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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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水面に映る月:3

玄武「よし、お前自身がひょうたん変わりだ。術を使えるようにしてやろう」
 
 本当は術を授けるのはあまり良くないんだけどな。でも、まっ、いっか。
 この哀れな女にほんの少しの力を。
 口移しで与えてやった。ひょうたんにやったみたいに。
 お? ……与えた力が強すぎたかな?
 女はそのにカクリとひざを折ってぼんやりしていた。
 
玄武「これでよし。願えば水の力がお前を助けよう」
女「………………………………」
玄武「ではな」
女「あ……水神様……!? 待っ……」
 

▽つづきはこちら

 いやいや、これで今度こそ安心。
 ひょうたんはしばらくしたら、割れて効力を失うように仕組んでおいた。
ざまーみろだゼ。
 俺もこれでよーやっと静かに眠れるってもんだ。
 ……なんか色々動いている内に眠気も冷めてきちまったけどな。
 
 
 女はその後、水神の神子として崇められたそうだ。
 投げ込まれた時に返されたから、そのときに水神に選ばれたのだと。
 まぁ、そうといえばそうなんかなぁ?
 別に好きで選んだんじゃねーけど。落ちてきたから戻しただけで。
 村の奴らも虫がいいこと。一度は人身御供に挙げた娘に今じゃ、水神の神子様だってよ?
 クククッ。愚か者めが。
 あの女もさぞやいい気味だろうよ。まぁ、良かったな。めでたしめでたしってなモンさ。
 
 
 数年経って、今度は自然に目を覚ました俺は気まぐれにあの村を尋ねてみた。
 一応は自分の力を与えた者の行く末は見ておかなきゃな。……そんな軽い気分で。
 
玄武「水神の神子ってなぁ、どこにいんだ?」
 
 村人を捕まえて聞いてみた。
 どういうワケか村は乾ききって、とても水神の神子がいるとは思えない状態だったからひょっとして死んだんじゃねーかと思ってな
 だが、そんなことはなかった。
 話に聞くところによると村の中心地に大層な屋敷を構えているらしい。
 
玄武「へーえ?」
 
 俺は足元に骨と皮だけになった仔猫の死骸に目をやった。
 同じく痩せこけて目玉ばっかりがギョロギョロした母猫が、子供を諦めきれずにその死体を舐めていた。
 
玄武「……………………………………」
 
 興味引かれてその屋敷とやらまで足を延ばしてみると、あー、いたいた。
 身なりはずいぶんと変わっていたが、すぐにわかったゼ?
 何しろ俺の力が宿ってんだからな。わからねぇハズはねぇのよ。
 粗末な着物は艶やかな物に変わり、豊かな髪はきっちりと結い上げられて、豪華なかんざしが刺さってた。
 頬にはおしろい。口にも注してあってよ。
 あの、「すみません、すみません」のやせこけた女とは見違えたゼ。
 年の頃もどうやらちょうど女盛りみてーだしな。
 周囲には沢山の従者みてーのが付き添っていた。
 ……ま、それはいいけど、あの行列は何だろな?
 屋敷からずっと続く人の行列。それぞれ荷物と桶を手にしている。
 ははーん。さてはありゃあ、水をもらうための行列だわなァ。
俺は屋敷のすぐ外に生えた松の木に登ってそれを眺めていたんだが、女に会ってみようと敷地内に忍び込んだ。
 仰々しい見張りの間をすり抜けて、あの女がいる縁側に寄ってみた。
 女はちょうど水をやる人間を選んでいるようだ。
 水が欲しい人間どもは女の機嫌を取ろうと贈り物や芸を見せたりしている。
 どうもそれで気に入られりゃあ、水がもらえることになってるみてーだ。
 それから若くて見栄えのいい男にも水はふんだんに与えられた。
 その他の大した贈り物もできねぇ、面白れぇ芸も持ち合わせていねぇ連中は放っておかれた。
 女に言われるままに犬の真似をして這いつくばって、散々笑われても一滴の水ももらえねぇ哀れなヤツもいた。
 あーあーあー。
 まさかこんなことになろうとはなぁ。
 やった力をどう使おうが勝手だけどよぉ。
 知らねーよ、俺は。
 女に対して興が冷めた俺は会うのをやめにして泉に戻ることにした。
 そしたら、向こうから俺に気がついたらしい。
 ニコニコ微笑みながら俺に手招きする。
 てゆーか、オイ! お前が来い!!
 列に並ばないで勝手に侵入した俺は、奴の支配下の者どもにしょっ引かれた。
 ……ムカッ。
 しかし女はすぐに俺を解放するように言いつけると、まずは丁寧に挨拶をした。
 うん、忘れているわけではなさそうだな。
女「お久しゅうございます、水神様。貴方様のお陰で私はこれ、この通り、幸せになりましてございます」
 
 女はすっかりべっぴんになっていたがな。
 でもいかんせん、中身が損なわれてら。
 俺はこの家に一緒に暮らさないかと誘われたが、断わって屋敷を後にした。
 途中、痩せた母猫をつかみあげて、森の中の泉に戻った。
 
 
 やがて、例の女が村人に殺害されたことを風の噂に聞く。
 長らく雨が降らないのは、あの女が水を独り占めしているからだということだ。
 やっぱりなぁ。
 水面に映った月は美しいが儚く弱いから。
 小石1つでかき消されちまう。
 俺が渡した力は小石だったのかもしれねぇな。
 餌をやりすぎてすっかり太っちまった猫を膝に乗せて、俺はそう思った。
 泉には今夜もまぁるいお月さんがぽっかり浮いてる。
 あれは触らないでいるのが一番かもしれん。
 なぁ。猫や?
 
 
箱庭の君/合わせ鏡のアリス
玄武番外編:水面に映る月
終  了

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