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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 62-3

 いや。
 クレスやリクだったら結婚してあげてもいいかな、などと軽い気持ちで考える。
 ダレスは×。レクは○。カイルは×。ミハイルは○。ヴァルト○。ガーネット○、ジャック×、レイオット、○。フェイト……×。
 相手の気持ちはさておき、思い浮かべる面々に○×をつけてゆく。
 そこにレイオットが何故か含まれているのを当人が知ったら相当、嘆くことだろう。
 
メイディア「……ハァ、ごちそうさま」
 
 誰に言うとなく感謝の言葉を口にして、食器を重ねて流しに持ってゆく。
 

▽つづきはこちら

メイディア「メイ。今日もご飯はサイコーだったよ。メキメキ腕が上達していくね。天才的だ! 料理人にでもなったらどうだい? いやですわ、そんな。ワタクシなんてまだまだです。でもアナタへの愛だけはたっぷり詰め込んだつ・も・り♪」
     「……なーんてっ☆ ウッフフフフ」
 
 桶の中で食器洗いをしながら、仮想恋人を作り上げて一人芝居。
 一人の時間が増えると独り言も増えるメイディアだった。
これではクロエと変わらない。
時々、歌いだしてみたり踊りだしてみたり。
気持ちよく騒いだ後にやってくる沈黙が怖くて一日中しゃべり続けることもある。
おとなしいのは寝ているときと本を読んでいるとき。
それから修行に明け暮れているときくらいである。
修行の方は順調も順調。
他にやることがないのだから当たり前かもしれない。
学科などは全くやらなくなって止まってしまった分、全て魔術につぎ込んでいる。
教師がいないので新しい魔法が覚えられないが、今まで習った魔法がより正確により強力にステップアップしている。
皆が新しい魔法に費やす時間と努力を全て今までの古い魔法につぎ込んで完成度を高めているのである。
師である鎮は多くの魔法を使わずとも一撃必殺を磨けば勝てると昔、彼女に言った。
そのときは理解に苦しんでいたが、今ならわかる。
魔法は広く浅くより広く深くだ。
残念ながらもうメイディアには広くの部分は期待できないが、深くだったらこれからもやっていける。
それからその数少ない魔法をどれだけ有効に使えるかが鍵となる。
後片付けを終えて、さて、また魔法の勉強だと思ったときに2階で物音がした。
 息を潜めていたが何も起こらない。
 いつもの家鳴りである。
 緊張を解いて深々息を吐き出す。
 昼間、妙な男に後をつけられたり、無理に連れ去られそうになったりしたものだから過敏になっているのかもしれない。
 
メイディア「先生は家鳴りだって言うけど……どうしても人がいるように思えて仕方ないのよね」
 
 不安げにもう一度天井を見上げる。
 
メイディア「……本当に家鳴りなんでしょうね?」
 
 口の中で小さくつぶやく。
 頭の中に働きもしないで家にこもっている、ひ弱で気味の悪い男の影がちらつく。
 帰ってきて、手荷物を置いたらすぐに鍵をかけたはずだ。
 家中の戸締りも確認した。
 あの男が侵入している可能性なんて万に一つもないハズなのだ。
 それでも考えれば考えるほど言い知れぬ恐怖が膨らみ、大丈夫と言い聞かせる自分が押しのけられてしまう。
 こちらは魔法使いで誉れ高き薔薇の騎士団を目指していた見習い。
 しかもこういっては何だが、成績もトップクラスを維持してはいた。
 最後の方はメタメタになっていたが、今は不調を取り戻して余りある力を有しているはずだ。
 なのに、どうしてあんなひ弱な男一人なんかをこうも恐れているのだろう。
 ヒサメ先生がこの家を離れるときに、特に男に注意しろ。
 男は信じるな。家に呼ぶな上げるな。と散々言っていたことの意味が今更、わかったような気がした。
 ヒサメ先生は自分も男なのにおかしいと当初、メイディアは笑ったが、こうなってくると笑い事ではない。
 見知らぬ男はただ男性であるだけで、恐ろしいものなのだ。
 ダンラックの下であった出来事がトラウマになってしまっている今の彼女にとっては。
 いいや。
 メイディアは首を横に振った。
 メイディア=エマリィ=シャトー様は、そんじょそこいらの娘とは違うのだ。
 キャー!と叫んでただ震えているだけの女ではない。
 戦う令嬢だ。
 いや、今は令嬢ではなく、戦う平民娘だ。
メイディア「来るなら、来なさい……! やっつけてやるんだからっ!」
 授業で使用していた杖を右手ににぎりしめ、メイディアは2階への階段をゆっくりと登り始めた。
 息を潜めて、一歩一歩、慎重に踏みしめる。
 
メイディア『ワタクシを……誰だと思っているの? メイディア=エマリィ=シャトーよ!』
 
 いくら気配を消そうとしても古い木の階段は体重をかけるたびに悲鳴を上げてしまう。
 こうなれば仕方がない。
 脅しもかけて一気に駆け上がることにした。
 
メイディア「動くな!」
 
 叫んで2階の廊下に飛び出した。
 しかし、人影はない。
 
メイディア「……な、なぁんだ。よかった。やっぱり家鳴りだったの……」
 
 ぎし……
 小さな音が鳴った。
 
メイディア「……ね」
 
 安堵の笑みがたちまち消え失せる。
 眼球を右に左に動かしてみる。

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