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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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箱君・アリス番外:水面に映る月

人は弱く、心はうつろいやすく。
水面に映る儚い月のように。
小石一つで波紋に消される
確かなモノは瞬間だけ。 

箱庭の君/合わせ鏡のアリス
玄武番外編:水面に映る月
 
 
 東に青龍、西に白虎。南に朱雀、北に玄武。
 人の身でありながら、神獣である我ら四体を召喚し、使役し、この世を恐怖のどん底にき落とした楴丞丸がこの世から消えてどのくらいが経ったろうか?
 側で戦の行方を占う役目はあの方の死と同時に終了した。
 お役御免となった俺が泉に身を溶かしてずっと眠っている間に時は流れる。
 まっ、現の世がどう変わろうと俺には無縁のコトだがな。
 微睡み(まどろみ)続ける俺の泉に、ゴミが落ちてきた。
 静かだった水面に広がる波紋。水鏡に映っていた月が形を崩す。
 時々あるんだよ、人間が落ちてくんの。せっかくいい気持ちで眠ってたのにサ。
 ったく……迷惑千万だゼ。
 俺は投げ込まれたゴミ……人間の女を住処からおっぽりだした。

▽つづきはこちら

 森の中にひっそりと在る泉の水が渦を巻き、沈んだ女を浮かび上がらせる。
 
 ……ぽいっ☆ ……ぼてちっ
 
 俺が水の力を使って女を地上へ投げ出すと、女は驚いた顔をして叫んだ。
 
女「……水神様……!?」
 
 そう、俺は水の神で北を守護する神獣……玄武という。
 水神でも同じこと。時には失礼なことに、水虎呼ばわりされることもある。
 水神っていうと龍とか蛇を想像するかもしんねーケド、俺らにもそれぞれ位があって、姿も様々さ。
……姿ったって、人間に見せるためにその姿をとるだけでどれが本当かといわれても困るんだけどな。
今の俺といったらこの泉そのものだし。
 
女「水神様……どうして死なせて下さらないのですか?」
 
 年端もいかぬ女は訴えてきた。
 どーしてったってアンタ……自分に置き換えてみ?
 自分がいい気で寝てる所にさ、なんか落っこってきたらどーよ? ああん?
 出すだろ、とりあえず。なぁ?
 供物だったら投げ込まないで、そこの……ホレ、小さな社に挙げといてくれよなー。
 そしたらもらっとくから。
 つーか、それ以前に水に物を投げ込むなよ。
 よく小銭投げ込んで拝んでく奴もいるけど、アレ、意味ナイから。
 しかも人間投げたら、デカイし腐るし……粗大ごみだし。魚の餌にはいいかもしんねーけど……。
まっ、自然は大切にな。
落ちてきた女がそんな風に問うてきたが、俺は無視をした。
いちいち答えてらんねーっちゅーの。
 しかしいつまでもメソメソメソメソメソメソメソメソメソメソ……その場で泣き始めやがって、だんだんイラ立ってきた。あーっ、ウルセーッ!!
 だから、水底の石を投げて頭に当ててやった。
 
女「イタッ!?」
 「なっ……何をなさいます、水神様っ!」
 
 ……無視。ぷいっだ。
 毎度、俺が話しかけたら皆ビックリしちまうからな。
 石投げたのはちょっと軽率だったかもしんねーけど。こっちも寝起きだったし。
 だから女の声に応える者はなく、空しく暗い森の闇に吸い込まれてゆくだけだ。
 これが普通だろう。俺は自然そのものなんだからさ。自然は人間に語りかけたりしないのが基本なワケ。
 
女「私に……死ぬな……生きろとおっしゃるのですね、水神様………」
 
 女は勝手な解釈するとしばらく黙ったのち、俺の投げ付けた石を手にのろのろと立ち去った。
 そんなことがあった翌年くらいだったかなー? ……たぶん。
 まーた今度は俺の泉の周囲でドンチャン騒ぎ。
 オイオイ、コリャなんのまじないだ!?
 様子を伺っているとどうやらコレは雨乞いの儀式の祭りらしい。
 ……ったく、人間とゆー奴は。
 そして派手な祭りの後、供物としてまた……ゴミがぁぁ~! いらねっちゅーのっ!
 いい加減怒るゼ、俺は。しかも見覚えのある女だ。手にはこの水底の石が硬く握られていた。
 前に落ちてきたゴミじゃんか。……ったく。コイツは本当にゴミなんだな。
 人間の中でもクズ扱いされる奴に違いない。
 誰も人身御供に自分の娘を差し出したくはない。するとどうでもいい娘が選ばれるのが必然。……で、つまり、この女はクズ程の値打ちしかないワケだ。
 ふん。そんなクズ女いるかってーの。帰れ、帰れ!
 で、俺はまた地上にそいつをおっぽり返した。
 
女「!?」
 
 俺様は基本的に静かなのが好きだ。騒ぎたい時に騒ぐのは好きだが、勝手に騒がれるのは好きではない。耳障り。
奴らを追っ払うには、奴らの願いを聞き届けるのが早かろう。そう思って、雨を降らせた。
 そうさ。
俺たち水の一族にヤツラが願うは、当然、天からの恵み……もしくは、逆に水の氾濫を鎮めること。
この地域は干ばつが多いから、水が欲しかったのだろう。
 くれてやるよ、ハイハイハイ。だから、頼むよ眠らせてくれ。
 だが、一度願いを聞いてしまうとまたやってくるのが奴らだ。当然っちゃあ当然だが。
 こーやって他の神々もいいよーに使われてんのかねぇ。
……ハァ。俺たちって一体……。
 時々、自分の存在意義について考えてみちゃったりなんかして
 そこで俺様は考えた。
 あの女にほんの一握りの力を与えてやろう。
さすれば俺がいちいち呼び出されずとも、奴が代わってやってくれるというものだ。クズもクズでなくなるし。お互いによかろうな。
うーん、俺様ってやっあったまいーい♪

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