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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 36-5

リクと不本意ながらクレスが氷鎖女を連れ去った後、あっけにとられて見つめていたメイディアも皆が立ち直るのと同時に我に返り、いいとこなしで授業が終わってしまったことに気が付いた。

 

メイディア『ああ、結局、今日はほとんど撃てませんでしたわ……。こんなんでワタクシ…………』

 

 リクとクレスの勝つことができるのだろうか? 先を行く二人の背中を見つめる。

 

メイディア『同じことやってて追いつけるハズがない……他に何か手立ては……』

 

 焦りばかりが先行してどこからどう手をつけていいのか皆目見当もつかない。

 

メイディア『レヴィアス教官…………彼なら他のクラスが習っていない魔法も沢山教えてくれるから、先んじることができるのではないかしら?

 

 まだ怒りから覚めやらぬレヴィアス教官の後姿を見つめた。


▽つづきはこちら

メイディア『彼は養成所主席で卒業する弟子を何人も育てたと聞いたことがある。……どうだろう? 20歳そこそこのヒサメよりも、年配で経験のあるレヴィアス教官についた方が良いのではないかしら?』

 

 メイディアは昼食る時間も惜しいと資料室に足を運び、これまでの卒業生が誰に師事を仰いでいたかを片っ端から目を通す。

 

メイディア『……やっぱり……この方もこの方もレヴィアス教官に師事を受けてるのだわ。だからあのクラスはエリート気取りなのね』

 

 思い立ったが吉日。

彼女はその日の放課後に早速、レヴィアスの教官室の戸を叩くのだった。

 

 

 数日後、本人たっての希望でメイディアと、メイディアに勝ってクレスに負けたあの少年がトレードされることとなった。

 めったに行われないことであるが、本人の強い希望と教官同士の間で合意、そして所長の許可さえあれば、生徒のクラス替えは可能だ。

 これまでもレヴィアスは目をつけていた数人の学徒を引き抜きに成功してきた。

天才と名高いクレスとリクを引き抜きたいと強く思っていたために、希望して来た学徒は全く眼中に入っていなかった。

だが、冷静になってみれば確かに好成績を保つ優秀な子だ。

移動はまだ決定ではなく、とりあえずの仮期間ではあるが、喜んで受け入れることにした。

 受け入れ許可した理由は、単に優秀というだけではない。

生徒がわざわざ担任だった教官を離れて、別の教官を選ぶということは、氷鎖女よりも自分の方に価値を見いだしたということ。

このことは波紋のように他の学徒や教官たちにも広まるだろう。

若造なぞよりも、レヴィアス=ホールストにつく方が確かなのだと。

 こうなれば後の引き抜きも容易くなる。

 

氷鎖女「アレはただ今、伸び悩んでいるようで……どうぞお頼み申します」

レヴィアス「いいえ。まだ経験の浅いヒサメ殿では、伸び悩みの生徒の指導は難しいでしょう。私に任せなさい」

 

 深々頭を下げる元担任を前に、メイディアは少しだけ胸が痛んだ。

 

メイディア「先生? ワタクシは決して、決して、不満があったワケではないのですよ? 先生の実力不足とかそういうのを感じていたわけでなくて……でも……」

氷鎖女「手前が良いのならそれで構わぬでござるよ。拙者に気を使うこともない。己の行く先は己で決めなくては。手前は今までもずっとそうしてきたであろうが?」

 

 言葉なくうなづくメイディア。

 

氷鎖女「ならばよし」

メイディア「でもたまには……わからなくなったら、先生のところに聞きに来てもいい?」

氷鎖女「それはダメでござる」

メイディア「どうして? ワタクシをお見捨てになると?」

 

 首を横に振って、

 

氷鎖女「そうでなく。道がわからなくなったとしたら、レヴィアス殿に尋ねるが筋というもの。手前を導く責を負ったのだ。どのようなことも答えてくれよう」

 

 彼の言うことは正しかった。

自ら選んだ師なのだから、信じてついてゆくのが人としての筋道。

元の師へ教えを請いに行くのは大変な失礼にも当たる。

 レヴィアスは大いにうなづいて、新しい教え子の肩に痩せぎすの手を置いた。

 

レヴィアス「大丈夫。君ならばすぐにスランプなど抜け出せるとも。何でも私に相談しなさい」

メイディア「は、はい」

レヴィアス「では。確かに預かりましたよ」

氷鎖女「よろしく」

 

 再度頭を下げた氷鎖女の態度に満足して、レヴィアスはメイディアを連れて教室に入った。

 

レヴィアス『たまにはあの小僧も可愛いところがある。この間のアゴ引っつかみ事件には参りましたたが

 

 トレードされた生徒は今期初めてだったので、クラス中があらゆる意味で沸いた。

 それはメイディアの代わりに氷鎖女のクラスに行った例の少年も同じことで、しかも彼に至っては、無抵抗の女性をいためつけた男として皆の白い視線が痛い。

 交換された二人は全く質の違う授業内容に面食らったが、それでもこちらに来て良かったと互いに思っていた。

 

リク「メイディがいなくなって、急に静かになったよね、このクラス」

クレス「まぁね。お騒がせ女がいなくなってせいせいしたよ」

リク「学問の方でも会わなくなったね学問はクラス関係ないのに

クレス「……ふん。ヒサメに合わせる顔がないんだろ

 

 二人が並ぶ隣の席は今までメイディアがいた。

 現在はというと……

 

少年「リクは俺のこと、怒ってないんだな」

 

 ……あの少年がいた。

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