HOME ≫ Entry no.235 「レイディ・メイディ 21-12」 ≫ [240] [239] [238] [237] [236] [235] [234] [233] [232] [231] [230]
レイディ・メイディ 21-12
2008.02.01 |Category …レイメイ 21-23話
シラー『……彼女を味方につけられれば、他の女子も味方につけたも同然だわね』
ほお杖をついてノートの上に記したレイオットの名に丸をつける。
女ながらに剣の腕前が達者で、並み居る男たちをスマートに倒して行く姿に養成所の女の子たちはハート釘付けだ。
おまけに背が高く細身で中性的美人ときたら、年頃の女の子にもてないハズはない。
この年齢の少女たちは同性に憧れることも少なくはない。
汗くさくてムサい男衆よりもキレイでカッコよい女の人の方がいいという妖しげな魅力にとりつかれる娘も大勢いるのだ。
シラー『あとは彼ね』
▽つづきはこちら
個人的にも興味があるリクの後ろ頭を視界に収める。
レイオットやリクが自分を特別な存在として扱っていたなら、どんなにか鼻が高いだろう。
学徒たちの羨望の的になることは間違いない。
今、その地位にいるのは何故かメイディアだ。
本人は全く気がついていないようだが。
まぁ、それはそうだろう。
彼女にとってレイオットは“麗人”ではなく“遊び仲間”で、リクは“美少年”などではなく、“無礼な男”でしかないのだ。
……驚いたことに。
けれどそれも貴族だという後ろ盾があっての話。
アンの話では、リクの方でもメイディアをあまり好ましく思っていないらしい。
身分とは違った影響力を多大に持った人々の中には屈服しない者たちもいる。
例えば、ファンクラブが自然と結成されてしまうような人気者の彼らがその代表格だろう。
リクとレイオットは養成所の中でなら、メイディアに引けを取らない“権力者”なのだ。
いや、家柄に頼った偽りの人気でないだけにこちらの方が強いかもしれない。
現にリクはメイディアを怖がってはいない。
だが……
シラー『嫌っていると聞く割に今日も背中に乗せてきたり、意外と世話焼きしてるように見えるのよね』
好意を持っているのでは? と疑っていたのだが、性格ブスと本人を前に言ってしまうあたりはどう考えても好意的ではない。
シラー『演出かしら……。女の子たちをヤキモキさせるための』
リクが一人をひいきにすることで起こる少女たちの反応を考えてみた。
気もない男の子に親しくして気になる男の子の気を引く……シラーがよく使う手口だからだ。
しかし残念ながら天才リク君はそんなに気の回る男ではなかった。
今現在も今日は食堂で何を頼もうかと真剣に悩んでいる最中。
もちろん、楽しい授業(あくまで彼にとって)も聞き逃してはいないが、腹の虫がさっきからゴニョゴニョと鳴り続けているのである。
ウルサイとばかりに机の下で、左右から足を踏ん付けられている。
リク「痛いよ。おなかの音は仕方ないじゃないか」
クレス「ふざけんなよ。朝ご飯、5人分はたいらげてるクセに」
メイディア「しかもいつもお菓子を持ち歩いて、休み時間毎に食べているの知ってるんですからね」
リク「でも減るものは減るんだから……あ、また鳴った」
クレス「おい」
メイディア「はしたない」
彼にとっては、世間で脚光を浴びる手立てよりも、女の子に黄色い声をあげさせるよりも、食堂で何を注文しようかと考える方がはるかに重大事項なのであった。
氷鎖女「……ということで今日の講釈はおしまい」
必ず言う決まり台詞を残して氷鎖女が教壇を降りる。
授業が終わったのだ。