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レイディ・メイディ 28-8
2008.03.16 |Category …レイメイ 28話
レイオット「猫みたいな子ね」
リク「ああ、レイオットもそう思った? 目もね、金色してたよ。珍しい」
紅の瞳をした彼が珍しいと言うのも妙な話だが、確かに金色は今までに出会ったことのない色だった。
レイオット「でもね、あんまり感心しないわよ、リク」
リク「何が?」
レイオット「急に触るなんて、女の子に対して不躾じゃない」
リク「ああ、そっか。気にしてなかった。でも、本当に知ってる子かと思ったんだよ。見覚えあるような気がしてしょうがないんだ」
▽つづきはこちら
二人が会話を始めてしまい、アンは間に割り込む勇気もなく、あきらめて肩を落とした。
自分の班に戻ろうとすれば、同じくリクを追っていた少女たちがおもしろくなさそうにして見ている。
でしゃばり過ぎたとすぐに気が付いて、アンは足早に離れて行った。
リクから離れてほっと胸をなでおろす……氷鎖女なナツメ。
クレス「あ……えと……もう大丈夫だから」
クレスからも逃げるように離れると、少女はその言葉にただうなづく。
クレス「……しゃべれないの?」
氷鎖女「……………………」 首を横に振る。
クレス「僕はクレス。君は?」
クロエ「ナツメさんだって。私は呼び捨てでいいからね。ナツメさんも呼び捨てでいいかな? いいよね?」
代わって答えたクロエは新しくできた友達に同意を求める。
ナツメと呼ばれた少女はまた黙ってうなずいた。
クレス「ナツメ……ね」
リクからかばいだてしてやったはいいが、実ところ、クレスもどこかで見たような気がして考え込んでいた。
それもそのハズ。
毎日毎日。
それこそ365日、顔を突き合わせている担任の教官なのだから。
氷鎖女『もー、嫌だ。もー、ダメだ。胃がキリキリしてきたっ。戻って布団に丸まりたい』
正体は、一人、早朝から青くなったり大変な氷鎖女先生だ。
氷鎖女『クレス、手前、いい奴だ』
無言でクレスに感謝を送る。
近くにいたのはクロエも一緒だったが、クロエを選ばなくて良かったと心底思う。
あの天然万年お花畑な脳みその持ち主に助けを求めては、例のはちきれんばかりの笑顔でリクの味方をしかねない。
リクは怖くないよ、仲良くしてあげてね!……などといったように。
けれどこのハプニングはまだ序章。
これから数日間は朝から晩まで自分の教え子やらと一緒なのである。
それを思うと目の前が真っ暗になった気がして、本日何度目かのため息を吐く。
前途多難だ。
ほどなくして、スタートの合図が下され、学徒の班は一斉に飛び出した。
一度リクが教官たちが立っているところを振り返る。
そういえば、氷鎖女先生がいないな、などと思いながら。
ニケ「あんなんで平気かなぁ。早速、挙動不審なんだけど」
ナーダ「不自然でもちょっとやそっとではバレないわよ。まさかあの黒い生き物の中身がアレだとは誰も思わないもの」
ヴァルト「それはそうだ。未だに信じられん」
黒薔薇教官・レヴィアス「そういえば、氷鎖女殿は人形師ではありませんでしたか? 以前から思っていたのですが、それがどうして……」
何を隠そう、去年の白薔薇試験で導入された、ハゲの人工呼吸訓練用人形は氷鎖女作である。
クロエが気味悪がって、人工呼吸の実技試験で妄想にひた走るきっかけとなった無駄にリアルなドール。
白薔薇教官「画家ではありませんでしたか?」
一人が訂正すると、
赤薔薇教官「いや、建築家ではなかったか?」
もう一人がまた訂正し直す。
ニケ「全部だよ。どれもデザインするということで共通してるからね、優れた芸術家にはよくあるんだ。だからこのローゼリッタにも呼ばれたんだろうね」
人形師はともかく、画家が建築や家具、食器、宝石などのデザインを同時に手掛けているのはよく聞く話だ。