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レイディ・メイディ 28-4
2008.03.13 |Category …レイメイ 28話
ミハイル「ここは避難場所じゃないんだ、とっとと出てけ!」
ナーダ「氷鎖女のせいで怒られたじゃないよ」 ぶぅ。
ヴァルト「邪魔しましたな」
氷鎖女「……そもそもそちらがこのようなことを思いつかなければ……」
うなだれて同僚二人に連れられていく。
教官たちを追い出して、クシャグシャになったベッドの上をきっちりと直すミハイル。
ミハイル「………………ったく……」
それにしてもあまりに想像と違う姿で驚いてしまった。
▽つづきはこちら
頭のてっぺんからつま先まで真っ黒な異国の衣装で固めており、手さえも黒い革の手袋で指先しか出ていない。
露出しているのはわずか顔下半分と指先だけ。
例え中身が入れ替わっていても、誰もわかりはしない。
そこにいながら実在しない、がらんどうのゴーレムみたいな存在としてどこか納得してしまっていたミハイルだったので、当たり前のことなのに中身があったことに妙な感心をしていた。
ミハイル「人間だったんだな、奴も」
表情は読めない、ぎこちない仕草をする、何を考えているのかイマイチ不明。
下手をすると作り物の人形ではないかとも半分冗談、半分本気で思っていた。
クルクルの赤い髪を無意識にかく。
ミハイル「……それにしても奴が女だったとは」
フリーズしていて会話をちゃんと聞いていなかったミハイルはカンチガイしたままになってしまったようだ。
……誤解が解けるようになるのは、いつのことやら。
ミハイル『確かに男だとは一言も言ってなかったか』
真面目な性格の彼は、胸中複雑でうーんうーんと一人でうなっている。
ミハイル「……いや、そうじゃない。……っていうか、それよりもっ! しまった。月の物だというのに、連れて行かせちまった。……言ってやれば良かったかな?」
的外れな心配をしてドアの方を振り返ったが、一応氷鎖女も大人だ。
本当に無理なら自分で何とか言うだろうとうなづいて仕事に戻った。
ミハイル「まぁ、うん、まぁ」
意味もなく、何度かうなづく。
次から見る目が変わってしまいそうだと頭痛を覚えながら思った。
……疲れる。
現場に引きずり出された氷鎖女はこの瞬間から赤薔薇候補生のナツメとして、試験に参加することになる。
氷鎖女「……やるからには勝つ……」
ニケ「ハリキッちゃダメだってば。ほどほどに」
密に拳を固める氷鎖女にニケが釘を刺す。
氷鎖女「…………む」
ナーダ「はい、行った行った」
背中を押しやられて渋々、所属チームの方に歩いてゆく氷鎖女。
ヴァルト「何、心配いらないだろう。氷鎖女殿は黒魔術師だ。剣などふるったこともあるまい」
ニケ「それもそうか。演技しなくても大丈夫だね」
学徒の間を縫ってチームに合流した氷鎖女は、周囲の目が気になって気になって仕方がないようだ。
そわそわと落ち着きがない。
額右に大きなガーゼを当ててテープで固定し、上から裏に魔封じの呪文を書いた包帯を巻き付けている。
それらの下にあるのはキズではなく、もう一つの顔だった。
苦悶に歪む、女の顔。
人面瘡。
これが仮面で素顔を隠す理由である。
ミハイルが感じたのもこの人面瘡から流れ出る、“死にまつわる何か”だった。
それさえ封じてしまえば、気味が悪いとは思わなかったハズだが。
証拠に包帯を巻直した後では、彼は何も感じなかった。
呪縛から解き放たれたように、恐怖や嫌悪感が去ったのである。
“コレ”は、“そういう類のモノ”なのだ。
クロエ「あの……もしかして、ナツメさん?」
氷鎖女「!」
声をかけられて、必要以上に縮こまる。