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レイディ・メイディ 28-3
2008.03.12 |Category …レイメイ 28話
ミハイル「はぁーん。ナルホド」
またナーダと布団ダルマの戦いに視線を移す。
しばらくすったもんだが続いたが、引っ張り合いと脅しの末、とうとう氷鎖女の牙城が崩れた。
氷鎖女「ふぅ……情けなや。だが、未だ忍であったなら任務でこんなこともあったであろうな。ハァ、仕方ない、ゆくかァ」
重ねてため息。
観念したのか布団からモゾモゾと姿を現し、乱れた衣服と髪を簡単に直した。
どこかケガをしているのか、頭に巻かれていた包帯が布団の中で暴れたせいで落ち掛かっている。
▽つづきはこちら
ミハイル「…………………………」
『“コレ”が“アレ”か?』
何となく抱いていた顔と随分違うなと思った。
いつもは高く頭の上で結い上げられた黒髪は、下に下ろされてゆるくまとめられている。
長い前髪の間から見えている大きな瞳は顔立ちを必要以上に幼く見せ、不思議な金の色をしていた。
丈の短いスカートからのぞく形の良い足がやたらと白く目立つ。
目が合うと氷鎖女はさっと顔をふせた。
その一瞬、ミハイルは首に刃物をあてられたようなひんやりとした緊張を感じ取る。
ミハイル『何だ……?』
きれいといえば、きれいだった。
ただし、健康的な少女のそれとは異質な美しさで、まるで……そう、この世の者ではないような感覚。存在しているのに存在感の希薄な存在。
霊魂とか精霊だとか。
いるのかいないのか曖昧な……
そこまで考えて、わけもなく肌が泡立った。
美しいけれど気持ちの悪いもの。
いや、美しいが故に不気味なのかもしれない。
それはずっと昔見た、女の死体を連想させた。
見知らぬ女でただ死体を見て、その後話に聞いただけであったが、印象は深かった。
婚約が決まって嫁に行く日を指折り数えていた女はある日、ならず者に乱暴される。
思い余って自ら命を断った女は乱れた髪を顔に張り付かせ、色の失せた唇で小さく微笑んでいた。
閉じた長いまつげの間からは涙の跡。
想い人への純潔のために命を散らせて満足だったか?
彼女は冷たくなって横たわる。
はかなげな気を揺らめかせて、それもいずれは消える。
ミハイル「………………………………」
氷鎖女「……見るな……」
包帯を巻き直す。
ミハイル「おっ、あっ……悪い」
氷鎖女「……………………」
ミハイル『しゃべると……そうでもない……かな』
目の前の彼女?は生きている。
そうだ。
どうしてこんな想像をしたのだろう。
声を聞いて、安堵感が広がってゆく。
知らず体中に入っていた力が抜けて緊張がほぐれた。
ミハイル「なんだ、フツーじゃん」
包帯を巻終わって、氷鎖女「何が?」
不思議なことに気味が悪いと思ったのは一瞬だけで、口さえ閉じて黙っていれば、神秘的な雰囲気漂う異国の美少女として納得できた。
大丈夫。
生きている。
あと、そう、大股開いて座ってさえいなければ合格だ。
ミハイル「足、閉、じ、て、ろ、よ、見えるだろっ!」
足早に歩寄って、太ももに手を置きパンと閉じさせる。
気持ちが悪いなどと思った自分の態度を見透かされないようにわざと大きな声で言う。
氷鎖女「んん? 足? 下に履いておるから構わぬよ」
スカートの裾をめくって、中の短パンを見せた。
ミハイル「ちっ、ちがっ……見せなくていいっ!!」
意外に純朴な青年ミハイルは真っ赤になって怒声を上げた。
氷鎖女「……怒らんでもよかろうに……」
ついでにピシャリと叩かれた頭をさする。