HOME ≫ Entry no.326 「レイディ・メイディ 28-11」 ≫ [331] [330] [329] [328] [327] [326] [325] [324] [323] [322] [321]
レイディ・メイディ 28-11
2008.03.17 |Category …レイメイ 28話
クロエに捕まった氷鎖女は延々と講義を聞かされているよそで、クレスはメイディアと話をしながら山道を登っている。
クレス「ところで何でミハイルなワケ? こないだはヴァルト教官で。基準がわかんないよ、基準が」
メイディア「地位のある方だからですわ」
クレス「ハァ? そんな理由~? 地位目当てかよ」
あきれて肩をすくめる。
メイディア「んまっ! 失礼な」
クレス「どこがだよ。まんまじゃん」
先頭を行くフェイトとしんがりを務めるダレスの剣士二人が警戒しながら進んでいるというのに、魔法使いたちはまだ遠足気分だった。
▽つづきはこちら
私語厳禁という訳ではなかったが、これは模擬試験だ。
敵がいることを想定しているのだから、注意力も重要ポイント。
教官たちにチェックされていることを受験者たちには知らされていない。
メイディア「地位が目当てなどではございません! ある程度の地位がないと許されないから、どうしてもその中から選ぶしかないのですわ」
クレス「なんでさ?」
メイディア「貧乏平民な貴方にはわからないでしょうけど、貴族社会は身分に厳しいところです。身分に見合った者とでないと婚約は許されませんの」
貧乏平民というところで少し引っ掛かったが、相手はメイディアだ。
入学当初からこうなのだからいい加減に慣れた。
クレス「っていうかさ、それって好きなのと違うじゃん。……それでいいワケ?」
シラケた顔で頭の後ろに腕を組む。
メイディア「良いのです。だって仕方ないでしょ。結婚したらきっと好きになるわ」
クレス「そうかなぁ?」
メイディア「そうよ。中でもちゃーんと好きになれそうな殿方を選んでいるのですもの。ミハイル先生ステキでしょっ♪」
クレス「どーだか」
それまで黙って黙々と先を急いでいたフェイトが珍しく口を挟んだ。
フェイト「まだそんなことやってたんだな。いい加減にしたらどうだ、……見苦しい」
メイディア「……!」
見苦しい。
その一言で見る間にメイディアの顔色が変わり、クレスも驚いて目をしばたかせていた。
振り向かないフェイトは続ける。
フェイト「貴婦人だと自負するなら、売女みたいなマネはよせば? 品格を疑われる」
メイディア「売女!?」
クレス「………………」
フェイト「さ。もうおしゃべりはしまいだ。クレスもクロエも……あ~、ナツメも。これは実戦だと思って取り組めよ。俺たちはピクニックに来てるワケじゃな……」
言い終わる前に、速足で追いついて来たメイディアが、1年振りの平手を食らわせた。
何事かと全員が足を止めて目を丸める。
フェイト「……て」
メイディア「貴方、1度ならづ2度までもっ! ワタクシを愚弄するのは許さないと言ったハズ!」
フェイト「…………………ふぅ」
盛大に息をつくフェイト。
本当にもう、この娘は。
自分も放っておけば良かったのに、どうして口出ししてしまったんだか。
十数秒前の行動を後悔する。
あまりに突飛で破天荒な彼女の行動は次が読めなくて、ついてくる結果は常に常識外。
気にしないつもりでも嫌でもつい目に付くのがメイディア=エマリィ=シャトー。
これでは有名にもなるハズだ。
お人よしのレクやレイオットがお節介してしまうのもわからないではない。
放っておけばすぐ道から外れるやっかいな性質の持ち主だ。
もっとも、自分は面倒なんて御免こうむる……が、ついでだからもう一言付け加えてやろう。
フェイト「好きでもない男のところをあっちこち乗り換えてたら、誰も本気にしないぞ」
もう一度飛んだ平手を今度はかるくかわしてその手首を逆につかむ。
メイディア「撤回して……! ……しなさいっ!」
怒りに燃えた瞳を向けて噛みつかんばかりに顔を寄せる。