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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 64-27

クロエ「今の笛、先生を見つけたっていう合図だったんじゃ?」
リク「よし、急ごう、俺たちも!」
 
 二人、駆け出す。
 そして、滑って転ぶ。
 
クロエ・リク「………………………………」
リク「……クロエ」
 
 ゆっくりと泥に突っ込んだ顔を上げる。
 
クロエ「なぁに」
 
 同じく泥にまみれた顔を向ける。
 
リク「名案があるんだ」
クロエ「奇遇ね。私もなの」
 
 声をそろえ、
 
リク・クロエ「走るのはやめよう!」

▽つづきはこちら

 
 二人、慎重に歩くことにした。
 でも、コケた。
 偲に追いつくことは諦めて、地道に山の中を進む。
 兄弟が遭遇すれば戦いは免れない。
 間に入ってそれだけは回避したかったが、慣れない山と夜。それも道から外れて獣道も見つからない中である。
 慌てて転倒を繰り返すよりはゆっくりでも確実に進んだ方が早いと焦る気持ちを抑えた。
 それから。
かなりの時間を浪費した。
 もう戦いは始まって、下手をすると終っているかもしれないという不安が今度はこみ上げてきていた。
 
リク「大丈夫。戦闘音は聞こえてない」
 
 自分に言ったのかクロエに言ったのか区別がつかないような呟きをもらす。
 やがて戦闘が間違いなくあったであろう場所に踏み込んだ。
 草があちこち踏まれて倒されており、茂みが刈られておかしな形になっている。
 木の幹に鎖の跡、枝もそこかしこに落ちて荒れていた。
 
クロエ「焦げ臭い……」
 
 どうやら炎が上がった場所へたどり着いたらしい。だが炎自体は完全に消失しており、真っ暗だ。
 
リク「……? 誰かが……いる?」
 
 声を潜めて、クロエの腕を引く。
 じりじりと間合いを詰めて近づけば、人間の死体であることがわかった。
 かなり大きい。
 これは……
 
リク「エンザだ」
クロエ「ってことは、先生が……」
リク「そうなるね」
クロエ「ね、ねぇ……あそこにも……」
 
 今度はクロエがもう一体の影を見つけた。
 やはり微動だにしない。
 
クロエ「せ……先生じゃ……ないわよ……ね?」
リク「まさか……」
 
 相打ち?
 浮いた不吉な単語を頭を振ってかき消した。
 側によって座り込んだ形の人間の死体に触れてみる。
 
リク「……ちがう。先生じゃないね」
 
 体格があまりに違いすぎる。
 シノブでなくエンザでないとするとゴロクかサエガだ。
 髪が広がっていればサエガだと思ったが、首から上がなかった。
 思わず手を引っ込める。
 
クロエ「じゃあ、この人にも先生は勝ったんだ」
リク「うん。でもそれだけダメージも受けているはず。ここにはいない、急いで探し出さないと」
クロエ「そうね………………っきゃ!!」
リク「クロエ!」
 
 何かを踏んでクロエが尻餅をついた。
 座って地面が近くなるとむっと血の匂いが濃くなって思わず口を押さえる。
 足元に転がっていたそれは人間の足だった。
 
クロエ「先生!?」
 
 足をたどって、その先がないことが確認されるとクロエは悲鳴を挙げて後ずさった。
 
クロエ「リク! 明かりを!!」
リク「よし」
 
 光の魔法で辺りを照らしてみる。
 今まではどこから来るか知れない敵に備えて場所を知らせるのを拒んでいたが、もう少なくとも2人の刺客は消えたわけだ。
 偲と彼を呼んだ人間も側にはいない。
 ともすればあと一人だけに気をつければいいわけだ。
 そしてその一人の可能性と言うのも、たった今、消えた。
 クロエが激しく嘔吐した。
 光の魔法に照らし出されたのは、無残としか言い様のない惨たらしい景色だった。
 どうやったらここまで残酷になれるのかというくらいに破壊された死体がそこに転がっていたのである。
 癖の強い髪でかろうじて冴牙であることが判明したが、そうでなければ人間であったことすら判別が難しいくらいになっている。
 きれいに切り落とされたというよりは引き千切られたに近い断面の足は無造作に落ちていて、腕はあたかも木から生えているかのように枝に突き立てられ、悪趣味なオブジェを作り出していた。
 悲鳴を挙げたまま硬直している大きな口には歯がなくなっていた。
手の爪と共に辺りに散らばっているのだ。
 眼球がえぐりとられた後の黒い穴が虚ろに空を見上げている。
 両耳もあるべきところについていない。
 腹部は何度も刺されて皮膚と肉が裂け、臓物がはみ出していた。
 これらの残酷な行為は恐らく被害者が息のあるうちに行われたものと思われる。
 リクの整った顔から血の気がすぅっと引いていった。
 魔法も消えた。

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