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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 50-4

シラー『こんなドレス着られるなんて…! 夢みたい!』

 

 シラーの頬が紅潮した。

 借り物とはいえ、夢がかなったのだ。

 

シラー「………って、えっ、えっ、ちょっと! 苦しいわよ!?」

メイド「コルセットはキツく絞めませんと」

シラー「出、出る…っ! 内蔵的なモノが出ちゃうぅっ!!」

メイド「くびれをきちんとつくるためにはこのくらい我慢なさって」

シラー「くびれなら十分にあるわよ」

メイド「こういうものなのです」

 

 ぎゅううっ。

 紐を引く。

 ……どうやら、華やかなだけではなかったらしい。

 おそるべし、殺人服。

 コルセットだけでなく、メイディア用にしつらえたドレスは胸の大きいシラーにはちょっと苦しい。

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レイディ・メイディ 50-3

 うっとりと自分に見入っていると、背後にもう一つの顔が映ってはっとなる。

 メイディアだ。

 

シラー「ごっ、ごめんなさい、私ったら。勝手に……私が触れたモノなんてしたくないですよね。洗ってきます」

 

 いそいそとドアに向かう。

 

メイディア「………………」

メイド「まぁ、シラー様。そんな……」

メイディア「そんなに自分を卑下して楽しいかしら、シラーブーケ?」

メイド「お、お嬢様……」

 

 また激しいイジメが始まるかと思い、使用人たちが身を固くした。

 妾の娘。

 それをこの気性の激しいお嬢様が許すはずがない。

 若いメイドはシラーに手伝わせたことを後悔した。

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レイディ・メイディ 50-2

シラー『ってことは、メイディアが外へ嫁に行って、私がこの伯爵家を継げるってことじゃないの? まぁ、なんてラッキーなの! こんなに上手く、しかも簡単にいくなんて! 無理やりにメイディを失脚させようなんてしなくても良かったんだ。あははっ♪』

 

 結局、メイディアは使用人たちに押さえ付けられて、自室に監禁されてしまった。

 

夫人「はぁ。……ごめんなさいね、シラー。こんな醜い争いなんて見せてしまって」

シラー「いいえ、奥様。お気持ち、お察し致しますわ」

夫人「ありがとう。……驚いたでしょう? あの子ったら、お嫁に行くのを嫌がって養成所に逃げ込んだの。私も気持ちはわからなくはないのだけど……でも公爵様をこれ以上お待たせするわけには……」

シラー「こっ……公爵様!?」

 

 すっとんきょうな声を上げる。

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レイディ・メイディ 第50話

第5話:メイディア=エマリィ=シャトー

 初雪のちらつく頃。

 母、危篤。

 その情報が伝えられて、顔を青くしたのはメイディアとシラーブーケ、両名だった。

 帰郷を許されない薔薇の騎士団養成所でも、親の生き死に関わる際だけは特別に許可が下りる。

 シャトー伯爵家から遣わされた馬車に乗り込み、友人たちに見送られて二人は養成所を出立した。

 

メイディア「お母様…! お母様…!」

 

 道中、メイディアは女神ローゼリッタに一心に祈りを捧げ続けた。

 愛する母を連れて行きませんようにと。

 もう一人、シラーブーケの気持ちも穏やかではいられない。

 

シラー『冗談じゃない! あの母親に死なれてごらんよ。今までの私の苦労が水の泡! 何としてでも持ちこたえてもらわなくちゃ』

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レイディ・メイディ 49-5

メイディア「ワタクシがお嫌いですか!?」

氷鎖女「じゃあ逆に質問するけど、ワタクシがお好きですか?」

 

 布団からチョイと出した手で自分を指さす。

 

メイディア「……う。それは……その……まぁ……嫌いではありませんけど。背が低くてちょっと……顔分からないし……うーんうーん」

 

 失礼にも悩み始める。

 氷鎖女から言わせれば、「まぁ、こんなもんだろう」。

 とにかくこのダーリン事件については本当に恋などしてはいないのだから。

 それは唐突に始まるのである。悪い病気として。

 

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レイディ・メイディ 49-4

メイディア「ヒサメ先生っ!」

 

 ゆっさゆっさ。容赦なく揺さぶる。

 

氷鎖女「はい」

メイディア「今すぐ、ワタクシをさらってローゼリッタからお逃げ下さい!」

氷鎖女「……は……エ…?」

 

 適当にはいと答えかけて、はたと止まる。

 

メイディア「遠い東海の果ての異国へ連れて行って!」

 

 唐突に何を言い出すかと思えば。

 寝ぼけているのと違うだろうか。

 

氷鎖女「…………………頭の病なら、ミハイル殿に診ていただけ」

 

 たぶん診る前からサジを投げられると思うけれど。

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レイディ・メイディ 49-3

アン『またレイ様はメイディばっかし……』

 

 この騒ぎでまだ挨拶ももらえていないとすねたアンは、自分の実家からの贈り物を開いている。

 

アン『あーあ。またお母さんの古着を送ってきて……娘がこんなに頑張っているんだから、新しくてお洒落な……都会でも通用する服の一着でも送ってくれたらいいのに』

 

 いつまで自分は可哀想なシンデレラでいなくてはならないのだろうとため息がこぼれた。

 アンが嘆いている間に、この変態がダンラック公爵とは知らない平民レンジャー・レイオットは恐れ多いことに額から絵を取り出して、破ってしまっていた。

 

レイオット「成敗! これで大丈夫よ、メイディ」 にこっ。

クロエ「私も踏ん付けてあげたわ、メイディ」 にこっ。

レイオット「私だって踏ん付けるわ」

クロエ「私なんかもっと踏ん付けるわ」

レイオット「私だって」

クロエ「私なんかこうやってこう……」

レイオット「負けるものですか、このっ、このっ」

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