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レイディ・メイディ 16-6
2007.12.06 |Category …レイメイ 14-17話
クロエ「どうしたの、急に?」
アン「急じゃない。初めから嫌いだったのよ、あの子!! 皆、よく我慢していられるわね」
困惑した表情で、レイオット「えっと……アンは……仲良しなんじゃなかったの?」
アン「冗談でしょ? そう見えました? 皆、甘やかせ過ぎなのよ。どうしてあの子は何もできないのに可愛がられるの!!? 私の方がちゃんとなんでも真面目にしっかりやっているじゃないっ!! なのに私のこと、誰も見てくれないっ!!」
レイオット「アン、どうしたの、ちょっ……」
アン「ごめんっ!! 何でもないっ!!」
荷物を持って部屋を出て行ってしまう。
▽つづきはこちら
クロエ「どうする? 追いかけた方がいいのかなぁ?」
レイオット「ううん。少し興奮気味だったから……しばらくそっとしておいた方がいいかも」
クロエ「そだね……」
二人、うなづく。
各々、新しい部屋で自分の荷物を落ち着かせる頃には夕方になっていた。
この日は訓練も授業も一切ない。
1年目の初日は何もしなくて良いということに疑問を感じていたメンバーだったが、今にしてみれば、この大移動が行われるから1日お休みなのだ。
片付けて掃除をして、運んで整理して……
401号室。
ジェーン「ジェーン=アイラよ。よっろしっくねーん♪」
モーリー「モーリーっていうのー。16歳。仲良くしてネ☆」
クロエ「アレ? モーリーって去年も16じゃなかったっけ?」
モーリー「ああ、そうそう。今年誕生日が来たら17になる16歳ってコトで。うふっ♪」
クロエ『ってコトで?』
実はモーリー、童顔で年をごまかしているが、ジェーンやレイオットよりも1つ上だったのだ。
クロエ「私はクロエ=グラディウスです。本当はお兄ちゃんと同じ青薔薇が良かったんだけど、白薔薇の方が向いていると言われたので白薔薇候補として頑張ってます。やるからには必ず白薔薇騎士になってやろうと思いますっ!!」
心意気満々。
ステラ「クロエ、今年は一緒だね~♪」
クロエ「うんっ!!」
ステラ「あ、私、黒薔薇専攻のステラ=イーニッド。クロエとは昔なじみの友達なんだ」
レイオット「レイオット=ジーエルン。赤薔薇目指してます。今年18歳です。ヨロシク」
シラーブーケ(以下、シラー)「私は……今はシラーブーケ。近いうちに名前、変わるかもしれないけど。黒薔薇よ。昨年は母が危篤だったから、実家に戻っててその間、ここを休ませてもらっていたの。だから留年組ね」
レイオット「じゃあ、私たちより先輩なのね?」
シラー「一応は」
クロエ「お母さんの具合……大丈夫なの?」
ジェーン「おバカさんね。大丈夫じゃなかったらここに戻ってきてないわよ。ね? シラー」
シラー「そうね。もう死んだから大丈夫なんじゃない?」
クロエ・ジェーン「……あ……ゔ……」
マズッたという二人の表情を読み取って、
シラー「気にしないで。いいの。あんなの本当の母じゃなかったんですもの。私、新しい本当の家族ができたんだ。ウフフッ」
クロエ「……色々深い事情があるみたい……」
ステラ「馬鹿っ、軽々しく知らない人のお家事情に首突っ込むから……」
おせっかいめ、と軽くたしなめる程度に睨む。
クロエ「だって……平気だったのかなって……」 首をすくめる。
シラー「あらホント、気にしないで? 私、ツキが回ってきたんだから。これから堂々と表舞台を大手を振って歩けるんだわ」
そう言って彼女は明るく笑った。
去年、丸一年休学していた彼女をこの部屋の全員が知らない。
病の母を医者に診せようとせず、食事も与えず彼女が見殺しにしたこと、シャトー家に通い続けてシャトー夫人と面会することに成功し、しばらくの間そこに滞在していたことも。
そしてシャトー夫人に頼まれた形で再びこの養成所に戻り、令嬢を説得する使命を帯びていること。
シラー『マージスキルを身につけて一旗挙げようと思って入った養成所だけど、思わぬ獲物がかかってくれたわ。まさかシャトー令嬢が薔薇の騎士を目指していたとはね。本当、素敵な巡り合わせ。これは神様がくれたチャンスよ』