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レイディ・メイディ 70-9
2009.07.26 |Category …レイディ・メイディ 70話
ところで。
とうとう謁見の間までたどりついたその脱力系・先生。
本来、リクとクロエが来たときには、ブラウドらに混ざって先に参列していなければならなかった。
つまり、リクたちよりも早く着いていなければならなかったわけだが……
ニケ「ヒィ~サァ~メェ~……」
鎮「ひいぃっ!?? お、お許しを~! へへぇっ!!」
青ざめてその場にひれ伏す。
鎮「ちっ、違うのでござる! 焼きイモを焼いていたら、ぽんが……」
ニケ「女王のお呼び出しに遅れてくるなど……」
鎮「あっあのっ、コレッ! コレッ!!」
ニケの雷が落ちる前にと風呂敷を広げて、例のブツを見せる。
ぼてーん……。
鎮「………………」
▽つづきはこちら
改めてみると何回も落としたイモは原型を留めていないばかりか、砂やら土にまみれてみる影もない。
それにリクがかじった跡と、途中で自分がうっかりかじってしまった跡……。
何だか当初の予定と違うみたい?
本当だったら、想像の中ではほくほく焼きイモを見て、ニケも女王も怒りを納めてわーいわーいと大喜びのハズだったが。(※あくまで鎮の脳内では)
鎮「あのっ、あのなっ、あのなっ。これは……えーと……」
説明に困っている鎮をクロエを連れて先程戻ってきたガーネットとブラウドがあっけにとられて見つめている。
ブラウド「アレが……ウワサのニンジャ先生なのか?」
娘からの手紙によく登場するニンジャでブンシンな教官と同じ名前のようだが。
まさかまさか。
ガーネット「人格者でステキ先生だと聞いていたが、俺は直接知らないから何とも……」
クロエ「先生がどうしてここに?」
一人、鎮の行動にも動じないクロエが歩み寄る。
鎮「むう。イモが、イモがな?」 オロオロ。
クロエ「うん、イモが?」
膝を曲げて中腰になり、床にぺたりとへたり込んだ教官を見下ろす。
鎮「遅刻しそうだったから、焼いてきたのでござる」
クロエ「遅刻になりそうだったから……おイモを? ……う、うん」
鎮「でな? 持ってきたけど、落としたり、落としたり、かじったりしているうちにあれだ。ちょっとあれになってしまったのでござる」
クロエ「へ、へぇ。うん……アレね、うん。困った……ね?」
鎮「でも、見た目はよろしくないが、3秒以内に拾っているから大丈夫!」
クロエ「……3秒以内って誰が決めたの、そのルール?」
鎮「昔からそうなっておるのだ」
クロエ『どこでっ!?』
本人以外は唖然呆然。
何やらどこから引っ張ってきたのか良くわからない3秒ルールによってわけもなく自信を回復した鎮はリクのかじった残りのイモを得意げにニケに渡した。
鎮「ハイッ!!」
ニケ「………………。」
手に乗せられたかじりかけイモに視線を落とすニケ。
無言のまましばらく打ち震えている。
ああ、雷が落ちるまであと数秒もないな。
かつての愛弟子である女王とブラウドは思った。
そしてその通り。
ニケは雷神と化す。
ニケ「ハイじゃないっ!! だぁれがイモ焼いて来いッつったんだよぉぉぉぉーーーー!!!???」
鎮「ひえぇっ!??」
『落ッ! 雷ッ!!』
縮こまってブルブル震える。
ニケ「呼ばれたら、素直に来いッ! イモ焼く暇があったら、死に物狂いで急いで来いッ!!」
鎮「あややややっ」
『被弾、被弾ッ!!』
ニケ「だいたい、何だ、このイモ、食べかけじゃないかっ!! これを女王に献上する気か、このすっとこどっこいのアホぽんたんっ!!!」
鎮「ごめんなさい、ごめんなさいっ」
二人のやり取りを前にようやく気持ちを無理に立て直したガーネットが横目でクロエを見る。
疑いの眼差しと言うやつで。
ガーネット「アレが……お前の言う、ステキ忍者先生なのか?」
クロエ「そうよ。時々、常識が私たちと違うけど、あれはたぶんニンジャ的常識だから、きっとおかしくはないのよ」
ガーネット「おかしーだろっ」
クロエ「うん、私もおかしいように見えるけど」
ガーネット「やっぱり変だって思ってんじゃないかっ!」 がびんっ!?
クロエ「だけど、ニンジャだからしょうがないの」
ガーネット「全部ニンジャで済ますなよ……」
本当はやっぱりおかしいと思っているクロエだったから、立場が危うくなって冷や汗、拭き拭き。
できればもっとちゃんとした場面を兄と父に見てもらって、素晴らしい先生なのだと自慢したかったのだけど、何だかとっても無理っぽい。
不信感でいっぱいの眼差しで見ている、二人とも。
クロエ『あーあー……』
「ニ、ニケちゃん、ところでどうしてヒサメ先生がここに?」
話を逸らそうとクロエはニケの小さな背中をつついた。
ニケ「ハッ! そうだった。ヒサメ! 女王と姫の御前である。その奇怪な仮面を取ってご挨拶せよ」
鎮「エーッ!?」
クロエ「えっ!?」
養成所に来て3年。
他の生徒たちと同様に一度もあの仮面の下を見たことがない。
本当は、「ナツメ」として顔を合わせているが、それを知る善しもないクロエは動揺した。
正直、見たい。
とても興味がある。
鎮「この醜き顔をお二方の御前にさらしては……気分を害されるというもの」
そそっと額当てに手を添える。
ニケ「またトンチキなことを」
鎮「女人には衝撃が大きいかと。倒れられても困りまする」
ニケ「ヒサメはさぁー……うーん……」
『精神障害なんだろうなー……コレ』
彼が自分を醜いと思い込んでいる理由はわからない。
ハッキリ言って、素性などまるで知れない外国人だ。
ニケは姫と紅い護り石を抱く少年の守り手にこの青年をつけることに反対だった。
女王が指名したから、仕方なしに容認しただけのこと。
本当だったら、血筋がハッキリしていてしかも家柄も良い、腕がたって、御しやすく信用のできる人間が良かったのだ。
とにかくシズカ=ヒサメという青年は、謎が多すぎる。
思考・言動共に謎だし、血筋も知れない。
過去についても一切不明なのである。
この、己の素顔を醜いと思い込む異常なまでの強迫観念にしても、恐らく過去に何か彼の思考を歪めてしまうほどの事件があったに違いないのだ。
ニケ『まぁ、カンタンに当てをつけるなら、虐待でもされていたんだろうケドね、大方』
この世の中、残念だがよくあることだ。
百人いれば百人。
彼を見て醜いと思う人間は恐らくいまい。
なのに当人は自分を怪物か何かのように思い込んでいる。
どこまで追い詰められればそのように歪んだ考えに囚われてしまうのかわからないが、彼はまるでこの世に存在していること自体を申し訳ないと思っているかのようだった。
ニケ「ヒサメの意見なんか聞いていないし、通らないんだよ、ここでは。さあ、ご挨拶を」
心を患っている者を説得するのは面倒だとニケは切り捨てることにして、命令として先を促す。
今日はクロエではなく、クローディア“姫”に目通りさせる目的と、真実を知ってきっと怒り狂うであろうリクを説得させるために呼んだのだ。
鎮の事情や心の病など、この場には関係のないことである。
命令と言われたら逆らうわけもいかないと観念したのか、鎮は大人しく仮面に手をかけた。
まるっきり脱がないわけではない。
これまでも何度か外して顔をさらしているし、街中では生徒に正体を隠すために逆に素顔のままで歩き回っている。
無論、うつむき加減でやはりほとんど顔は見えないようにはしているのだが。
だから本人にとって、そこまでの苦痛ではないはず。
正式の場なのだから、ちゃんとしてもらわないとニケとしては格好がつかないというわけだ。
例え、女王がベルモォォォォォォル3世で登場してきても、鶴の舞などと言い出してわけのわからないポーズを取ったとしても。
家臣は家臣の分をわきまえていなければならない。
というのがニケの考えであり、当前の常識である。
それを無視すれば、王族・貴族制度が破綻してしまいかねないのだ。
この馬鹿らしい場面では大げさかもしれないが、それでも規律は守らねば。
しかし見かねたクロエがそんなに無理して外さなくても良いのではないかと助け舟を出した。
クロエ『本音では見てみたいけど……』
何だか可哀想である。
クロエの想像の中では、兄・偲似の格好の良いキラキラステキ男性なのだが、本人が醜いと言っているからには、本当にそうなのかもしれない。
大きな傷や火傷があるのかもしれない。
本人が気にしているものを無理に脱がせる必要もないだろうと思ったのである。
ニケ「いいえ、姫。コレはただのヒサメのワガママ以外の何物でもありませんから。姫にお気遣いいただくことではありません」
クロエ「でも……」
“ニケちゃん”に余所余所しく堅い敬語を使われ、改めて気持ちが沈む。
ニケ「それに姫が考えているようなことはヒサメにはないのです。独りでただ思い違いをしているだけのこと」
クロエ「??」
渋々ながら、鎮が額当てを外す。
ヒサメ先生としては、初めてクロエの前で。
●Thanks Comments
おーっ!!
とうとう仮面を取っちゃうの?、ヒサメ先生。
しかし、めちゃくちゃ可愛いんですが.....いつもこの先生は♪(*^-^*)
【ぽんが...】って【お腹】のことだよね?(^-^)
マジでニケにリクの焼き芋の食べかけ渡したし(^_^;)
3秒ルールまでつくってるし♪(笑)
言い訳せーいっぱいのヒサメ先生は可愛かったのです♪(*^-^*)
でも、やっぱりきちんとしたとこは、きちんとしてて...そんなヒサメ先生が好き♪(*^-^*)
Re:おーっ!!
>これでハタチ過ぎの男だから、もうアホ以外の何物でもアリマセン(爆)
>ニケの苦労がうかがい知れる(^_^;)
>
>3秒ルールで大丈夫とか言ってるけど、明らかに拾うのに3秒以上経ってるんだけどね;