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レイディ・メイディ 70-10
2009.07.27 |Category …レイディ・メイディ 70話
クロエ「……え……あれ?」
ブラウド「……ほーう?」
ガーネット『……女?』
額当てを外し、改めて跪くシズカ=ヒサメ。
意外なその素顔にクロエを含めたグラディウス親子は驚きを禁じえないでいた。
奇行ばかりが目に付く小男。それでいて女性が卒倒してしまうほど醜いというので、どんな醜悪な顔が現れるのかとブラウドとガーネットは構え、ニンジャなヒサメ先生に過大な夢を抱くクロエは切れ長の涼しげな目をした美少年を思い描いていた。
しかし三人の想像はどれも遠く、実際に現れたのは美少年にも美少女にも見える妖しい蝋人形めいた白い顔だった。
頭を下げているためにハッキリと確認することは出来ないが、漆黒の髪の間から覗く瞳は不思議な金の光を帯びている。
▽つづきはこちら
しかも何度もお目にかかったわけではない。
鎮だとわかって見ている為に、すぐにナツメという少女に結び付けられないでいた。
誰もが美しいと認めずにはいられない、儚い細面。
どうしてこれを醜いと思うのか。
未熟なクロエとガーネットにはわからなかったが、歴戦の勇士であるブラウドは一人、直感した。
浮世離れしたこの美に対し、これは「禍つ者である」と。
言葉という形にまでなりきれない不快が付きまとう凍える美。
瞬間的に浮いた想像は水死体だった。
あるいは花に擬態する、妖艶なる魔物。
花で惑わし、人を惹きつけ、水の中からからめとり静かに命を奪う。
奇しくも薔薇の騎士団養成所の医療を携わるミハイル=レヴィードが初めて「鎮」を見たときに受けた印象と同じ感覚である。
この少年とも少女ともつかない人物の評価を彼はこう下した。
「気味の悪い男」と。
このような得体の知れぬ人間に手塩をかけて育てた娘を預けるのが無性に心配に思われた。
百戦錬磨の剣士・ブラウド=グラディウスの直感は彼に危険を知らせている。
だが、そんな暗い思考は息子と娘の声にかき消されてしまう。
ガーネット「女の先生だったのか? お前の話しぶりからてっきり男かと……ハッ!? まさかお前、そんな趣味が……?! そっ、そういえば、レイオットとかいう男女のこともよく話題にっ!?」
すすすっと妹から距離を取る。
ガーネット「ま、まぁその……悪いことは言わん。考え直せ。今ならまだ間に合う。変態王の異名が定着する前に」
クロエ「ちょっ……ナニソレ、誰が変態王!?」
「待ってよ、お兄ちゃん。ヒサメ先生は男の先生よ。た、たぶん……」
ちょっと自信がなくなってきたけれども。そのハズ。
クロエ「それに私、別に趣味とかそういうのは……」
ニンジャが物珍しくて騒いでいるだけで、ヒサメ先生が男の先生だろうと女の先生だろうと関係ないのだ。
不思議生物ニンジャであればそれでよし。
ニンジャだから興味を引いているだけなのだから。
そうでなければこんなに追い回したりしていなかったかもしれない。
いやいや、けれどやっぱり言動が素で不思議だから、謎の生物として捕獲しようと遅かれ早かれ思っていたかもしれないが、少なくとも恋などという甘美な響きの感情とは縁遠いものだった。
肉親同士で殺し合う、氷鎖女争いの一部始終を見てしまってからというもの、同情がクロエの心に広がってはいたが、やはりそれも恋と呼べるものではなく。
ただ、「同情」である。
クロエ『でも驚いた……。ヒサメ先生、キレイな人だったんだ』
想像と近いと唯一思ったのは、その幼さ。
小柄で細身。顔と一緒で声も成人男性のものとはとても思えない。
少年と言えば少年だし、少女と言えば少女のそれだ。
これで大人びた顔はないだろうと思っていたが、そこだけはピッタリである。
どうやらニケと女王は知っていたようで、特別な反応は見られない。
ニケ「姫、この者はご存知の通りですが、シズカ=ヒサメ。影ながら、貴女とリク=フリーデルスを警護する任に就きし者でございます」
クロエ「私たちを……守る? 先生が?」
跪く鎮を改めてニケが紹介すると、クロエはさらに驚いて目をしばたかせた。
ニケ「剣の腕に優れ、魔力も申し分なく、判断力も兼ねそろえた者。いかな外敵が現れようとこの者が盾となって貴女方をお守り致します」
クロエ「……うわ、どうしよう。お姫様みたい」
慣れない扱いに照れを見せるクロエ。
けれどすぐさま一刀両断の憂き目に。
ニケ「姫ですから」
クロエ「うっ」
クロエはお姫様みたいな扱いはくすぐったいが、お姫様に実際になりたいわけではない。
釘を刺されたようでゲンナリする。
ニケ「ヒサメはあの通り、仮面で顔が見えません。もし中身が入れ替わっていたとしたら、確認が取れず困ります。故に仮面を外させました」
クロエ「そ、そっか」
鎮「なんと!? そうだったのでござるか?!」
うつむいていた鎮があわてて顔をあげる。
ニケ「当然でしょ。今後は養成所を辞めて、姫と共に城に滞在してもらうからね」
鎮「うそん、そんなのいやん!? 聞いてござらぬよ、そんなことっ! 嫌だ、帰るっ!!」
ニケ「この期に及んでダダこねないのっ!」
鎮「騙したな、ジジィッ!! イモ返せー!」
勢いよく立ち上がって床を踏み鳴らす。
ニケ「うるさいな、騙したんじゃない。言わなかっただけさ」
鎮「それを詐欺って言うんだ、クソジジー! ムッキャー!!」
ニケ「そんな奇怪な仮面つけてるのが悪いんでしょ。姫の護衛を務めるとなればそのくらいわかって当然だと思うね。察しが悪いなぁ、青二才めが。まったく。だいたい誰がウンコジジィだ、このかわゆいニケちゃんに向かって」
杖でポカリ。
鎮「ぐぬぅ~。やっぱり拙者、帰るッ。帰るったら帰るっ」
ニケ「もー。ワガママだなぁ。コレだから田舎物は。王宮での態度というものがなってない。君にも教育が必要だね、山猿」
肩をすくめて大げさにため息をついてみせる。
鎮「ぬおっ!? 山猿!? むぐぅ。いいでござるよっ。山猿は人間の言葉なんて理解できないでござるもん。山に帰っちゃる」
ニケ「いいけど、秘密を知った者の末路はわかってるよねー?」
白魔道士ニケの、無邪気を装った黒い微笑。
最大圧力100%。
威力120%。
鎮「…………す……」
「…………スイマセンデシタ」
冷や汗だらだら。
がっくりうな垂れてその場にひれ伏す、なんとも頼りなく弱っちぃ姫のお護り。
完全にニケの勝ちである。
ニケ「よしよし。承知したなら、姫に誓いの口付けを」
鎮「……ほ?」
クロエ「……へ?」
鎮・クロエ「……………………」
ニケ「? どうしたんだい? さ、早く」
当然のようにせっつくニケの言葉に今度こそ固まる二人。
●Thanks Comments
キャー(o≧∇≦)o
ヒサメ先生どうなっちゃうの
可愛い方だったのね
誓いのキス…(^^;
楽しみであります(笑)
Re:キャー(o≧∇≦)o
>こんな盛り上がりのない部分からじゃさぞかし退屈でしょう(滝汗)
>アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ
>でもありまとうございもすv
あはは☆
やっぱり、ヒサメ先生はニケには敵わないんだね(^_-)-☆
急に顔を上げたところから笑った☆、笑った☆(*^-^*)
しかも、素顔堂々とさらして、あの言葉使いに笑えるっ☆(笑)
ナツメの時も笑ったが、美少年であり、美少女であるヒサメ先生に普段の言葉使いはまったく似合わないっ☆(笑)
お
また面白い展開に♪(*^-^*)
続き♪
続き♪
ええ、もちろん毎度、催促コメントです☆(大笑)
Re:あはは☆
>叱られるとすぐゴメンナサイになっちゃう弱虫クンだから(爆)
>
>顔と性格が合ってないんだよね、あの生物は(^_^;)
>続きはうん。がんばりもす。