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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 51-3

 担当の教官に納得いかなかった箇所を質問しに行っていたリクがすっかり遅くなってしまったと窓の外を覗いていた。

 

リク「日が落ちるの早いなぁ。もう真っ暗だ」

 

 独り言をこぼした彼の背後に気配があった。

 ゆっくりと振り向くとその鼻先に、擦り切れて薄汚れたウサギのぬいぐるみが突き付けられる。

 

リク「……おっと」

 

 ウサギは左右に体を揺すってこう言った。

 

ウサギ「やいコラ。こんなところで何をしている? いつまでも校舎に残っていないで、早く宿舎に帰りなさい」

リク「ははっ。スミマセンでした、ウサギ教官。ただ今、戻ります」

 

 調子を合わせて頭を下げるとウサギは「よろしい」と偉そうにふんぞり返ってみせた。

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レイディ・メイディ 51-2

 心は鬱々と。

 けれどあれほど渇望した母の愛を確認でき、シラーという義妹もできた。

 シラーと結び付いたことにより、彼女をやっかむ連中が再びしっぽを振り始める。

 複雑ではあるが、メイディアのヒビ入れた心は修復に向かっていた。

 魔法もスランプなどなかったかのように絶好調。

 かつての地位を取り戻したのである。

 

レヴィアス「よくやったじゃないか、メイディア君。魔力喪失から立ち直った生徒は君が初めてだ。一度は指導した私としても鼻が高い」

 

 2番目の担任だったレヴィアスがそう声をかけてくれ、メイディアは丁寧にお辞儀で返した。

 

メイディア「ありがとうございます、レヴィアス先生。先生が陰ながらワタクシを応援して下さったので勇気づけられました」

レヴィアス「い、いや……まぁ……」

メイディア「これ、お返しします。お守りになりましたわ」

 

 試験で預かっていた指輪を差し出す。

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レイディ・メイディ 第51話

第51話:別れの儀式

 養成所に帰った二人の前にはいつもとなんら変わらない毎日が待っていた。

 シャトーでの事件など、関係なくここでの生活は続くのである。

 戻った彼女らを見て、友人たちがまず気が付いた変化。

 シラーがメイディアを愛称で呼び、しかもお互いの距離が縮まっていること。

 これにはシラーの取り巻きたちが一番驚いたに違いない。

 特別親しげにしているわけではないが、ほんの10日ほど前を思えば何事かという大事件である。

 

レイオット「川原で決闘してきたに違いないわ!」

 

 レイオットが握り拳を作り、食堂で吠えた。

 

フェイト「また始まったよ、脳みそ筋肉女……」

 

 小さくつぶやいたつもりが、しっかりと聞こえていたらしく、フェイトはスープの中に顔をつっこまされてしまった。

 

レク「また余計なことを言うから~。でも本当に良かったよ、何があったか知らないけど、二人が仲良くなって」

 

 そんなやりとりにレクが苦笑い。

 

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レイディ・メイディ 50-8

 残ったのは哀れな老婆ともらわれてきた娘、そして伯爵夫人だけだ。

 

老婆「お嬢様、申し訳ございません、お嬢様ァ。あんなに嫌がっておいでのご結婚を承諾されて……こんな老いぼれのために……」

メイディア「良いのです。貴女はお母様を悲しませたくなかっただけですもの。何も悪くない。貴女は何も悪くないの。……心配しないで」

 

 年老いていくぶん小さくなった育ての母をもう一度抱いて、メイディアは目を閉じた。

 もういいのだ。

 なにもかも。

 この老婆が咎められなければ、それでいい。

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レイディ・メイディ 50-7

伯爵「詳しく話なさい」

 

 伯爵に促されて、観念した老婆が語り出した。

 老婆が乳飲み子だったメイディアの世話をしようとベッドを覗き込むとぐったりとして動かない。

 吐き戻してしまっていたミルクでベッドの布団が濡れて、うつぶせになった赤子が窒息してしまったのである。

 乳飲み子の死因としては珍しくない事件だった。

 必死で蘇生を試みるも時すでに遅く、“メイディア”は息を引き取った。

 産み落とす際の酷い苦しみで伯爵夫人がもう二度とは子供が産めないだろうと医者から宣告を受けていたことを知っていた老婆は、たった一つ種の娘を失えばどれだけ嘆くだろうと思い悩んだ。

 あげく、よく似た赤ん坊を譲り受けてメイディアとしてそのベッドに寝かせたのである。

 

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レイディ・メイディ 50-6

メイディア「変わっておりません。だいたい、部屋の中身も全部言えますし、これまでの思い出だって……きっとお父様がお忘れになっているでしょう思い出だって……全部……」

 

 強気を保っていたが、やがて声は涙に濡れてか細くなっていった。

 帰ってくるなり、この仕打ちは何なのだろう。

 全く身に覚えがない。

 メイディアであることは間違いないから、誤解はすぐに解けるであろう。

 それよりも父に疑われた事実が悲しかった。

 父はどうしてこのようなことを言い出したのだろう、突然。

その真意がわからない。

 

メイディア「いくら何でもあんまりですわ。声をお聞きになればすぐにわかりましょうに。顔かたちが似ても声まで同じ人間なんてそうはいません」

伯爵「…………」

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レイディ・メイディ 50-5

夫人「いいから、メイディ……ほら」

 

 後を引き取って、母親が卓上に用意された紙とインクを指し示す。

 

メイディア「んもぅ。手が汚れます」

 

 仕方なく、それに従って手をつく。

 

メイディア「これでいかが?」

 

 失礼、と言って、年老いた神父が手形を見比べる。

 当の本人が手を洗うために部屋を出て行ったあとで、神父は伯爵に告げた。

 

神父「あのお方はメイディア嬢ではありません」

 

 部屋の空気が凍りついた。

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