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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 29-16

メイディア「あーあ、ワタクシの人生がかかっている重大な試験なのに」

 

 再び肩を落とす。

 

リク「人生? それはまた大それた試験だね」

 

 優勝などというのは成績になかったと思うけれど、まぁ、要するに1位ということだろう。

 

メイディア「ワタクシが優勝の際には、ミハイル先生と婚約できるのですけど、優勝できなかったら、そのお話しはなかったことになってしまうの」

リク「ああ、あの話か。……本気?」


▽つづきはこちら

メイディア「当然でしょ」

リク「メイディはそれでいいんだ?」

メイディア「皆、同じことを聞く。……いいわけないじゃない……。ちっともよくなんてありませんわ。少しは考えて発言することね」

 

 怒った風もなく、投げやりに言う。

 だったら…… 追求しようとするリクの言葉をメイディアが遮った。

 

メイディア「他に道なんてないの。これがせいいっぱいよ。貴方がたにはわからないでしょうけどね。貴族なんて本当はそんなに良いものなんかじゃないんだから」

リク「その割りには身分を振り回しているようだけど」

メイディア「メイディには他に振り回すものがございませんもので。ざぁんねんながら」

リク「…………………………」

メイディア「ワタクシは人ではないの。物ですわ。……ワタクシだけではない。貴族の……身分の高い娘は皆そう。中にはゆるやかなお家もあるでしょうけど。そんなお家はいつまでたっても出世は望めませんわね。娘は高価な贈り物ですの。人質と同じね。…………だとしても、」

リク「ん?」

メイディア「だとしても、1から10まで全て言いなりなんて嫌なこと! 絶対に公爵となんか結婚しないわ。見てらっしゃい。自分でお相手を見つけて、お父様たちに認めさせてみせるから」

リク「あはは。さすがはメイディだ。そうこなくっちゃ」

 

 自らを卑下するような物言いで、あんまりにもしおらしいから、心配してしまった。

 これなら大丈夫。

さすがは天下のメイディア様だ。

リクは珍しく声をあげて笑った。

 

メイディア「世の中の姫君たちも目を覚ませばよいのです」

 

 つんとあごを上げて颯爽と山道を登る。

 先頭の4人、それと追いついていたクレスの5人は、だいぶ坂を上がってきていたが、まだ悲鳴の主を見つけることができないでいた。

 けれど悲鳴は助けを呼ぶ声に変わっており、声の主が無事であることを告げていた。

 だが、彼らを囲む霧はますます濃くなってきて、すぐそこにいる仲間の姿すら怪しくなってきている。

 

氷鎖女「待って」

 

 さすがにもう止めなければと氷鎖女が呼びかけた。

 

氷鎖女「もうダメ……進んではダメ」

レク「でももう近いんだ」

フェイト「しかしナツメの言うのももっともだぞ。これだけ深い霧では俺たちの中から被害者が出る。もう少し霧が明けるまで待とう」

クロエ「だけど、声近いじゃない。呼んでみたらどうかな

 

 うなづくと、レイオットが声を張り上げた。

 

レイオット「助けに来たわよっ、どこにいるの? 落ち着いて返事をしてー!」

 

 呼びかけて、耳をすます。

 

声「……って……来て……」

クレス「聞こえた。あっちだ」

氷鎖女「ここから全員、動かないように。リクとゴール……メイディアが来たら、一緒に固まって。警戒も怠らぬよう……」

 

 別人のようにテキパキと指示を残して、一人歩きだしたナツメの襟首をひょいとフェイトがつかんだ。

 

氷鎖女「を?」

フェイト「一人で行動するな」

氷鎖女「せっ……私は……いいの」

フェイト「良くない」

氷鎖女「大丈夫」

フェイト「ダメだ」

レク「俺とフェイトが行く! 皆は待っててくれ」

 

 教官の氷鎖女は困ってしまった。

いっそ正体をバラして自分だけと思ったが、レイオットが代案としてロープをレクとフェイトに持たせて行かせることを提案してくれたので、とりあえずは従うことに。

 

フェイト「俺とフェイトって何だよ、勝手に。……まぁいいけどな」

レク「いいなら言うなよ。さ、準備OK」

 

 ブツクサ文句を言いながらもロープをつかんでフェイトとレクが探索に出る。

 声は確かに近く、呼びかければ応えてくる。

 二人は木や草の根を踏み分けて慎重に進む。

 一寸先も白い闇。

 そんな状況下で、何かが落下する気配。

 神経を研ぎ澄ませていたナツメが叫んだ。

 

氷鎖女「クロエ、危ない!」

クロエ「!?」

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