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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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妖絵巻番外 1番の価値。:9

「教員って言ってもまだ新米だし、参考になる話なんてできないぞ?」
「違うんです、あの、聞きたいのはそれじゃなくて……」

 アタシの中の良くない考えが頭をもたげる。
 彼女さんが別の男と会っていること、言ったらどうなるだろうか。

「か……」
「か?」
「彼女……瞳さん……と」
「うん」
「上手く行ってますか?」
「……? 行ってると思うけど……ナニ?」
「もし、もしかして、ですけど……! 彼女が……」

 彼女が浮気したら、どうしますか?

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妖絵巻番外編 1番の価値。:8(手直し)

 ……ぎくっ。
 彼女がストローでオレンジジュースをかき混ぜながら、とんでもないことを口走った。
 一度きりだったのに、そんなこと覚えてなくていいってば!

「いや? 知らないぞ、それ? 来たの? ウチに?」
「あれー? 和いなかったんだっけー? 出かけてたのかな?」

 伝えておくと言ったくせにどうやら彼女は先生に伝えてくれていなかったみたいだ。
 それとも伝えたのに先生が忘れていたのかな……

「ねぇ、ひょっとして」

 彼女がイタズラっぽく笑い、アタシは中学校3年の頃から付き合いのなくなった美羽ちゃんの可愛い笑顔を思い出していた。
 この彼女さんが美羽ちゃんと重なったとき、心の奥から警報が鳴った。

 

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妖絵巻番外編 1番の価値。:7

 それにアタシの番号なんか登録していないハズ。
 知らない番号からじゃ出てくれない。

「メールだ……! メールにしよう!」

 メール好きじゃないから嫌だと教えてくれなかったアドレス。
 教えろ教えろとしつこくせがんで、無理に聞き出したアドレス。
 メールも同じく見てくれないかもしれない。
 でも電話よりはいいハズ。
 これも変わっていたらおしまいだけど。

 

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妖絵巻番外編 1番の価値。:6

 両隣の表札を確認したが、名前が出てない。
 ついでにこの部屋にも表札がない。
 下に下りてポストを見たら、あった。“古賀”。
 上に上がって、もう一度、同じ部屋のチャイムを押す。

「すみません、古賀さんという方の部屋って……」
「あら? 和のお知り合い?」

 ……和……

「あの……」
「もしかして、生徒さんかな?」

 お姉さん? じゃ、ないよ、ね?
 

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妖絵巻番外編 1番の価値。:5

 割りとお人よし。
 無理やり先生から聞きだした情報を整理してみると、高校一年で恋してその翌年にフラレて、でもずっと好きだったみたい。
 うーん。気まずかったろうなー。その後の学校生活。同じクラスだったというし。
 忘れたフリして普通に過ごしてたんだろうけど。
 片思いの彼女さんには好きな人がいて、その人しか見てないから、先生は初めから眼中になかったとか。
 初めからそれもよくわかっていたけど、フラレるのがわかってて気持ちを伝えたのはその人に自信を持ってもらいたいとかそういう考えとかもあったみたい。
 そういう風には言ってなかったけど、言葉の端から。
彼女、どうも身体の弱い人だったらしいの。
 それでやっぱりちょっと自信のない子だったみたい。
 だから、君にはこんなにいっぱいの価値があるんだよ、少なくとも自分にとっては。
 そういう気持ちを伝えたかったんだろうね。
 例え気持ちを受け入れなかったとしても、他人からそこまで想われたっていうのは、誇りになるもん。
 価値を認められるってそういうことだし。
 

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妖絵巻番外編 1番の価値。:4

以前までは奥田君がいなかった。それでも退屈なんて感じていなかったはず。
なのにその時間に何をしていたのか、ちっとも思い出せないの。
仕方がないから、古本屋にでも行こう。
面白い漫画を発掘するのもいいし、ゲームが安かったら買ってしまおう。
とにかく何か気を紛らわせてモヤモヤした気持ちをどこかにやっちゃわなきゃ。
靴を履いて、街に繰り出す。
自転車を店の駐輪場で止めてキーを抜いたら、仲の良いグループの子たちがナナメ向かいのゲーセン前に群がっているのを見つけた。
プリクラ写していたり、UFOキャッチャーで白熱していたり。
いいところにいるじゃない。
アタシも混ぜてもらおうと駆け寄ろうとして、あることに気がついてしまった。
どうして誘ってくれなかったの?
少なくとも電話、午前中にかけたはずだよね?
予定が入ってるって断られたよね?
予定って、皆と遊ぶことならそう言ってくれればいいのに。
一緒に誘ってくれてもいいのに。
 

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妖絵巻番外編 1番の価値。:3

 ……結局、美羽ちゃんのお願いはお父さんに却下され、そもそも先生は月水金が都合がいいからバイトを入れているのであって、他の曜日は大学で取っている講義とかで無理。
 さらに同じ日に別の生徒は時間的に請け負えないことが判明。
 そんなことを知らなかったアタシは散々、先生の前で泣き喚いて恥をかいてしまった。
 黙っていても何も変わらなかったというのに。
 ちゃんと知っていたら、あんなみっともない姿を見せずに済んだのに、あんまりだ。
 冷静になってみるとなんて子供っぽいワガママだったことだろう。
 次の金曜日は風邪を引いて具合が悪いと嘘をついて、先生に来ないようにと電話をしてもらった。
 具合が悪いと思い込んだら、本当に具合が悪くなってきた。
 ……ような、気がする。
 ベッドにもぐっていたら、お母さんと先生の声がする。
 ちょっと! 来なくていいってちゃんと電話してくれたの、お母さん!?
 しかも玄関で帰ってもらえばいいのにお母さんったら、余計な気を利かせてドアとかノックしてくるし!!

 

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