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レイディ・メイディ 66-28
2008.10.12 |Category …レイメイ 66話
ダレス「うおお、フェイト! お前は俺様の仲間だ!! お前の死は無駄にしないぜ!」
物言わなくなったフェイトにダレスは追悼の意を込めて祈りを捧げた。
レク「リクのことだし、ひょっとしたらヒサメ先生のところかもしれないから後で戻ってきたら、アンが探していたって伝えとくよ」
アン「!」
『……ヒサメ……先生!』
レクの言葉にはっとなって顔を上げる。
アン「ありがとう、レク君! ごめんね。迷惑かけて」
レク「いいんだよ。さ、わかったらちゃんと部屋に戻って着替えてね?」
▽つづきはこちら
アン「うん、ありがとう。このタオルも洗って返すから」
レク「いいよ、そんなの。それより送っていくから……あっ」
聞き終わる前にアンは駆け出していた。
彼女が去った後すぐにまた男子寮で騒ぎが起こった。
レイオット、クロエの二人が堂々と乗り込んできたのだ。
レイオット「姫を救えー!」
クロエ「おーう!」
……しかも当初の目的を大幅に違えて……
場面は再びリクと鎮に戻る。
リク「シズカ」
鎮「……? ハイ?」
突然ファーストネームで呼ばれてきょとんとする。
リク「シズカ……二人のときだけは、シズカって呼んでもいい?」
鎮「何を改まっていいやるかと思えば……」
リク「……呼びたいんだ」
真っ直ぐに見つめる。
鎮「…………それは……構わない……けど……」
沈黙を挟んで額当てに手を添えた声には戸惑いが滲んでいる。
どう呼ばれようと構わない鎮だが、脈略もなしに言われるとさすがに少し驚く。
しかもこうやって正面から見つめられるのは顔など見えないとわかっていても苦手である。
思わず顔を背けた。
リク「俺は」
戸惑って黙ってしまった鎮の手を強引につかんで引き寄せ、手の平を上に向けさせた。
そこに倭国の文字を指で書き込む。
リク「スモモの“李”に、クレナイの“紅”で、李紅(リク)。リクはリクで一緒だけど、少し発音が違うんだ。……家族だけがこう呼んでた。シズカにも知ってて欲しい」
鎮「……?」
リク「知っていて欲しいだけだよ。……シズカは?」
言って今度は自分の大きな手を差し出して、上に相手の手を乗せさせた。
鎮「え? あ、えと……金偏に、シン……んー、マコトの“真”。くっつけて、それ一文字で鎮(シズカ)……画数多くてわからぬだろうが……」
リク「や、わかるよ。その一文字はわからないけど、金と真ならわかる。倭国の名前には、意味があるんだよね。“真”は本当とか真理とかそういう意味だ。いいじゃないか。俺はたぶんこの紅い目だったから紅の字が使われたんだと思う」
二人だけの秘密を交換したような気がして、少し嬉しくなった。
元から二人は特別なのだ。倭国という共通の存在が通じるのはこの間だけなのだから。
鎮「うん、李紅は綺麗な良い名だ」
鎮が自分の名を褒めてそっと微笑んでくれたので、リクはもっと嬉しくなった。
リク『そうだ。俺はこの人を笑わせたいんだ……笑っていて欲しいんだ』
強いばかりでいて欲しくない。
独りで生きていけるのかもしれないけれど、独りにさせたくなかった。
リク「鎮……鎮か。うん。イイ。すごくイイよ」
鎮「……………………………………そう?」
家族内だけの特別な名前を教えて満足したリクは、相手のテンションに気がつけずにいた。
「真」の意味は良かったが、それに「金」を付け加えると鎮魂の「鎮」になり、呪いの主の魂を鎮めるための供物であることを指し示す意味になるのだ。
リク「鎮……」
鎮「うん」
リク「鎮」
鎮「うん」
リク「鎮」
鎮「……なんだよ」
リク「鎮、鎮、鎮!」
鎮「うるさ」
放っていた “リクのせいで首モゲ太”人形の胴体を手にとって、リクを軽くごつく。
リク「いって! もー、ヒドイな、鎮はァ」
首をすくめる。
鎮「……連発せずともよろし」
リク「鎮」
鎮「だから何だというに」
リク「……俺じゃ……ダメなのかな……?」
珍しく齢相応だったはしゃぐ笑顔を引っ込めて、リクは視線を床に落とした。
鎮「何が?」
リク「俺じゃあ、役不足なのかな」
鎮「………………」
リク「俺は……誰が何を言おうと、鎮の味方だよ。それだけはわかって欲しいんだ」
鎮「わかった、何度も聞いた」
リク「真面目に聞いてくれてる?」
鎮「聞いておるよ。でもそう真剣にならずとも良い」
リク「鎮こそ真剣に聞いてよ」
鎮「聞いておる」
リク「聞いてないじゃないか。いつもはぐらかして」
鎮「………………」
鎮「………………」
黙って口を数字の3の字に尖らせる……先生。22歳。男子。
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