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レイディ・メイディ 61-21
2008.08.27 |Category …レイメイ 61話
沈んだ表情を見せたリクらアンが気がついてしまった。
アン『……んー……先生がもう少しリク君に優しくて、それでもって私たちの邪魔しないくらいだったらいいんだけど……』
しかしあの先生にそこまで望めるものだろうか。
何せ、転んだ女の子を救うのにつっかえ棒という手段に出る信じられない男だ。
どうも鎮的には、助けに走った一瞬の間に女の子の身体に触れてもいいものかどうかぐるぐる悩んだ挙句があの手段だったようだが、もちろんそんなことは誰にも伝わっていない。
そもそも最終着地点がどうしてつっかえ棒となるのか。
そこからして普通ではない。
そんな思考回路の彼に頼みごとをしようものなら、結果は火を見るより明らか。
けれど、アンはアンで考えが浅はかである。
深く吟味することを得意としないこの性格。
アン『やっぱり一言、釘を刺すべきかしら……?』
▽つづきはこちら
余計なことを思い始めていた。
全ては愛するカレのために。
……と、いうワケで別の日。
リクに内緒でヒサメ先生に会うことにした。
授業終了後に追いかけて学舎を出たところで捕まえた。
アン「先生! もっとリク君に優しくしてあげて下さい」
突然の物言いに双子の兄弟が同時に振り返る。
左右で同じ仕草をしながら。
アン『コワ……! 双子、コワ!』
鎮「藪から棒に一体何事でござる?」
アン「あっ、あのっ……リク君は……リク君は先生がすっ……好きなのに、先生が近頃はお兄さんばっかりだから……寂しく思ってるんじゃないかって……だっ、だからあの……」
鎮「ハァ?」
アン「もっと……優しくしてくれたら……リク君喜ぶんじゃないかって……」
鎮「………………」
偲「………………」
二人、黙って顔を見合わせる。
鎮「………………承知した」
アン『……ほっ』
鎮「だがな、アン」
アン「な、何ですか?」
鎮「もし拙者なら、ソレ、巨大なお世話だし、恥ずかしいでござるぞ?」
アン「……エ……」
鎮「リクは知らぬが大概の男子なら、それこそ面目丸つぶれだわなぁ」
アン「…………どうして……?」
鎮「自分が知らぬうちに女子が裏で自分のことをどうぞよろしゅうなどと目上の者に頼んでいるとな。……母親でもあるまいに」
アン「………………」
鎮「優しくはお前様の役目でござろ。……拙者がしてどうする。きっと嬉しくもなんともなかろうよ」
アン「嬉しいに決まってます! だってリク君は先生大好きだもん!」
鎮「……どうかな……」
「まぁよい。わかった。もっと優しゅう……でござるな」
アン「う、うん♪」
鎮「任せるでござる。拙者、そんなの朝飯前っ☆」
アン「じゃあヨロシクね!」
リクのために何かしてあげられた。笑顔に戻って、アンは走り去った。
偲「………………」
人形「りくは先生大好きっ☆」
兄が人形をしゃべらせて冷やかす。
鎮「……カンチガイでござるよ」
アンは……。
やっぱり選択を謝った。
わかりきっていたのに。
あの生き物の思考回路の着地点がいつだって正しくないことに。
翌日、リクと廊下で会った鎮は、彼に「優しさ」を示した。
リク「こ……これは……?」
鎮「じゃあーんっ♪ 肩たたき券、10回分でござる」←声がちょっと優しげ。
リク「どうしてこれを俺に?」
渡された手作り肩たたき券を目の前にかざす。
鎮「ふっ。まぁ、何も言わず受取るがよい」
リク「…………………あ………………………ありがとぅ………?」
鎮「感謝などいらぬ!! ……フフフフフフフフ。ハハハハハハハハ。ハーッハッハッハッハ!」
優しくしたつもりになって高笑い。
リク『どうしよう…………どう返していいのか、意味がわからな………………』
汗、ダラダラ。
リク『でもとりあえず、ヤッタネって言っておくか! ☆つけて!!』
「やっ……やっ……ヤッタネ☆ う、うわぁい、コレ欲しかったんだぁ……」
鎮「そ、そうか? そうであろ? うん、当然でござる!」
そわそわそわそわして嬉しそうなのは、リクよりも渡した本人。
見かねた兄がリクの肩にポンと手を置く。
偲「…………ウチの弟が申し訳ない……なんか……合わせてもらっちゃって……」
リク『あっ、しゃべった!』
「い……いえ……慣れてますから(扱いに)。先生が喜んでくれて俺も嬉しいですよ。ははっ……」
リクを喜ばせているつもりが、思いっきり気を使わせている。
けれど、まったくの見当外れでもない……かもしれない。
一応、なにやら嬉しい様子だから。
リク『なんだか俺しかもらってないみたいだし、と、特別? どうしよう、これは大事に保管して、もしものために使うことにしよう!』
リクも何だか微妙におかしい。
もしもっていつ?
肩たたき券のもしもって何?
アンの努力、空回り。
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