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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 64-30

 自分が殺すはずの相手が何者かに命を奪われた。
 炎座、悟六、冴牙と遊んで理性が吹き飛んでいた頭が冷や水をぶちまけられたように冷めてゆく。
現実が、返ってきた。
 考えられる可能性は、3つ。
 一つはリクとクロエが戻ってきて初と遭遇し、倒した。
 もう一つは、第三の存在。自分たちだけと思っていたのは間違いで、この山には魔物か賊が潜んでいた。
 最後の一つは………………
 そんなはずはないが、偲が手の平を返したことだ。
 
鎮『リクとクロエというのが一番自然なのか? それにしては争った形跡が……』
 
 魔物や賊にしても同じ疑問が残る。
 だとすれば?
 

▽つづきはこちら

鎮『いや、理由がわからない。お初を殺す理由など……』
 「…………お初…………」
 
 微かな微笑を浮かべて深い眠りについた初を見下ろした。
 幼い頃から変わらず、偲を愛し続けた初。
 気遣いのよく出来た少女だった初。
 絵をよく褒めてくれていた初。
 優しすぎて忍びには向かなかったであろう初。
 自分を狩る使命を帯びなければ、今も里で穏やかに暮らしていただろうに。
 ちょうど女盛り。誰かの……できれば、偲の花嫁になって。
 所詮はくノ一。
 ここでなくともいずれ戦場には赴いただろうが、わずか22歳。早すぎる死だった。
 花は花のまま、枯れることなく時間を止めた。
 冴牙を極限にまで苦しめた悪魔の手で、鎮は初が吐き出した血と泥を丁寧にぬぐってやった。
 それから初の衣服にやっぱりあったつげの櫛を取り出し、乱れた髪を整える。
 血を指先にとって、色のなくなった唇に朱を引いた。
 最後にこの山に来ても目を向けることのなかった夏の山百合を手折って、その胸に手向ける。
 
鎮「よし、綺麗になったぞ、お初。これでどこに行っても恥ずかしくないわ」
 
 小さく呼びかけた。
 さぞや自分を恨んでいるだろうなと同時に思ったが、それは仕方のないことだと思考の隅においやった。
 幼き日に一度は心寄せた幼馴染の死に決まっていたこととはいえ、心が痛んだ。
 村の男衆を何人殺しても痛まなかった胸が。
 今更になって、お前のせいで悲劇が起こるのだと言った炎座の言葉が脳裏に蘇る。
 お前さえいなければ。
 それは母の口癖でもあった。
 望まれていない命が生きようとするから、悲劇の連鎖が生まれるのか。
 自分が生きていても、誰も喜んでくれはしないのに。
 全ては自分だけの為。
 ふいに強烈な虚しさが襲ってきて、何もかもを投げ出したくなった。
 初のせいだ。
 初のせいで恨みつらみに取り憑かれた頭が現実に引き戻されたからだ。
 あと一人、兄さえ殺せば敵はいない。
 殺して……それで、生き残って……何だろう?
 いや、疑問を抱いたらダメだ。
 疑問を抱いたらおしまいなのだ。
 今重要なのは、兄が指きりの約束を破ったことである。
 養成所の生徒に手出しを禁じたはずなのにそれを犯したことである。
 些細な約束ならともかく、あれほど、あれほど言ったのに。
 
鎮『息の根を……止めてくれましょうぞ』
 
 迷いを打ち払って駆け出した。
 あのときと同じだった。
 鎮は約束をする者をことごとく討ち果たしてしまう。
 とある国で王座を巡って内乱が起き、囚われていた王子を救ったときもそうだ。
 王座奪取のため、自分を必要としてくれた者のために戦った。
 王子に褒美を求められたとき、彼はこう答えた。
 ずっと側において欲しいと。
 これ以上もなく鎮を頼りにしていた王子は即答してくれた。もちろんだと。
 永遠の友情を約束してくれた。
 けれど最終的には、鎮は火刑に処されることとなった。
 王座を手に入れた元・王子が戦乙女として国民に影響力を持つ英雄を邪魔になったのである。
 そこで鎮は思った。
 約束通り、命をもらおうと。
 彼の約束は重いのだ。
 命さえも賭ける覚悟がない限り、この男と約束を交わしてはいけない。
 文字通り、命を奪いに来る報復の死神だからだ。
 どこかで笛が鳴った。
 素早く反応した鎮が木の上に飛び移ってそこから一直線に音の方向へと枝を渡っていった。
 明らかに、呼んでいる。
 その笛の音は、リクとクロエにも届いていた。
 距離が近い。
 二人は顔を見合わせて走ろうとし、今回はようやく踏みとどまった。
 
リク「っと、危ない危ない。また地面とチューしちゃうトコだった」
クロエ「う、うん。でも急がないと」
リク「“おかし”だね」
クロエ「押さず、駆けらず、しゃべらず」
リク「よく出来ました。よし、急ごう」
 
 とうとう学習。
 そこからそう遠くは離れていない場所で、鎮を呼び寄せた偲は刀を服で拭っていた。
 初の血である。
 やがて葉がこすれる音が近づいてくることに気がつく。
 来た。
 偲は自分の中の人間的な感情が沼の奥底に沈んでいくと感じていた。
 おかしなことをしようとしているのはわかっている。
 狂っていることもわかっているが、妙に冴え渡っていた。
 初めから、こうすべきだったのだ。
 一族に今までに一度としてなじめたことがあったか?
 自分は異質の者なのだ。
 村長の娘という位置で里に迎えられた、実際には一族とは血のつながりのない巫女姫がやってきたときに惹かれたのもきっとそういうことだ。
 濁った濁流に清流を流し込むために遣わされた姫君。
 それに惹かれるのは当然の成り行きだった。

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●Thanks Comments

初が....

あまりにもあっけなく偲に殺られてしまった(T_T)
でも、ヒサメ先生に殺られてしまうよりも、そっちの方が良かったのかも....。うわぁーい;.....次は偲VSヒサメ先生だね....(^_^;)兄弟対決だ☆
でもリクもクロエも笛の鳴ってる方に向かってる....。
参戦するのかな? 果たしてヒサメ先生の呪いを解く鍵はあるのか、それともやはり兄弟対決になってしまうのか....またまた続きが楽しみです。(^-^)

From 【あっぴ】2008.09.16 00:22編集

はい。

あっけなくやられました。偲に。
もー、早く氷鎖女編終らせたくてしゃーないです。
リクもクロエも一応、参戦予定なんですが……
どーやって終らせるかな、コレ(爆)
いつも楽しみにしてくれてありまとうです!
よし、やるぞー☆

From 【ゼロ】2008.09.16 00:35編集

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