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レイディ・メイディ 21-11
2008.02.01 |Category …レイメイ 21-23話
アン「ハッ!! あ……え……いえ……そ……そうですか……ハイ……」
もう何を返してよいのやら。
赤面してゆっくりと腰を下ろすアン。
シラー「ちょっとぉ~……」
アン「ご、ごめん」
シラー「冗談だってば」
アン「なんだ、やめてよ脅かすの」
シラー「なんでそこで驚くのよ。いいじゃない。私が誰を好きになろうと」
アン「それはそうだけど」
シラー「それとも何? 私では無理って言いたいの?」
アン「そんなことは……」
シラー「いいけどね~♪ ウフフ」
『さあ、誰を使って追い詰めよう?』
▽つづきはこちら
ノートに数人の名前を描いてほくそ笑む。
他者に影響を及ぼしやすい人間がうってつけだ。
それから噂を広める役を担った口の軽い奴も必要だ。
シラー『見てよ、この美貌にスタイル。とても15歳とは思えないでしょう、私? お姫様と呼ばれるのは私こそがふさわしいと思わない? 貧乏暮らしがここまで似合わない女もいないと思うの。光る原石なんだわ、私は。埋もれていくなんてもったいない』
物心がつく頃には化粧をしたがった。
美に女臭さに強い関心を示していた彼女は、年頃より早く、自らの輝くばかりの美しさにうっとりしていた。
男の子にもてた。
その気にさせるのが上手で、最後に手厳しくつっぱねてやるのが好きだった。
つっぱねておいてまた優しくする。甘える。そうすると相手はさらに自分に夢中になるのだ。
男の子たちが夢中になってくれることで、自身の魅力を確認し、ますます己の虜になってゆくシラー。
それでいて明るく気の利く子を演じる彼女は周囲の大人をいつも感心させていた。
だけどそんなくらいでは物足りない。
注目を集めたい。
もっともっと。
シラーブーケは母から昔話を聞くのが好きだった。
実は自分はあのシャトー家の血を引いていること。
旦那様に愛されていたこと。
証しにもらったペンダントを見せてもらうこと。
その度にシラーは自分は本当はシャトーにいるべき人間で、本家のお嬢様と間違えて連れて来られたのだと言い触らした。
すると母は決まって夢を見るんじゃないと激しく叱咤するのだった。
そんな母がシラーは大嫌いだった。
負け犬の母親が。
自分とは似ていない。
断じて自分はこんなしみったれた女の娘などではない。
もし自分が母の立場だったら、絶対に引かなかったと思う。
それどころか妾として堂々と居座り、いずれ正妻を追い出して乗っ取ることだってできたハズなのだ。
そんなこともできないで、いつまでも昔の……相手にとってはしょせん戯れだった恋の物語をいつまでも大切にしている母を軽蔑していた。
始めはこうだったらいいのにという願望だけだった「取り替え子説」は、いつのまにか彼女の中で大きく育ち、現実味を帯びていった。
そして空想を現実のものにするため、少女は動き出したのである。