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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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水面に映る月:2

 俺は人の姿になって、近くの村に出向いた。
あの女を探すためだ。
 ……あー、いたいた。やっぱり思った通り米屋の下働きだ。
どっかの奉公人だろうとは思っていたがな。
どーせイジメられでもして現実逃避にポックリ逝こうと思ったんだろうよ。
 逝くなら、他のトコにしてくんなー。
俺は歓迎しないゼ、シケた女なんぞ。
 女の手には明らかに重い米俵を持って、ヨタヨタと蔵を往復している。
 しばらく見ていたら、案の定、転びやがって、家の住人に怒鳴られていた。
 ハイ、ハイ、どうもスミマセン。そんな言葉を一日何回も繰り返して、女の一日は過ぎて行く。
それにしてもシケた女だ。……つまらん。

▽つづきはこちら

 まぁいいさ。どんな奴だって。俺の代理をちょいとこなしてくれればいい。
 俺は女に声をかけることにした。
 
玄武「おい、おま………………エッ!?」
 
 目の前に立ったら、足の上に米俵を落とされた
 
女「ああっ!? スミマセン、スミマセンッ」
玄武「ニャーッ!? イデーッ!? スミマセンで済むかぁーっ!?
女「あわわ ホントに……申し訳ございませんん~」
玄武「貴様にちょいと話があ……」
家の主「コラッ! 何を遊んでいやがるっ!?」
女「あっ、申し訳ございません、ただ今」
 
 一度、俺に頭を下げてからまた仕事に戻った。
あーあー。こっちの話、聞きゃしねーよ。
 しょーがねーなぁ……夢枕にでも立つかぁ?
 でも幽霊扱いで叫ばれたり、起きた時に忘れてたり、ただの夢と思われたりとかそんなことになりそーだしなぁ。
 やっぱ人間のフリして近づくのが一番手っ取り早いんだけど。
 どちらにせよ仕事をしている間は相手になりそうもないので、夜に接触した方が良いと判断した。
 しかし夜は夜で食事の用意から片付け、家の者全員分の床の支度、そしてまた明日の準備となかなかに多忙のようだ。
 ようやく女が自由になったのは、夜中。猫でも食わないような粗末な飯を一人、台所で食べている。
 そうでなくとも少ない飯だというのに、何を思ったのか女は裏口で待っていた猫にくれてやっていた。
 子供を連れた母猫に。
 ………………………………。愚かな。
 ま、いいさ。
 
玄武「おい、女」
女「!!」
 
 叫ぼうとした口をすばやくふさいで、耳元に語りかけた。
 
玄武「お前、今の生活から抜け出したいと思わないか?」
 
 女は震えて固まったまま、目だけを俺の方へ向ける。
 
玄武「貴様に水を操る力をくれてやろう」
女「……………………」
玄武「……俺か? 俺は、お前のいう、水神様だ」
女「!」
玄武「……騒ぐなよ?」
 
 女がうなづくのを確認して手を放す。
 
玄武「貴様、2度、俺の泉に飛び込んできたな?」
女「何故それを……」
玄武「だから、俺が水神だからだ。投げた石、まだ持っていようが」
女「………………」
 
 時代背景もあったのだろうが、女は自分が身投げしたこと、あの時の石をまだ所持していたことは誰にも話していなかったらしく、それを知っていた俺をあっさりと信じた。
 
玄武「水が不足になったら、お前が水の力を使えばいい。さすればお前の立場も変わるだろう」
 
 俺は女にひょうたんを一つを授け、姿をくらました。
 ひょうたんは俺の力をほんの少し宿した物で、持ち主が願えば水がいくらでも出てくるというシロモノだ。便利ィ~♪
 ああ、これでやっと俺はまた眠ることができる。あの女も水で商売でもするがいい。
 ……と思ったんだが……
 俺ってば意外と気にしぃなタチなんだよなー……。
 1年経って、あの女がどうなったのかちょっと様子を見に行ってみたんだ。
 そしたら、ウワ。立場変わってねーでやんのっ。アフォかっ!?
 水の力は、家の連中に利用されて、それで肥えてたのは奴らだけ。当の本人は変化ナシ!
 くれてやったひょうたんも取られちまって……オイオイオイオイ……ったくもー、なーにやっていやがんだ!? んなろ
 で、また夜に会いに行った。
 
女「水神様! お久しゅうございます」
玄武「愚か者。何のための力と思っている!? 人は欲の生き物だろうが。貴様も良い飯を食いたかろうが。あでやかな着物とて手に入れられようが。それをむざむざ奴らに渡してどーなる?」
 
 腹を立てて、ついそんなコトを口走った俺がいけなかったかな……。
 この女はこのままで良かったのかもしれない。猫に餌でもやっていた方が。
 でもそのときはまだ俺は疑ってなかったから……。仕方ねーわなぁ。
 
女「もっもっ……申し訳ございません」
玄武「いちいち謝るな」
女「すみません」
玄武「オ~イ……」
女「ああっ、また すみませ……あうっ!?」
玄武「…………………………………………」
 
 頼むゼ、おい……
 しかし困ったな。道具だとまた取り上げられるに違いない。
どうしたものか……

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