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レイディ・メイディ 66-27
2008.10.12 |Category …レイメイ 66話
二人が立ち去ってもアンはそのまま階段の下で待っていた。
着替えになんて戻ったら、リクとの再会が遅れてしまうではないか。
1分1秒でも早く会いたいのだ。あの温かな笑顔に。
じりじりとはやる気持ちを抑えて待っている間、目の前を食事を終えた者、これから食堂に向かう者、疲れを癒して風呂から上がった者、早くお湯に浸かりたいと入浴場に向かう者……多くの通行人が目の前を通り過ぎてゆく。
その中に女子のグループがこちらをチラチラ盗み見ながら会話をしているのに気がついた。
会話は聞こえなかったが、とても気分が悪かった。
どうせ悪口を言っているに違いないと思ったからだ。
リクの隣を射止めてから、妬みによる陰口には慣れていた。
何かある度にリクがちゃんと守ってくれるので心配はなかったのだ。
けれど今は一人きり。気にしなくていいと言って庇ってくれる人が誰もいない。
アンはたまらなくなって階段を駆け上った。
▽つづきはこちら
待っているようにと言われたのに、なんと男子寮の方まで走り出してしまったのである。
気の小さい通常の彼女では考えられない行動だ。
アン『リク君、リク君、リク君、リク君!!! 私を助けてよ! 天使の翼でこんな汚らわしい妬みだらけの世界から私を救って、キレイな空まで連れて行って……!』
悲しい悲しい悲しい悲しい!
世の中には敵しかいない。
二人だけの世界に行きたい。
誰にも邪魔されない二人だけの空間に迷って出てこれなくなってしまいたい。
アン「リク君はどこにいますか?!」
女の子がこんなところに!?
驚く男子生徒たちの反応は目に入らなかった。
ぶつかった人の服をつかんでアンは必死に問い詰めた。
知らないと言われればまた別の人を捕まえて問いただす。
男子「なんだありゃ」
「あの天才君のカノジョじゃん」
「とうとう捨てられたか?」
「修羅場?」
雨に濡れて服は泥に汚れ、三つ編みも乱れたその姿はいかにも捨てられた可哀想な女の子を演出しており、男子寮に女子という特異な状況に上乗せされて周囲の注意を一身に引き付けていた。
ダレス「おいおい。平気かよ?」
泣き顔に近い少女の惨めな姿を見かねた赤薔薇専攻のダレスが声をかけた。
ダレス「リクなんか知らねーけど、フェイトの部屋ならわかるぞ。アイツが天才クンと同じ部屋だからきっと……」
アン「連れて行ってって下さい、リク君のところに!」
ダレス「いいけど……とりあえず冷静になれよ」
アン「は、はい」
ダレス「何だか知らないけど、いきなり彼女が男子寮の部屋まで来たらビビんだろーなぁ」
短髪をがしがしと掻いてダレスは後ろをちょこちょこついてくる少女を肩越しに見やった。
その言葉でアンも改めて今の状況を確認する。
男子しかいない。当たり前だが、女子の姿がたった1人も見当たらない。
男子生徒たちが誰も彼も興味津々の目でこちらを伺っている。
クラスにいても空気のような扱いで男子から声をかけられることのないアンはこれだけの大人数に見つめられて、心なしか高揚した。
同時に泥に汚れた姿に猛烈な羞恥心が沸いてきた。
せめてもう少しキレイだったら……。
うつむいて前を歩く親切な?人の足元だけを追い、他に目を向けないように努めた。
リクがこんな自分を見たらどうするか、これから現実に起こるであろう場面を想像してやりすごすことにした。
アン『リク君……驚くだろうな』
どうしたんだい、そんなに濡れて。
可哀想に。ごめんよ、俺のせいだね。
俺が君を傷つけたんだね。
もう少しキレイだったら良かったかもしれないが、こんな姿なら必死だったことがもっと伝わるかもしれない。
相手も感動してくれるかもしれない。
このまま風邪を引いてこじらせてしまったら、皆も心配してくれるかもしれない。
いっそ、生死の境を彷徨ってみるのもいいのかも……?
羞恥心から逃れるために自分だけの世界に浸っていたアンを現実に戻したのは、案内人のつぶやきだった。
ダレス「俺なら嫌だなー……」
アン「えっ?」
ダレス「俺だったら、ここまでされたら重荷だなって話。別に他人のことなんかいいけどよ」
親切→不親切。
アンの中で親切な人だったダレスは最悪の男に急降下した。
見る間に顔を青くして唇を震わせる。
ダレス「なんかテメーのせいだっていわんばかりじゃね? 何だか知らねーけどさぁ。お前、出直した方がいいんじゃねーのォ?」
アン「もう……いいです、放っておいて!」
わっとその場に崩れて泣き出してしまい、ダレスはあわてて周りを見回した。
泣かせた、女の子を泣かせた。
男子生徒たちにとって女の子を泣かせるのは最大のタブーである。
男子「オイオイ、ダレスー」
ダレス「うえっ!? 俺? 俺、親切じゃん! 親切で言ってやったんだぞ!?」
そんなダレスを泣いている女の子からひっぺがして、遠巻きにしていた男子生徒たちが取り囲む。
男子「泣くなよ、な? ダレスは女に超嫌われてるんだぜ? ああいう奴なんだよ」
「そうそう。アイツの言うことなんて気にしちゃダメだぜ」
ダレス「うおっ!? オマエラ、俺をだしに!?」
男子「うるせぇなぁ、ダレス! お前、空気読めよ。せっかく彼女がこんなんなってまで探しに来たんだぞ」
「そうそう。いじらしいじゃんよ。俺なら感動するね!」
ダレス「うおっ!? オマエラ、俺をだしに!? 女にコビってんじゃねー!」
男子「はい、ダレス退場~!」
「退場、退場」
ダレス「ナニィー!?」
男子「アイツ、女の子にこうまでされた覚えがないから、わかってねーんだよ」
ダレス「お前だってナイだろが! 俺は硬派なんだよ!!」
無意味に筋肉を盛り上げて硬派ポーズをとる。
男子「無視無視。モリモリ筋肉んは無視!」
「君、大丈夫?」
アン「あ、はい……すみません……」
興奮してまた泣いてしまった。
恥ずかしくなって、レクから借りたタオルで涙をぬぐう。
そんなところへ騒ぎを聞きつけて駆け参じたレクが割って入ってくる。
無理に付き合わされたフェイトも一緒だ。
レク「待っててって言ったのに。どこに行ったかと思ったら……探したじゃないか」
アン「ご、ごめんなさい」
フェイト「こんなところにまで入ってくるなよ、リクに迷惑かかるとか考えたこ……っ」
不機嫌ではないが不機嫌に見えるフェイトの横っ面に肘鉄が入る。
レク「リクは部屋にも戻っていなかったみたいだよ」
肘鉄を食らったフェイトがぐらりとレクの横から消える。
が、鉄槌を下したレクは振り向きもしない。
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●Thanks Comments
うひー
こんな考え方はいやだ・・・。
いや、自分でもあるけどここまで度が過ぎたら・・・ってこれが
ゼロさんの思惑でもあるんだろうけど((+_+))
続きが楽しみです♪
最近あんまりブログいじれなくてごめんなさいですー(>_<)
月曜になったらお休みなので、ばしばしゼロさんを構いますので(笑)
すんません、気にしないでやって下さい;
ヒマヒマ言い過ぎですね(爆)
す、すみません。プレッシャーかけまくりで…うっかり独り言が…(滝汗)
たぶん煮詰まっていたからなので、今は平気です。ヒマジラスしてません(笑)
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