炎 」
終 了