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レイディ・メイディ 28-16
2008.03.20 |Category …レイメイ 28話
ハンカチで冷や汗を吹き吹き、ダンラック「何ですかな、今の騒がしいのは」
ヴァルト「……申し訳ございません。私めの管轄下の小隊長・ジャック=カイル=グレイング=ジョセフ=アラン=スティーヴン=コンスタンティヌ=ウイングソードでございます」
ダンラック「ウイングソード? ……知らんなぁ」
付き人「閣下が御存じないのは当然でございましょう、一介の小隊長ごときでは」
ダンラック「それもそうですね。フォーフォーフォー」
巨体を揺らして笑うと、「さて」と話を転換させる。
重さで歪みかけていた椅子から億劫そうに腰を浮かせた。
ダンラック「私はしばらく滞在することにしますよ」
付き人「は?」
▽つづきはこちら
ダンラック「試験中ではお話もできませんからねぇ。もう少し都市部に滞在します」
滞在と聞いて教官たちは密に落胆した。
椅子から立ったから、帰ってくれるものと思っていたからだ。
お偉いさんの突然の訪問は迷惑で仕方がない。
ダンラック「本校の様子でも見回って来ます。それでは」
もう一度、教官たちが敬礼で送り出す。
ダンラック「アイビーちゃん。案内、よろしくお願いできますね?」
アイビー「……私は忙しい身ですので」
しかしここに連れて来た罰なのか、同期のナーダとヴァルトが口をそろえて言う。
二人「よろしく、アイビー……ちゃんっ♪」
意地悪く口元を歪ませている二人だが、目が笑っていない。
アイビーは自分がダンラックが余計なことをしでかさないようにつけられた首輪なのだと気が付いて、仕方なくうなづいてみせた。
場面は戻って、試験中の学徒たち。
クロエ「メイディ、大丈夫? ごめんね、フォローに入れなくて」
メイディア「ええ、もちろん。ちょっぴり敵に花を持たせてあげただけですもの」
クレス「その必要ないだろ」
メイディア「……う」
クレス「クロエも謝ることないよ。高笑いなんかしてるからやられたんであって、普通はアレ、避けられるって」
メイディア「おだまりー」
フェイト「まぁ、今回は簡単に済んだな。……よく、やった」
頭にこしらえたタンコブを濡れタオルで冷やしながら、珍しくメイディアを褒める。
よくやったといえ、これは普通なのだが。
前回がひどすぎたのだ。
しかしちゃんと反省して次に生かしてきたのは、認めてやってもいい。そう思ったのだった。
褒められた方はきょとんとしてフェイトを見つめてくる。
何か言いかけては黙って、そのうちにいつもの調子で「当然です」と言ったきり、黙ってしまった。
ダレスはといえば、今度はナツメに使えないだのと文句を言っている。
さきほど無視をされた腹いせも含まれているようだ。
フェイトも一言言いたいことはなくもなかったが、戦闘中での接触や事故はつきものでいちいち咎めるものではないと黙っていた。
ナツメは言い返すでもなく、相変わらず黙ってうつむいているだけで、傍から見るといじめられているようにも映る。
ダレスがあんまり強く責めるようなら次の戦闘で変に萎縮されても困ると止めようとしていたところ、これまた珍しいことにクレスが先に軽い助け舟を出した。
クレス「実力差があるのは仕方がないことだろ。それも含めて展開させるのが今回の試験なんじゃないの? やる気がないワケじゃないんだ、責めるなよ」
ダレス「なんだよ、たまにまともなコト言ったかと思ったら女の機嫌取りかァ?」
クレス「たまにはって何だよ。お前と僕じゃ頭の出来が違うだけさ」
ダレス「……ケッ」
クロエ「ああーん、また険悪な雰囲気~っ! やめようよ~っ、もぉ~!」
クレス「別に険悪じゃないよ。こんなバカ、相手にするつもりないし」
ダレス「んだとっ!?」
クレス「あー。つかれた」
強引に打ち切って、そこらの木の根に腰を下ろした。
ふと顔を上げたナツメと目が合う。
助けてあげたことに感謝でもしているのかな?
クレス『……金色……』
不思議な、金の色に見入っているとやはりそらされた。
リクではないが、どこかで見たことがあるように思う。