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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 68-2

 これまで生活費だけを置いてスタコラ養成所に戻ってしまうだけの教官がどうしてそんなステキ土産を持ってきてくれたのか不思議にも思わずに彼女は早速、着替えに自室にこもった。
 
メイディア「薔薇騎士レンジャー☆ブラック!!」
 
 鎮のいる1階リビングまで下りてきて、颯爽とマントをはためかせて登場。
 テンションの低い拍手をしてもらって大満足だ。
 
鎮「突然だが、薔薇騎士レンジャー」
メイディア「何かね、良い子の皆!」
鎮『“みんな”?』
 
 右見て、左見て。
 ……一人しかいない。
 まぁいいか。

▽つづきはこちら

 
鎮「平和を乱すヤツがいたら退治して欲しいのでござるよ、レンジャー」
メイディア「お任せあれですわっ♪」
 
 ローズブラック☆マジカルステッキを振り回して、キャッキャッと大喜び。
 
鎮「それだけやる気だと助かるでござるな」
 
 とある町の地図をテーブルの上に広げる。
 
メイディア「?」
 
 はしゃぐのをやめてメイディアもそれを覗き込んだ。
 
鎮「実は養成所にはさる高貴な方がかくまわれておってな。その警護をこの鎮が任されたワケだ」
メイディア「はぁ」
鎮「拙者ももちろん行くが、……ゴールデン。お前様にも手伝って欲しい」
メイディア「お、お任せ下さい!」
 
 手伝えと言われて姿勢を正す。
 
鎮「行く行くは拙者に代わってお前様がこの方に仕えると良いのではないかと思うが、そこはそちらの希望と実力次第」
メイディア「わ……ワタクシの??」
鎮「さよう。ただし守れるくらいの力が伴っておらぬと話にならぬ」
メイディア「まさか……それであの人形?」
 
 薔薇の騎士を目指せなくなったのに修行も勉強もやめないメイディアに仕掛けられたあの人形のことである。
 今は破壊されて沈黙している。
 
鎮「……渡した魔術の本もそうだ。読んだな?」
メイディア「読みました!」
鎮「よし。さすがはゴールデン」
メイディア「………………」
     『ただのイジワルではなかったのね? 何かお考えがあるのだわ』
 
 顔を引き締めてこくこくとうなずく。
 
鎮「この屋敷はさぞや生活しづらかったであろう?」
メイディア「もう慣れましたわ」
鎮「不便という意味ではござらぬぞ?」
メイディア「は?」
鎮「ここは拙者の魔力で空間が重たくなっておる」
メイディア「……あ」
鎮「気がついたか」
メイディア「……はい。気分が悪くなったりとか……だるかったり……不調がありました。そのことですね?」
 
 時には吐き戻したり、食欲が落ちてたりもしたのを思い浮かべる。
 
鎮「今は?」
メイディア「そういえば、平気ですわね。あ、でも外に出るとやっぱりもっと軽いなと感じますわ」
鎮「それはそうだろう。でもま、中にいても大丈夫ということは耐性がついているな。よしよし」
メイディア「ええと……?」
 
 相手の考えを計りかねて小首をかしげる。
 
メイディア『あら? 先生のクセがうつったかしら?』
鎮「ここにいる間、お前様は養成所にいた頃よりもずっと強くなっているはずだ。短い期間でやるからかなり粗いが、すでにクレスやリクとも渡り合える力を持っている」
メイディア「!?」
鎮「ハッキリ言って、養成所の修行など生ぬるい。あんなものはお遊びだからな」
メイディア「!!」
 
 充分にキツかった記憶のあるメイディアはこの発言に驚いた。
 
鎮「正攻法であるのは重要だ。基本がなっていないところにいくら物を積み上げても足元から崩れるのがオチだからな。だが、それだけでは試合に勝てても戦いには勝てない。養成所は戦い方を教えてない」
 
軍隊を作り上げるのだから、そろっている必要がある。
そのために教えられる魔法も限られているし、教官としても育て方もある程度も範囲と方法が限られてしまっている。
そんな中で教官たちは自分の思うことを伝えていかねばならないのである。
鎮は軍隊の騎士を鍛え上げるよりも個々の戦士……あるいは酷い言い方をすれば殺し屋を作り上げる方が得意だ。
だからヒサメクラスの生徒たちは力が不揃いで、また性質がやたらと偏っている。
平均よりもひたすら長所に重きを置いて伸ばさせた結果だ。
これではレヴィアスに指導者として劣っている、無能者と言われても無理はない。
養成所は軍隊という大きな生き物の一部になることを望んでいるのだから。
 
鎮「これから行われるのは、命のやり取りだ」
メイディア「………!」
鎮「ゴールデン、よく聞けよ。怖ければ、初めから話を蹴ってくれていい。義理立ては不要。そもそも義理などないのだから」
 
 前置きを置いて、息を吸い込む。
 
鎮「……ゴールデン」
メイディア「はい」
鎮「ワイズマン公爵を相手取れるか?」
メイディア「!?」
 
 瞬時にメイディアの顔色が変わる。
 彼女にとって恐怖の対象、タブーの名前なのだ。
 
鎮「お前様の身に恐怖に刻みつけたあの化け物公爵だ。恐らく、ヤツが敵に回る」
メイディア「……………」
鎮「守る対象は、クロエ=グラディウス。この国の姫君であらせられる」
メイディア「クロエが!? だって……ええっ!?」
鎮「本来はクローディアというらしい。彼女はそのことをまだ知らぬ。我々の仕事は彼女とまた彼女を守護する宝石を身につけた人間……リク=フリーデルスの二人を敵から守ること」
メイディア「……………………」
     「つまり……あの二人は……」
 
 選ばれし人間ということだったのか。
 驚きを隠せずに座った膝の上で両手を握り締めた。

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