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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 66-29

リク「もっと信用して、頼ってくれていいんだ。俺は……まだ何も出来ない子供で……力も足りない。でも、だけど……貴方を独りにしたくない。独りにさせたくない。俺が貴方をきっと……きっと、」
  『深い悲しみから、きっと…………』
 
 深く長かった暗闇の海から手を引いて連れ出してあげたい。
 冷たく降りしきる悲しみから救い出してあげたい。
 床に落としていた視線を上げ、
 
リク「きっと守ってみせるから」
 
 両肩を、痛みが走るであろうほど強くつかんで揺さぶる。
 肩は驚くほど細くて頼りなく、リクの決意をさらに強固なものに仕上げる効果をもたらした。
 ……だが。

▽つづきはこちら

 
鎮「………………………………」
 
 ゴスッ!
 
リク「!?」
 
 顔面に衝撃を受けて仰け反る。
 
リク「いったぁー!!」
 
 無下に叩きつけられてきたのは、“リクのせいで首モゲ太”だった。
 
リク「どーしてソレで叩くかなぁ」
 
 しかもこんなに真面目な話の真っ最中に。
 なんて空気の読めない人だろう。びっくりだ。
 鼻の頭をさすり涙を浮かべて抗議する。
 
鎮「守ってやるだのそういう台詞は、好いた女にでも言ってやるのだな。このっ……天然タラシが」
リク「た…っ!? タラシじゃないよ!!」
 
 とんでもなく不名誉な誤解だ。
 あわててかぶりを振る。
 
鎮「だいたい、自ら子供で力がないなどと言いながら、誰をどうやって守るのだ、このボケナスが。
 カッコつけたくば惚れた女の前にしやれっ」
リク「いててててっ! うわっ! ぶたないでっ! ダメダメ、そんなモノ振り回しちゃ…っ!」
 
 ポカスカと“リクのせいで首モゲ太”で叩かれて、頭を庇う。
 
鎮「そんな大口叩くのは俺より強くなってからにせぇよぉぉ~? ああ? 天才クンよォ?!」
 いきおい余った人形が手からスッポ抜けてしまうと今度はほっぺたを左右に引っ張りまわす。
リク「しゅみましぇん、しゅみまへん、大口叩きしゅぎまひたぁ~!」
 
 ビッ!っと乱暴に放されてリクは痛む頬に両手を当てた。
 ヒドイ。酷すぎる。
 
リク『ああ~、謝るべきところじゃないのに謝っちゃった』 ぐすんっ。
 
 自己嫌悪。ここは強気を保たねばならなかったのに。
 こんな調子ではイタチゴッコだ。またするりとかわされてしまうではないか。
 そう思ったが、今回は変化があった。
 何度も言ったのが功を成したのか、それとも……。
 
鎮「よいか、よく聞け李紅!」
リク『……あ。“李紅”だ』
 
 “リクのせいで首モゲ太”をリクの目の前につきつけ、
 
鎮「悪いが俺はな。ヒトサマから守っていただくほど、弱くはない。そもそも守ってもらおうなどと思ったことはないし、弱い奴に守られる俺でもないわ」
 
端に寄せておいた掃除用バケツ(残飯が入っていたもの)を手にして立ち上がり、座ったままの李紅を額当ての下から見下ろす。
 
リク「!」
鎮「クロエといい、お前といい……二人は俺にどうせよと言うのか。俺がもっとか弱ければ満足か。助けて欲しいと泣きつけばよかったか」
リク「そ……そういうことじゃ…………だけど……」
 
 慰めるどころかプライドを傷つけてしまっただろうか。
 鼻白んで相手を見上げる。
 暗い中に、金の瞳が少しだけ光って見えた。
 
リク『……金……?』
鎮「……お前が俺を構いたがるは……」
 
 下から見えるとわかってか、額当てを引き下げる。
 
鎮「自分に重ねるからでござろう」
リク「……!!」
 
 言い当てられて表情が凍った。
意識が不思議な目の色から言葉の意味へ強引に引き戻される。
 鼓動がはねて胃の辺りに渦巻く不快感と重さがのしかかってきた。
 
鎮「お前が俺に一方ならぬ興味を抱くのは、恐らく……。己に重ね、また父親の影を追っているからに過ぎぬ。……違うか?」
リク「……ちっ……ちが……」
鎮「少なくとも……俺にはそんな風に感じられていたよ、いつも。俺を通して誰か……他の者を見ているみたいな。そんな目をしていた」
リク「………………」
 
 違うときっぱりと否定したかったのに、喉につかえて出てこなかった。
 見透かされていると感じた途端、喉がきゅっと絞まったような錯覚に囚われた。
 
鎮「可哀想なことを言うようだが、俺は李紅でもないし、李紅の父親(てておや)になるつもりもない」
リク「わかっているよ、そんなのっ!」
 
 一番痛いところを突かれた。
 言い当てられたことでムキになり、とっさに叫んでしまう。
立ち回りの上手い普段のリクならあり得ないことだった。
 懐くのは父の故郷の匂いがするから。
 頼りたい、甘えたい。認めてもらいたい。
 氷鎖女 鎮にではなく、秋臣に。
 鎮にだけ本来の子供らしい姿を見せるのは、相手が父親の写し身だからだ。
 秋臣の生き写しというのなら、面差しよく似たリク自身であり、小柄で線の細い鎮はまるで似ていない。
ましてや顔などまだ一度も見たことがないのだから、似ているとはとても言いがたかった。
共通点といえば、同郷というだけだ。
 年上の頼りにできる人間。寄り添っていられる、それだけで安心できる存在。それが父親の秋臣の仕事だったがもういない。
 その精神的な空きポジションに代わりとなる担任の教官を配置していたのである。
 もちろん、ただ年上というだけでは父のいた位置には置かない。
才気溢れる神の申し子であるリクを納得させられるような実力者でなければ尊敬することができないからだ。
 全てを申し分なく兼ねそろえていたのが、鬼才・氷鎖女 鎮だった。
 子供の頃からすでに大人を超越する能力を持ちえていたリクが、さらに大きな器に出会ったときに心の天秤を傾かせるのはごく自然なことであったと言える。
 それから、尊敬し、慕う相手であると同時に鎮という人は、李紅の影でもあった。
助けたいと強く願うのは、自分に重ね合わせるから。
 彼を助けることによって自分を救い出してやりたいから。
 誰かの手を求めて止まなかった、けれど頼ることができなかった少年・李紅を。
 鎮は李紅であり、父・秋臣だった。
 
鎮「……お前は俺の存在を否定して殺す気なんだ」

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●Thanks Comments

かなり...

複雑なのです(T_T)
リクもアンもヒサメ先生も....。
リク、1番痛いところをヒサメ先生につかれちゃったね...。ヒサメ先生を守ってあげたいという気持ちが、自分本人を助けてあげたいって。
せっかく、名前で言い合える仲にまで発展したのに...(T_T)

でも、ヒサメ先生やっぱりすごい人だ☆
かなり精神的に強い。

話、変わってアンの方は本当に少女の展開に....。男子寮までのりこんで行っちゃったね。(苦笑)
その行動が感動してくれるリクのためなのか、それとも自分のためなのか、またリクに心配して欲しいだけなのか...。友人であるジェーンの気持ちが少しでもわかる余裕があればいいけど、アンはリクに必死だね。ダレスが言ってることもわかる気がする...。

三人かなり複雑なのにレイオットとクロエの参上☆に笑ってしまった。(笑)

また続きが楽しみなのです(*^_^*)

From 【あっぴ】2008.10.13 00:48編集

66話、終りましたー。

今さっきやっとですよー。はふぅ。
2日休んだ分、今回はハリキリましたよー(^_-)-☆

お。長い感想ありまとうございます! 詳しく書いて下さると参考になるので嬉しいですvV
それぞれ考えと言い分があって、誰も正解でも不正解でもないカンシです。
リクの考えだって本当は悪くないんですけどね。
その辺は後日の話になるんですけど。

From 【ゼロ】2008.10.13 01:01編集

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