HOME ≫ Entry no.225 「レイディ・メイディ 21-5」 ≫ [230] [229] [228] [227] [226] [225] [224] [223] [222] [221] [220]
レイディ・メイディ 21-5
2008.01.27 |Category …レイメイ 21-23話
クロエ「メイディア……」
知らず、緊張して口の中が乾いた。
メイディア「…………………」 立っている。
「…………………」 瞬くこともなく。
「…………………」 そして。
「……あら、どうか致しまして? お顔の色がよろしくありませんことよ」
クロエ「………………メイディア……?」
突如、何もなかったように彼女は普段と同じような態度に戻る。
今し方、涙を流したことすら一瞬の幻だったように。
▽つづきはこちら
メイディア「…ワタクシ、これから授業がありますの。失礼」
クロエ「???」
メイディア「お大事に」
松葉杖に頼りながら、彼女は去った。
部屋の中には再び、静寂。
クロエの心臓の音と時計の音だけが全身に強く響いている。
今のは、ナニ?
メイディアが遅れて教室に入った。
現在は歴史の講義中であったが、誰も何も言わない。
本人も特に「遅れました」の一言もなく、堂々と空いた席に腰を下ろす。
教師の方でもいつものことだと注意するつもりもないらしい。
あの娘に何を言ってもムダだ。…それは共通の意識であった。
学問については自分の家ですでに家庭教師をつけられていたメイディアだったので、カリキュラムの中に学問を組み込むことはあまりなかった。
それでも少しずつ入れているのは、自分が習ったより先にいっていたらそこからちゃんと授業に出ようと思っていたからで、つまり現在は授業進行を知るためにここにいるだけだ。
授業を入れない空き時間などは大抵、図書室にこもって魔法の勉強に勤しむか、外でやはり魔法の練習をしている。
裕福な生まれの彼女は幼い頃からの英才教育のお陰もあって、他の勉強に時間を割かなくてよい分、魔法に割り当てることができたので練習量も半端ではなかった。
薔薇の騎士は強いだけではいけない。
礼儀、作法、そしてどこへ出ても恥をかかないだけの教養も備わってなくてはならないのだ。
生まれ貧しく、ほとんど教育らしい教育を受けていない学徒にとっては、身につけなければならない事柄ばかりで時間がいくらあっても足りないくらいだ。
その点、机にかじりつくような少女時代を送っていたメイディアは有利であった。
今の授業もすでに暗記してしまっているところだったので、聞き流すことに決め込んだらしい。
黒魔術の本を取り出して目で追っている。
しかし今日に限っては文字を映しているだけで頭にいっこうに入って来なかった。
それよりももっと別の影像が意識を支配している。
壊れたオルゴール。
湖に見立てた鏡の上をクルクル踊るプリマドンナ。
ゼンマイを巻くとギロチンの刃が落ちる仕組みになっている玩具。
罪には罰がつきものだ。
罪人は報いを受けるのだ。
沢山のぬいぐるみに人形に洋服にアクセサリー。
それらに囲まれて少女は抜け殻のように座っている。
ここはどこだろう? あの少女は誰? 蒼目と金色の巻き毛。
メイディア『ああ、そうだわ。あそこはワタクシの部屋……………』
「…ほげ?」
気が付いてみたら授業は終わっており、一人でポツンと座っていた。