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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 29-15

青薔薇教官「私はここは学徒たちに任せても良いかと思うのですがね。不測の事態にどう対応するのか。彼らの真の力を見るチャンスではありませんか」

赤薔薇教官「それは面白い、やらせてみるか」

 

 いかにも武人といった強面の教官が、呵々と豪胆に笑って賛同した。

 

白教官「前回のこともある。……危険では?」

赤教官「なぁに。そのために氷鎖女殿がついておるのであろうが」

 

 それについてはいささか不安があるとレヴィアスが画面に映っている少女・ナツメを指さし示した。

 

レヴィアス「失礼ですが、氷鎖女殿は見たところ、まだほんの小娘ではありませんか。若いとは聞いていたが、あれほどとは……。あれではウチの生徒の方がいくぶん使えると思いますがね」


▽つづきはこちら

白教官「私も反対ですよ。危険なのはクロエ=グラディウスだけではないかもしれないのです! 霧を作り出したというのなら、相手は相当のマジシャンと見てまず間違いないでしょう」

赤教官「ではこうしよう。麓にヴァルト殿が用意した、小隊が待機している。それらを山に向かわせ、学徒はそのまま試験続行!」

 

 この中では上位に位置し、強引な性格の赤薔薇教官は決定を下して氷鎖女に指示を伝える。

 魔術師である二人は難色を示したが、未だ血気衰えぬ剣士指南の教官二人はこの状況を楽しんでいるようだった。

 

赤教官「多少のことでいちいち中止していたら、試験何ぞできやせん! 3年、4年になりゃこんな我々の監視もないのだからな」

 

 自分のときなんか土砂崩れまで起こったんだと自慢話に花を咲かせ初めてしまう。

 その隙に、納得のいかない白薔薇の教官とレヴィアスがくれぐれもと念を押した。

 

白教官「また何か少しでも気になることがあれば、すぐにでも知らせるように。よろしいか」

氷鎖女「承知」

レヴィアス「将来有望な彼らの命を預かっているのです。責任重大ですぞ」

氷鎖女「承知」

 

 魔力の通信を切って、氷鎖女はナツメとしてメイディアから少し開き気味になっていた距離を詰めた。

 先を行っていたリクが立ち止まって後ろを振り返る。

 

リク「メイディ、大丈夫かい?」

メイディア「ふんっ」

 

 ふて腐れた顔で、目の前に差し出された手を握る。

 

リク「よいしょっ……と」

 

 足場の悪い所に差しかかっていたので、メイディアにはキツかろうと引っ張り上げた。

 

メイディア「貴方はこんなにのんびりしていてよろしいの? 皆、先に行ってしまったわ」

リク「メイディを置いていくワケにもいかないからね」

メイディア「む。結構です。ワタクシは一人でも充分」

 

 そういうメイディアだったが、もうラストスパートに差しかかった所でまた戻っての登りだ。

 あと少しだというテンションは極限まで落っこちていた。

 精神的にも肉体的にもかなりの消耗が見て取れる。

 このままゴールまでなら体力は持つだろうが、登るとなるとまた別

リク「まぁ、そう言わず。先に着いた方が状況判断して助けが必要なら、こっちを呼ぶよ。それよりこの霧だし、またはぐれたら元も子もない」

メイディア「ワタクシが遅いせいとおっしゃりたいのね」

リク「悪い方にとるなぁ」 苦笑して頭をかく。

メイディア「あんな悲鳴……。大かた、足でも滑らせたのでしょうよ」

 

 そんなことくらいで自分の輝かしい優勝の二文字を台なしにされるなんて。メイディアはガッカリした調子でうなだれた。

 

リク「……さ、ナツメも」

 

 メイディアを引き上げたリクがもう一度手を差し伸べたが、ナツメは拒否して軽く駆け上がった。

 

リク「あらら。やっぱり俺って嫌われてるの?

 

 無視されてばかりいるような気がしてならない。

第一印象がいけなかったかな?

 

メイディア「彼女、山育ちだから平気なの。ね?」

 

 黙ってうなづくナツメ。

 

リク「ああ、そっか。どうりで」

メイディア「どうりで?」

リク「いや、身軽だと思った」

氷鎖女「…………………………」

メイディア「当然ですわ。だから、人間砲弾ができたんですもの♪ ……ねー?」

氷鎖女「………………………………………………」

   『何が“ねー?”だ。“できた”んじゃなくて、“やらされた”の間違いだろが』

 

 ナツメは恨みがましい視線でチラリと見た後、メイディアを置き去りにさっさと先へ行ってしまった。

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