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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 41-4

 クレスの足にじゃれつくチェリーを抱き上げて、

 

氷鎖女「この猫殿も黒猫のサクラでござるな?」

クレス「え? 違うよ、そいつは……」

氷鎖女「チェリーでござろ?」

チェリー「にゃあ」

氷鎖女「チェリーは拙者の国言葉では桜と呼ぶのでござる。その、黒猫のサクラとやらのサクラが同じ花を意味する言葉かは知らぬが」

 

 猫をなでてから、降ろす。

 

クレス「不吉なこと言うなよな! サクラは子猫と一緒に捨てられる運命なんだから。……チェリーと一緒にすんなよ」

氷鎖女「子猫と、ね。……どこも似たような童歌があるものよ」

 

 籠女、籠女。

 籠の中の鳥は、いつ出やる?

 夜明けの晩に鶴と亀が滑った。

 

 子猫と一緒に井戸の中……

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レイディ・メイディ 41-3

氷鎖女「気分を害したのなら、申し訳ござらぬ。ただ、すこぅし疑問に思っただけでございますれば、ご容赦を」

 

 はじかれた鼻をさすりつつ、氷鎖女は素直に詫びると今度こそ職員室を出て行った。

 

ナーダ「…ふぅ」

ヴァルト「大人気なかったな。相手は小人族だぞ」

 

 レヴィアスに挨拶をして、ナーダとヴァルトも宿舎に戻るため、廊下に出た。

 

ナーダ「アンタも言いたい放題ね」

ヴァルト「俺はミジンコの言いたいことはわからなくもないが」

ナーダ「……私だって、わかっているわよ……」

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レイディ・メイディ 41-2

 魔物が起こす事件がここ近年、急速に増えている。

 それは平和な時代にあって「お飾り」と陰口を叩かれることもあった薔薇の騎士団の出兵が多くなったことでよくわかる。

 特殊で厳しい訓練に耐え抜いた、数少ないエリート中のエリートが養成所から輩出され、その者たちが魔法を操り、竜を駆るのだ。

 彼らは現在もなお、国内最強を誇り、また向かうところ敵なしと誰もが信じて疑ってはいない。

 けれど、ローゼリッタ最強の軍隊と誉れ高かったのは、もはや過去の栄光ではないか。

 本当に今も最強なのか。

 実際に戦ったら、常に賊や魔物、諸外国の脅威にさらされ続けている辺境の地を護る軍隊とどちらが強いだろうか。

 持てる力は強大であろうとも、お行儀の良い騎士団と。

 個々の能力は劣ったとしても、数々の戦闘をくぐり抜けてきた戦士たちと。

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レイディ・メイディ 第41話

第41話:動き出した影

 ローゼリッタのある大陸から遥か遠く、東の海にぽっかりと浮かぶ島国・ヤマト。
 その小さな島国の中に、さらに小さな小さな里があった。

      氷鎖女村。

 

 山間にひっそりと、世間から隠れるようにして存在する村に、今日も飽くことなく雪が吹雪いている。

 木造の家屋に村長(むらおさ)、長老を始め、有力者たちが座している。

 水を張った桶の中を占いに使用した半紙が浮かぶ。

 墨で描かれた八角形の図案が水に滲みてその形を崩してゆく。

 囲炉裏を囲み、沈黙を守っていた村長が重い口を億劫そうに開いた。

 

村長「それは確かか、おばば」

 

 八卦見の老婆がうなずくと、村の有力者たちが不吉の予感にざわめいた。

 

おばば「あの者は未だ生きておる」

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レイディ・メイディ 40-6

メイディア「クロエ」

フェイト「……………………」

メイディア「貴女、白薔薇ですのに、どうなさったの?」

クロエ「うん、私、元々武家の出でしょ? 白薔薇授業ばっかりだと体なまっちゃって」

 

 起床して窓の外を見ていたら自分も体を動かしたくなったと彼女は笑った。

 クロエの部屋は黒薔薇でヒサメクラスが半数。

赤薔薇1名、白薔薇2名の6名で構成されている。

 ギリギリまで寝ていられるのは、白薔薇2人のクロエとモーリーだけなのだ。

ヒサメクラスでさえなければあと3人も寝ていたハズなのだが。

 厳密に言えば、ヒサメクラスの朝の訓練は義務化されていないのだが、だからといって、皆が参加しているのに自分だけ寝ていては置いていかれる。

 誰もがそんな危機感を抱いていた。

 当初は無意味だと思われていた早朝マラソンも、魔力戦での持久力をつけるために役立っていたことが証明されたからだ。

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レイディ・メイディ 40-5

 フェイトが外壁の門を曲がったとき、目の前を女子の塊が速度落として走っているのを邪魔だと感じて眉をひそめた。

 

フェイト『おしゃべりしながら走るくらいなら、出てくるなよな』

 

 仕方なく道の外側を大回りして追い越そうとする。

 

女子「裏切り者がイヤよね。何で一緒に走ってるの?」

  「クラス変わったじゃない。アンタはもう走らなくてもいいのよ、お嬢様?」

メイディア「あら、自主訓練なのですから、文句を言われる筋合いはございませんわ」

 

 周りを囲まれてしまって姿は見えないが、あのトラブルメーカーだということは声としゃべり方ですぐにわかった。

この薔薇の騎士を育てる場所にあって、あのようにいかにも貴族の姫君という話し方の人間は他にいるはずもない。

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レイディ・メイディ 40-4

 場面は訓練所のナーダとヴァルトに戻る。

 

ナーダ「何だってあのアホを本気で推薦しちゃうのよ。アンタも相当のおバカさんよね」

ヴァルト「アイツはやると言ったらやるさ。俺は……………………ああ、まぁいい」

 

 信じるよと言いかけてやめた。

どうせ笑われて気恥ずかしい思いをするだけだ。

それほどにあの教え子は周囲から信用がない。

間が抜けていると。

 

ヴァルト「それより、また魔物の群れが出現したらしいな」

 

 思い出したように話題を変える。

 

ナーダ「またぁ? 最近多いじゃない。どこよ、まだそれ聞いてなかったわ」

ヴァルト「サヴァイドルとファニースの方角だ。今はコンラッド部隊とハモンド部隊が出動している」

ナーダ「…………先月は、オリビーが戦死したばかりだっていうのに……」

 

 やや沈みがちに地面に目を向ける。

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