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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 24-9

 しかしそんな事情は全く知らない教官たちはお気楽なもので、気にした様子がない。

 当然と言えば当然だが、顔を隠している以上、何かあることを察して放っておいて欲しかった。悪ふざけにも程がある、氷鎖女は本気で思っていた。

 今は日中とはいえ室内でそんなに光を浴びなかったから良かったものの、瞳がおかしいと知れれば魔性である疑いがかかり、今すぐにでも捕らえられて裁判にかけられてしまう。

 

ヴァルト「まぁまぁ、悪かった悪かった。それはそうとしてハタチには見えんなぁ。……歳、ごまかしてないか?」

氷鎖女「……悪かったと思っていないでござろう」

ヴァルト「まぁな」

氷鎖女『オイッ』

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レイディ・メイディ 24-8

氷鎖女「…………………………よくわからないが、断る」

ニケ「えいっ☆」

 

 突然、額あてを下に引き下げる。

 

氷鎖女「っ!??」

 

 大きく開けた世界。いつもより多い光が瞳に届く。

 

氷鎖女「……………………」 硬直。

 

 ヒュウ、と口笛を吹くナーダ。

 

氷鎖女「……………………」 瞬き。

ヴァルト「こんな顔だったっけか」 まじまじと覗き込む。

氷鎖女「…………ぎ……」

ニケ「♪」

氷鎖女「ぎゃあぁぁあぁ            っ!!!」

 

 キィィーン

 ものすごい悲鳴が上がる。

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レイディ・メイディ 24-7

 教官・職員室。

 

ナーダ「シャトー家はどーなってんの、まったく」

 

 教官用に配られた昼食に手をつける。

 

ヴァルト「貴族の問題は複雑だからなぁ」

 

 だから貴族のボンボンやお嬢様が入所するのは嫌なんだという含みが言葉の端から伺える。

 

ニケ「氷鎖女のクラスでしょ、何とかならないの?」

 

 スープをスプーンで掻き混ぜる。

 

氷鎖女「拙者が? 何故」

 

 一人で二本の棒……つまりお箸を使ってご飯を食べている。

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レイディ・メイディ 24-6

 身から出た錆び?

 あまりに幼稚で考えのない行動に出たために周囲はほぼシラーの手中。

 立場は悪化する一方だ。
 ……ぶっちゃけ、本人が悪いのだが。

 しばらくするとシラーを表向きは避けつつ、けれど取り入ろうとしている連中にメイディアも少しずつ気づき初めていた。

 

メイディア『何ですの、サイテー、サイテー!』

 

 気づいたら周りは敵だらけ。

広がる陰口。

自分が仕掛けたのを棚に上げて、怒り心頭。

 取り巻きたちにも当たり散らして、人心はさらに離れて行く。

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レイディ・メイディ 24-5

 シラーの悪いところが表ざたにならないとくれば、あとは同情を買うのはお手の物。

 特にメイディアのような隠し事が苦手で何でも思ったことを口にする相手には有効な手段であることを知っている。

 噂話という究極の情報戦にメイディアは初めから敗北していたのである。

 皆の前で大っぴらに姉妹を差別するメイディア。

 さめざめと泣き暮らすシラー。

 軍配の上がる方は目に見えている。

 

レイオット「メイディアッ! シラーに謝りなさい」

メイディア「お断りよ」

レイオット「どうしてそうなの!?」

メイディア「どうしたもこうしたもありません。下賎の者に口を利いてやるいわれはないだけです」

レイオット「コラッ!」

メイディア「フーンッだ」

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レイディ・メイディ 24-4

 ……その通り。

 

メイディア「お父様に言って一生分の生活を面倒見てさしあげるから、田舎にお帰りなさいよ。お母様の目の前から消えてちょうだい。お母様はお優しいから許可して下さったかもしれませんけどね、ワタクシは違います」

 

 本当にどうしようもない娘であった。残念なことに。

 ただ一つ、救いがあるのだとしたら、母の名誉を守りたい一心だということ。

 とはいえ、それで相手を傷つけていいいわれはないのだが。

 シラーもシラーでわざわざ自分が不利になるように仕向けている節がある。

 放っておけば、初めはシラーに対して同情的だったメイディアなのだから、ここまで騒がなかったものを、だ

 彼女からすれば、悪いのは父と妻がいることを知っていてさらに身分違いだというのに恋をしたシラーの母。

その間にできてしまったシラーに何の落ち度もないことは彼女にもわかっていたのである。

 しかしシラーが自分こそが正当なる後継者で、メイディアとは間違われたのだと噂を広めたものだからさぁ大変。

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レイディ・メイディ 24-3

メイディア「しばらくは知らないということで通しましょう。ええ、それがいいわ。…………考えがまとまるまで」

アン「???」

 

 しかし現実はそう甘くない。好まざるまいと事態は進んでゆくのである。

 教室で食堂で廊下ですれ違うシラーはすでにこのことを承知していて、メイディアと顔を合わせるたびに薄く意味深な笑みを浮かべるのだった。

 第一次シャトー令嬢大戦の勃発である。………?

 

 

 手紙と共に送られてきた新しい娘への資金は、通常では考えられないくらいの額であった。

 それはずっと放置していた伯爵の負い目と伯爵夫人立案の作戦からであった。

 勝手に出て行ったメイディアには資金を援助せず、シラーの方に援助金を出すことでメイディアを精神的に追い込もうというのである。

 娘のメイディアは、自分以外に娘がいた事実とそちらをヒイキにすることで問い詰めに戻ってくるであろうというのが夫人の狙いだ。

 そうでなくとも何不自由なく育った箱入り娘。

 我慢などという芸当がそんなにできるとは思えない。

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