HOME ≫ Entry no.1024 「レイディ・メイディ 64-20」 ≫ [1030] [1029] [1028] [1027] [1026] [1024] [1023] [1022] [1021] [1020] [1019]
レイディ・メイディ 64-20
2008.09.12 |Category …レイメイ 64話
降り始めた大粒の雨はやがて数を増し、燃え広がった炎を鎮火させ始めた。
炎に戦い2戦。木まで倒れている。
さすがにもう気づかないとは言わせない。
残り3名、まとめて来るか?
だがその前に。
鎮は血のついた刀を衣服でふき取り、地面に突き刺して倒れた木の上に腰を下ろした。
鎮「……ちょっと、休も」
分銅が掠って切れた額に手を当ててみると、ぬめった血がついてきた。
痛い。
これは傷がふさがっても当分、アザになるななどとのん気に彼はつぶやいた。
▽つづきはこちら
クロエは走っていた。
雷に怯え、激しく降り出した雨に足をとられて何度も転びながら。
そしてようやく、馬のいななきが側に聞こえた。
たどり着いたのだ、初めの場所に。
慎重に歩を進めて辺りに人が居ないかを確認しつつ進む。
確認とは言っても視界は頼りにならない。
先程まで、そう遠くないところで炎が上がっていたようだったが、それももはや勢いを失くしてしまっていた。
また、気配と言っても、この雨ではかき消されてしまう。
不安に胸を押しつぶされそうになる度に条件は相手も同じなのだと言い聞かせて、闇夜を這っていった。
クロエ『今、何時頃かしら……? ずっと走っているような気がするけど……夜明けはまだなの?』
明かりが欲しいとこのときほど思った夜はなかった。
しかしこの天気では夜明けになってもまだ暗いだろうなと暗澹たる気分にさせられる。
捕まっていたときの記憶の中の景色を頼りに這い進む。
膝は濡れた土で汚れたがそんなことは構っていられない。
何かに触れた。
手探りで触って、思わず悲鳴を挙げてしまう。
首だったからだ。
ぬれそぼった髪の毛が指に絡みつく。
クロエ「やっ!!」
悪寒が全身を走り抜けた。
稲妻が光って、その正体を青く浮き上がらせる。
確かめるまでもない。
人間の首だ。
そうなのだ。
鎮がローゼリッタの人間を2人も殺していたのだ。
クロエはその死んだ人間の武器を取りに来ているのだ。
急激に迫ってきた吐き気をこらえきれず、クロエはその場で胃の中の物を全て戻してしまった。
クロエ「おえぇっ! ゲェェッ!!」
「うっ……ううっ」
うずくまっているとバシャバシャと水を跳ね上げる足音が近づいてきた。
リクかそれとも……?
まだ胸はむかついて仕方がなかったが、声を押さえ込んでじっと耐えた。
緊張が胸を締め付け、そのくせ血管を広げるように血が押し出されてくるから、心臓が痛いくらいだった。
呼吸を止めて見えない闇に目を凝らす。
雷が音を立てている。次に光ったら終わりだ。見つかってしまう。
いや、稲妻で辺りが照らされたら剣の落ちている場所を確認するのだ。
それを手に取って戦えばいい。
けれどその剣は死体の胴体にくっついているのだ。
とっさに外せるだろうか。
そもそも近くにあるのか。
心臓の音がうるさいくらいに響いてクロエの精神を絶えず責め立てた。
もう一度、空が光った。
瞬間的に浮き上がったのは、見慣れた友人の姿だった。
一気に緊張が解けて、安堵のあまりにその場に崩れてしまった。
クロエ「リクなの? ここよ」
リク「! クロエ!」
再び闇に包まれると声を頼りに走り寄ってきたリクが………………クロエにつまづいて、いや、踏みつけて転んだ。
リク「ご、ごめん!」
潰されたカエルのような悲鳴を挙げたクロエを抱き起こしてあわてる。
クロエ「ごふぅ」
リク「ごめん、ごめんっ」
クロエ「へ、平気……それより、リクは大丈夫だったのね、よかった」
リク「うん、人形は谷底に落としたよ。ははっ、肝を冷やした」
クロエ「もー! 追ってきてくれなかったらどうしようかと思ったわ」
リクは苦笑いをし、クロエはわざとなじるように言った。
互いの無事を喜び合うのは少しだけに留め、二人は再び手探りをしながら剣を探し始めた。
雨によってあらかた沈静されてきた。
それでもまだ蛇の舌のように赤く燻っている炎に囲まれて彼は次の獲物を待っていた。
自分から動くのは億劫だから待っていた。
じっと、体力の回復と共に。
仕掛けた罠で息を潜めている蜘蛛の態で。
そこに踏み込んだ3人目は、冴牙だった。
人形を片付けて、獲物を横取りされまいと急いできたのだ。
互いに互いを「獲物」と認識している。
姿を現すや、目上の者が二人、無残な姿をさらしていることに少なからず驚いた。
空が光を与えずとも、ここには残り火があり、二人の息がすでにないことも確認できた。
だが取り乱すことはなく、下品に口を歪める。
冴牙「……そうこなくっちゃあ、面白くねぇよなァ?」
鎮「……だろ?」
PR
●Thanks Comments
ヒサメ先生カッコいい!!!
次は私の苦手な冴牙の番だね(^_^;)
しかも、ヒサメ先生蜘蛛の糸をはりめぐらせているように次の獲物待ってるし。うぉぉぉ!カッコよすぎる!!!
悟六...なんか可哀想でした(T_T)
お腹の中にいた赤ちゃんにも会えず、家族達に抱きしめてもあげれなく、ただ、任務のために里から離れて....あっけなくヒサメ先生に殺られてしまった....里にある家族が可哀想になりました(T_T)
氷鎖女祭り恐るべし☆でも、リクもクロエもクロエが剣を手にいれたら参戦なるか?!それともヒサメ先生が一族を全部相手するのかな?
谷底に落としたシズカ人形はまた動くのか?わーいっ。どんどん続きが楽しみになっていく♪
冴牙、苦手?(笑)
悟六、思ったよりちゃんと描けなくて残念です;
鎮が逃げたせいで色んな人が不幸になってます、氷鎖女の里では。
次は冴牙の番です(笑)
何やらもうすぐ更新もできそうな気がする。
よしガンバレ、我。自分にエール(爆)
●この記事にコメントする
●この記事へのトラックバック
TrackbackURL: