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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 64-22

 いつもは寂れている里も今日ばかりはズラリ並んだ提灯の明かりで華やかだった。
暑い真夏に熱い炎を焚いて熱い熱気を放出する人々は、みな何かよくないモノを追いやろうと夢中になっているようにもにも見えた。
炎で闇を追い払え。
炎で闇を焼き払え。
 熱は普段の抱えているわずらわしいことを全て溶かしてくれた。
 理性なんか吹き飛ばし、人々は心地よく狂う。
 ごちそうや酒が振舞われて、大人たちはほろ酔いに。
子供たちは駆け回って、踊りの輪の中に身を投じる。
今日ばかりは遅くまで遊んでいても叱られないから、誰も彼も浮ついていた。
全てが赦される特別な日。
初に誘われて恐る恐る踊りの輪に加わった。
弟を連れていない偲をはじき出そうとする者はいなかった。
……嬉しかった。
踊れや、踊れ。
歌えや、歌え。
食って、呑んで、また踊れ。

▽つづきはこちら

宴もたけなわとなった頃、ふと閉じ込めておいた弟が気になりだした。
そうでなくとも蒸し暑い夜だ。
箱の中で息が出来なくなって死んでいたら困る。
それに祭りが賑やかであればあるほど、行きたがった弟が箱の中でまだ泣いているかもしれないと思うと急に可哀想になってきた。
いつもちょっかいを出してくる悪童どもはもう踊り疲れて、眠い目をこすりながら家路に向かっている。
今なら連れ出してこっそり楽しませてやってもいいだろうと考えた。
さっきぶってしまった分もそれでチャラだ。
そんな都合のいいことを考えて用事を思い出しただのと幼稚な嘘をついて初と別れ、家に戻ってみたらば数人の若衆が何故か留守中の自分の家から出てくるところだった。
村で家に錠を下ろす習慣はないに等しい。
錠と言ってもつっかえ棒のような単純なもので、弟を閉じ込めた衣装箱も家の戸も同じ作りだった。
棒を一本引き抜けば簡単に開いてしまう。
だからといって、無断で留守の家に入るなんて。
若衆が酔っ払っていたので、敢えて文句をつけようとは思わなかったが、腹立たしくなった。
睨んでいる偲に気づいた若衆は顔を見合わせたが、すぐにばつの悪い笑みを浮かべて冗談だと肩を叩いて行ってしまった。
田舎も田舎、とんでもない大田舎であるこの村では、人の家にいきなりやってきて上がりこんでお茶をするというのも日常の風景であったが、それは中に主があってのことだ。
村は狭い。しかも一人の例外もなく血縁者である。
そんな中で盗みなどが横行した試しはなかったので、偲も泥棒だとは思わなかった。
泥棒という存在すら知らなかった。
ただ、主のいない家を勝手にされたのが不服だったのだ。
さすがに誰もいない家に踏み込むのは、このおかしな村であっても常識から外れている。
どうせ人の家を勝手に呑んで騒ぐ場所として使っていたに違いない。
そんなことなら他でやれ。父親に知れればタダでは済まないぞと偲は口を尖らせた。
だから向こうも冗談だとごまかしたのかもしれなかったが。
不満を露にした顔のまま部屋に踏み込み、あっと声を上げた。
衣装箱が開いていた。
中に収められていた母親の衣装が床に散らかっていた。
衣装箱から生足が一本、はみ出してぶら下がっている。
投げ捨てられたゴミみたいに。無造作に。
不吉な予感に全身が凍る。
ひょっとして。
自分がいない内に酔っ払った連中に殺されたのではないかという不吉な予感が脳裏を掠めた。
恐る恐る覗いいみると弟が布を咥えて震えていたので生きているとわかった。
目を見開いて縮こまった体を強ばらせ、顔は真っ青だ。
たった今、鬼にでも遭遇したかのような怯えを見せている。
兄が戻ったことを知るや、弟はうわっと泣き出した。
泣いて泣いて止まらなかった。
手首が帯で縛られており、乱暴されたのだとすぐにわかった。
部屋中が、酷く蒸し暑く、酷く酒臭かった。
若い男特有の濃厚な匂いがそれに混ざって吐き気を誘う。
広場からだいぶ離れた家の中にまで楽しそうな祭囃子がくぐもって聞こえてきていた。
場違いなまでに陽気な笛と太鼓と歌声と。
祭りの熱は、人を狂わせる。
普段、抱えている煩わしいことを全て溶かして、理性さえも吹き飛ばす。
それが、赦されてしまう夜だった。
誰も彼も浮ついて、全てが赦される特別な夜。
踊れや、踊れ。
歌えや、歌え。
食って、呑んで、また踊れ。
散々泣きはらしてから鼻をすすりあげると、こんなときだというのに弟は信じられないことをぽつりと口にした。
 
「……あにさま、シズもお祭り見たい……」
 
祭りはそろそろ、勢いを衰えさせている頃だった。
ちょうど、炎が沈静されていくのに似て。
それでも弟は祭りを見たがった。
きれいな着物を着て、みんなの仲間に入れてもらって、楽しく踊りたい。
それは、とても素朴で幼い望みだった。


 
冴牙の爪と鎮の刀が何十回目の火花を散らした。
 
冴牙「シャアアァ!!」
 
蛇の威嚇のような声をしぼり出し、冴牙は駆け上った木の枝のしなりを利用して速さを極限にまで高め、上空から襲撃した。
 
冴牙「イーッヒャッハァ!! これは避けられまい、鎮ァァァーーー!!!」
鎮「!!」
 
 落下+体重+しなりを利かせた攻撃は、まさに必殺。当たればタダでは済まない。
 あまりの速さについていくのが精一杯である。
 余裕なく地面に転がって、難を逃れると着地した冴牙はもうすでに木の上に上がっていた。
 同じのが来る。
 とっさに鎮は悟六の鎖鎌を取り上げた。
 冴牙が落下してくる瞬間に分銅を放つ。
 
冴牙「ナニッ!?」
 
 空中で方向転換はできない。
 あわてて身体を丸めてスピードを殺したが、鎖は獣を捕らえる網として対象物を大きくゆったりと囲んでいった。螺旋を描いて。
 
鎮「……捕らえたっ! 冴牙ッ!!」
 
 鎖を力いっぱい引く。
 輪が急激に縮まって敵の身体を締め上げ捉える。
 
冴牙「ぐはっ!!」
 
 勢い良く地面に叩きつけられた冴牙はうめいて転がった。
 
鎮「やりぃ」
 
 口を横に引き上げて笑う鎮が自由を奪われた冴牙の元へと歩み寄る。
 
冴牙「チクショウ! テメェ!! 鎮のクセにっ!! 離しやがれ!!」
鎮「……おおっとォ? ずいぶんと強気じゃないですか、冴牙兄ィ」
 
 足先でちょんと突いて転がす。
 
冴牙「うっ」
鎮「惨めなカッコウであんまり威勢がいいと、鎮、あったまにきちゃうナー?」
冴牙「ス………………スミマセン…………へっ……へへ」
 
 捕まった途端に卑屈な笑みを浮かべる冴牙は、これまで自分のしてきたことの報復を考えて肝を冷やした。

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●Thanks Comments

なんか...

偲もヒサメ先生の幼い頃もなんとなく切ない....(T_T)

でも、偲はそれでもやっぱり弟想いなんだな....と思いました。ヒサメ先生の祭りに行きたがってた気持ちがよくわかるし、偲も弟がいない幸せを望んでいたのもよくわかる....。でも、やっぱり兄で弟想いだ(^-^)
冴牙、ヒサメ先生に捕まった。どうなる?!!!でも、偲もずっとそこにいたから偲も戦闘に入ってくるのかな?

いやぁぁぁーっ!
できれば兄弟対決は見たくない。偲とヒサメ先生戦ってほしくないよぉ(>_<。)
でも、冴牙がもし、やられるとあとは初と偲しか残ってない(T_T)あーっ!どうなるんだ氷鎖女編☆
でも、続きは気になる....。

From 【あっぴ】2008.09.14 01:38編集

偲は、

弟想いのいい兄ですよ(笑)
ちょっと本人的には複雑なんですが。

書くのにかなり手間取って苦しみまくった氷鎖女編、どうやら先が見えてきましたぁ~;
無理に進めた感が強くて満足いく内容じゃないのが残念ですが。
あとは初と偲。
頑張ります!

From 【ゼロ】2008.09.14 01:47編集

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