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レイディ・メイディ 29-14
2008.04.02 |Category …レイメイ 29話
ついでにクレスはここまで来たら、1位も夢じゃなかったのにと無念を吐き捨てた。
残されたメイディアは居所無さげに立ち尽くしていたが、やがてあきらめて足を踏み出した。
メイディア「行けばいいんでしょ、行けば!」
氷鎖女「行けとは言ってない……わ」
メイディア「貴女がそうでも、同じことです。これで優勝を逃してダーリンのお嫁さんになれなかったら、あの人たちのせいなんだからっ! 責任持ってもらわないと。……行きますよ、ナツメ」
氷鎖女「……はい」
小さく含み笑いをして、一番後ろから着いてゆく。
▽つづきはこちら
霧の発生があったにしてもこうも簡単にはぐれてしまい、互いに敵と思い込んで戦いを繰り広げてしまった。
ただの霧ならば、斬り結べば相手が知り合いかどうかくらいすぐにわかっていいハズだ。
これは魔法による操作だと氷鎖女は思った。
それにしてもこんな内容の試験だったかな、と首をひねる。
教官会議のときに氷鎖女はしょっちゅうぼんやりしてしまう。
クロエの妄想癖とはいわないが、子供の頃から空想が大好きな少年であったことは確かだ。
醜い容姿のせいで友達はおらず、側にいてくれたのは血を分けた兄だけ。
その兄もいないときは決まって一人で空想に浸っていた。
野原に寝転んで流れる雲をいつまでもいつまでも眺めて、飽きることはなかった。
放っておくと日がな一日、ほうけていることもあるくらいだ。
ぼんやりと雲の形を追いかけていたり、鳥や虫、草花を目に映していると描きたい絵の構想や作りたい人形のイメージが膨らんでくる。
これが彼の大好きな時間で、ちょっとでも静かな時間があるとすぐに独りの世界に転げ落ちて行ってしまう。
ああ、それが次の試験内容についての会議中であろうと静かだといけないのだ。
悪癖は大人になった今も変わることはなく、主に受け持ちの学徒を困らせていた。
氷鎖女『試験官室に連絡しようか……いや、しかし……』
これこそ試験の重要関門なら、自分が聞き逃したことになる。
氷鎖女『また怒られてしまう……あう~……』
そうでなくとも試験日を言い忘れていたり、ズレていたり、巨大なミスを過去に何度かやらかしている身だ。
今度こそ上から大目玉、間違いなし。
氷鎖女『仕方がない、あきらめるか……』
手のひらサイズの水晶球を取り出して、試験官室に念を送った。
試験官室。
赤薔薇教官「潰し合いの次は、急に戻り始めたぞ」
青薔薇教官「何をやっているんだ、この2チームは。ゴールはすぐだというのに」
頑張れば、今日の昼にはついてしまうだろうに、画面の中のGとS、2チームは何を思ったのか、一緒になって今降りてきた山道を登り始めてしまった。
レヴィアス「不測の事態が起こったのかもしれませんな」
白薔薇教官「はぐれたのを探しに行ったのではないかね。そろっていないとゴールできない仕組みだ」
レヴィアス「他の班もどこもはぐれてしまっていますね。霧の時は動いてはいけないとあれほど言っておいたのに……………………ん?」
連絡用の水晶が輝いたのに気が付き、魔力の波長を合わせた。
レヴィアス「氷鎖女殿」
氷鎖女「申し訳ござらん、今回の試験のことだが……」
レヴィアス「……何ですって?」
事情を聴きながら、人と比べてやや尖って長いアゴに手を当てる。
レヴィアス「……………………はて」
「どういたしますかな?」
報告を受けたレヴィアスは他の教官たちの判断を求める。