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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 28-10

 

 陰気な人形オタクの成人男性な氷鎖女は、クロエに早速捕まってニンジャな氷鎖女先生についての講義を受けていた。

 

クロエ「あのね、ニンジャはアメーバなのよ。ブンシンノジュツとかいって、細胞分裂して増えるワケ」

氷鎖女「………………」

クロエ「だから、実は氷鎖女先生も各地に広がっててひょっとしたら、まだこの近くにも生息してるかもしれないのよ」

氷鎖女「……………………」

クロエ「え? 良く知ってるって?」

 

 そんなことは誰も言ってない。ナツメ(氷鎖女)は黙ったままだ。


▽つづきはこちら

クロエ「えっへへ♪ 実はこれは、リクの受け売りなんだけどっ」

氷鎖女『またしてもあのバカか……妙な噂を流すのは』

 

 帰ったら、さっきの分も合わせてどうにしてやろう。

まずは説教という名の話し合いが必要だな、と復讐の炎をたぎらせる。

 リク本人至って真面目なのだが。

 

クロエ「でもいいよね。その中から一人くらいもらえないかなぁ」

氷鎖女『もらってどうするつもりだ!?』 ガーンッ!?

 

 身の危険を感じて顔を引きつらせる。

 そういえば数日前もリクの奴がいきなりやってきて、「一人くらいもらってもいいよね?」などと唐突に脈絡もないことを言ってきたが、要するにそういうことだったのだ。

 クロエは話に聞く東国の“ニンジャ”とやらに興味津々で、想像力に翼を与えて勝手なドリームに浸る悪いクセがあった。

 “ニンジャ”とは、足音を立てずに暗闇の中を転ぶことなく障害物にもぶつからずに駆け抜けることができたといい、布一枚を広げてモモンガのように空を飛んだり、壁にへばり付いてカメレオンのように姿をくらましたり、アメンボのように水の上を渡り、土や水に沈められても生きていて、巨大なガマガエルに乗って煙と共に現れたり消えたりすることができたという伝説の究極生物なのだ。

 …………図書館にあった本によると。

 「伝説の究極生物・ニンジャ」に違いないと目星をつけている氷鎖女先生にクロエはご執心であ

 もちろん、まるっきりの珍獣扱いで。

 西大陸にあっては、まだほんの一部でしか知られていない東国…………倭国と呼ばれる島国は神秘の宝庫だった。

 屋根が全て黄金で作られているという噂もあり、金山がそこかしこにあるという夢の島。

 その噂の東国から来た氷鎖女には空いた口が塞がらなくなるようなデタラメな知識ばかりだが、彼の故郷だって他人の国のことは言えない。

 海の向こうの大陸には、六尺以上もゆうにある鬼が住む恐ろしい国があるということだ。

それらは金や銀、燃えるような赤い髪、そして青い目を持っていたと言われ、恐れられていた。

 ちなみに六尺というのは181.82cm……要するに、180cm以上の大柄な人間ということなのだが。

 氷鎖女もとい、鎮が10歳で村を出て間違えて乗り込んでしまったのが、この西の大陸に向かう船。

 その乗組員たちも十分、鬼の形相をしていたことになる。

 倭国でも中央の文化人たちには西の大陸のことはもっと正確に知られていて、一部で貿易も行われていたのだが、田舎者の鎮は全く知らなかったのだ

 ここローゼリッタでも逆の現象が起こっていても不思議ではない。

 大きな西の大陸を倭国からは知っていても、海のどこに浮かんでいるかもわからないちっぽけな島国を西の大陸にある国々は知らないことが多い。

 又聞きの又聞きで、さらに想像を膨らませたものを文字にしたためたのが図書室にある「ニンジャの全て」というカンチガイの産物だった。

 

クロエ「ねぇ、ナツメは氷鎖女先生1人もらえたらどうする? ねぇ、どうするっ!? わくわく。

氷鎖女「……い……や? ……どうって言われても……」

 

 氷鎖女先生1人もらえたらだなんて、本人に問われても困る。

仮に分裂できたとしても、ハッキリ言っていらないぞ、こんな者は。

 

クロエ「私、そこからまた増殖させるわ!」

氷鎖女「……や、増えない…………から……」

クロエ「大丈夫、アメーバなんだから増えるよ! あきらめないでっ!」

 

 握りこぶしを作って熱く語るクロエ=ラディウス、16歳。

 

氷鎖女「無理」

クロエ「……あ。もしかして、分裂し過ぎてあんなに小さくなっちゃったから、もう無理ってこと!? えー、やだー、そしたらどうしよう!?

氷鎖女「……………………」

 

 そんなワケあるか、初めからだと激しく抗議したいのをぐっとこらえて、クロエのチンプンカンプンなニンジャ説の聞き役に徹する氷鎖女

 ……もう、何でもいいや。

 忍は確かに足音を立てずに暗闇の中を転ぶことなく障害物にもぶつからずに駆け抜けることができなければ勤まらないが、布一枚を広げてモモンガのように空を飛んだり、壁にへばり付いてカメレオンのように姿をくらましたり、アメンボのように水の上を渡り、土や水に沈められても生きていて、巨大なガマガエルに乗って煙と共に現れたり消えたりする伝説の究極生物などではない。

 その並み外れた魔性といえる能力にて、魔物と例えられることはあっても、細胞分裂で増えたりは決してしない。

……ただの人間なのだから。

 忍者とは、情報屋であり、暗殺集団だ。

クロエやリクの夢描いているようなステキ生物ではなかった。

ここで本物の忍者がいかなるものかと説明して、ガッカリして興味を失ってくれればいいが、相手はクロエだ。

通じるかどうかまったくもって怪しい限り。

下手に刺激して好奇心の赴くままに詰め寄られても面倒臭い。“ナツメ”の正体を知られても困る。

 放っておくことにしよう。

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