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レイディ・メイディ 26-4
2008.03.03 |Category …レイメイ 26、27話
ナーダ「いやね、この子が……」
メイディア「ダーリン、お会いしたかったですわ!」
ぱっと明るい表情になって太い腕に取り付く。
ヴァルト「……ダー……? なんだって?」
身に覚えのない呼び名?で呼ばれ、困惑するヴァルト。
ナーダ「知らなかったわ。シャトー令嬢と貴方がそんな関係だったなんて」
ヴァルト「オイオイ、二人で俺をどうしようっていうんだ」
笑っているナーダがけしかけたと思い、本気にはしていない。
当然の反応だ。
▽つづきはこちら
ナーダ「私は知らないわよ。たった今、いきなりこの子が来て、ダーリン出せっていうんだから。
……学徒に手を出してんじゃないわよ」
笑いで滲んだ涙を指先でふき取る。
ヴァルト「そんなワケがないだろう。ホラ、エマリィ=シャトー、離さないか。俺もこれでいて忙しい。遊んでいる暇はないんだ」
まだ飯食ってないし……とぼやく。
どうやら忙しいはその辺りを指しているようだ。
メイディア「まぁ! ワタクシのこと、ご存じでいて下さったのですね? 感激ですわ」
ヴァルト「そりゃあ、あれだけ騒ぎを起こしていればな」
ナーダ「なんだ、個人的には初めてか。ダーリンだなんて言うからてっきり……」
ヴァルト「何がてっきりだ」
やんわりとにらみつけるが、ナーダはどこ吹く風でまだイタズラな笑みを浮かべている。
ヴァルト「どっからどうやってダーリンになったかは知らないが、ここは教官専用の宿舎だ。学徒はもう戻りなさい。大人をからかいに来たのか?」
メイディア「とんでもございません。本日は結婚の申し込みに参ったのです」
ヴァルト「……ケッコン……」
口の中で繰り返す。
結婚……なんだ、それは!?
ヴァルト「ちょ……ちょっと待て。だから、何でそういうことに?」
ナーダ「いい話じゃない、シャトー家のお嬢様よ?」
ヴァルト「いい加減にしてくれ」
メイディア「ヴァルト教官、ワタクシを助けると思って婚約して下さいませっ!」
ヴァルト「はぁ~」 盛大にため息。
教官を務めて何年。
毎年、こういった少女が数人は必ず現れる。
そうでなくとも年上に憧れる年頃の女の子たちだ、精悍な顔立ちと颯爽とした振る舞いの青薔薇正騎士中隊長・ヴァルトに恋してもおかしくはなかった。
……とはいえ、こんな直球勝負は初めてだったが。
ヴァルト「気持ちは有り難いがな、俺はまだそういったことは考えてないんだ。えー……あー……シャトーは……」
メイディア「シャトーだなんて……ワタクシのことはメイディと呼んで下さいなっ♪」
ヴァルト「……メイディアはまだ若い。これからも色んな男に会って、沢山の……そのー……なんだ、恋愛でもしてだな」
少女の心を傷つけないように慎重に言葉を選ぶ。
こういったことに不器用なヴァルトはホトホト困って見物しているナーダに視線で助けを求める。
期待はしていなかったが、やはり彼女は薄情にも腕を組んで面白そうに眺めているだけだ。